プロローグ~中断四日目~
この小説は、俺が本気を出してvipの安価で東大を目指す事になった(正)というブログの後日談です。
ブログを辞めてから勉強も辞めた。
もう疲れた。勉強も、朝晩記事を書くのも……水星人の暴言をコメント欄で見るのも。
"ファーザー"はもう辞めだ。
分かりやすくグレてみようと思った。
まず煙草を吸ってみた、が駄目だった。あんな煙旨い訳がない。断念。
ならば博打だ。
勉強を辞めた次の日、俺は昼間っから近所のパチンコ屋に行った。
店内はゴウゴウと騒音でうるさく、煙草の臭いがむわっと酷い。一秒たりともこんな所に居たくなかったが、せっかく自転車を飛ばしてここまできたのだから、適当にやってみてすぐ帰ろうと思った。
適当に入り口近くの列の台に座る。
お金を入れようとするが、どこに入れればいいのか分からない。何しろ初めてのパチンコだ。
オロオロしてると、それに見かねた隣のおばちゃんが、「ここにいれるんやで」とサンド(お金を入れる所)をちょいちょいと指差した。
ほうほう、そこにいれるんですか。礼を言って千円札をサンドに差し入れる。
するとスッと千円札は吸い込まれていった。なんだかもったいない。
さて玉はいつでるのかな、とボーっと待っているのだがいつになっても出てこない。
千円損した!とまたしてもオロオロしてると、それに見かねた隣のおばちゃんが「ここを押すんやで」と玉貸ボタンをちょいちょいと指差した。
ほうほう、そこを押すんですか。礼を言って玉貸ボタンを押した。
するとジャラジャラと玉がでてきた。後はハンドルを握って大当たりを待つだけである。
パチンコとは真ん中のスタートチャッカーと呼ばれる所に玉を入れて、大当たりの抽選を行う完全確率方式の遊戯である。
最初はスタートチャッカーに中々入らず、すぐに500円分が終わってしまった。(これで漫画一冊買えんぞ!)
しかし隣のおばさんの台を見て、真似しながら打っていたら入るようになった。
くるくると数字が廻る。たまに大きな音がなって「ボタンを押せ!」と命令されたが、お金払っているのに何故上から目線で命令されなければならないのか、悔しいので無視した。
俺の打っている台は「GARI~XX~」という台で、よく分からないが寿司屋を営む虎戦士が海モンスターと戦って材料を得る、というコンセプトらしい。
液晶画面では鉢巻をした虎戦士がカジキに扮したモンスターと戦っていた。
おおやれやれ、と呑気に応援していたら虎戦士の必殺技が決まって勝っていた。
「やるやないの!」
隣のおばさんが興奮しながら親指を立ててサムアップしていた。
そしてなんだかよく分からない内に派手に音が鳴って「大当たりぃぃぃいいい」とカジキが叫んだ。
これから調理されるのによくもそんな余裕ですね、と言いたかったが玉が続々とでてきたので慌てて下皿を開けた━━━━
*
外はもう真っ暗だった。
結局あれから夜10時の閉店まで打ちつづけた。
虎戦士は次々に現れる海モンスターを薙ぎ倒しては寿司のネタにしていった。
隣のおばさんは大当たりを連発する俺を見て憎らしそうな顔して去った。
最近のパチンコ屋はカードに増えた玉が貯まるシステムで、一体いくら自分が儲けているのか分からなかった。だから閉店間際に虎戦士が敗れたときは若干飽きていたので安心して席を立って換金した。
貯玉カードをホールの人に渡して景品を貰い、交換所へ持っていく。
渡されたお金を見て驚愕した。
15万━━
諭吉が15人、俺をギラリと睨む。
信じられない。
俺はただハンドルをよく分からないままに握り、虎戦士をいい加減に応援していただけだ。これは虎戦士の給料だと思った。
しかしあれはパチンコのゲームなので、このお金はやっぱり俺のなのだろう。
一日で15万。二日行けば30万だ。
明日も来よう。そうしよう。
明日は姪と寿司を食べに行こうと思った。