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(短編) 恋愛

罰則 (短編版)

作者: 紫 碁盤

<主人公>・・・清水ミチル 男性 現在大学4年生





10月のある日の夜。ミチルは今日も駅前でギターの弾き語りをしていた。



すると後ろから一人の女の声が聞こえた。



「おっ!、君は今日もひとりかい?独りぼっちはさみしいねえ。」



ミチルはこの言葉にドキリとした。



「別に好きで一人で・・」



言いながら振り返ると同じ大学生くらいの女の子が野良猫に話掛けていた。



ボブヘアーの似合う女の子だった。



「(泣いてる?でも誰だろう。知り合いではない。)」ミチルは思った。



「あっ、ごめんなさい。あなたに言ったんじゃなくてこの猫ちゃんに。」ミチルに気付いた女の子が言った。



猫が足早に逃げていった。



「いやごめん、オレも勘違いしたみたいで・・。」



一瞬沈黙になった。



すると女の子が口を開いた。



「あなた歌嫌いなの?」



ミチルは意味が分からなかった。




ギターを持って駅で歌ってる人間が歌が嫌いなはずがない。




何かの罰ゲームで歌ってる様に見えたのだろうか。



いやそんなはずはない。



ミチルはそう思った。





「いや。好きだけど。ロックとか」ミチルは答えた。




「そうなんだ。」女の子は意外そうに答えた。




「ごめんなさい。なんか邪魔しちゃったね。じゃ。」




そう言って女の子は歩いて行った。




「(変な子だったな。意味分かんないし。猫と話せるのか?)」ミチルは思った。




しかしミチルの頭の中でどうしてあんなこと聞かれたんだろうという疑問は消えなかった。








次の日の夜ミチルが同じようにギターを弾いてると昨日の女の子が話掛けてきた。




「こんばんわぁ。ギターのお兄さん。お兄さんアレ誰か知ってる?」




「アレ?」



「(この子飲んでるな(汗)。)」ミチルは気付いた。





「そう。さっきコンビニで流れてたんだけどさ、ガラガラ声の外人で”ソーサリキュウェー♪”って歌ってるやつ。」




「あーそれね。たぶんオアシスってバンドの曲だよ。」




「そうなんだ。いいよね。あの歌。さすがギターのお兄さん。」




「(ギターのお兄さんって・・なんだこのフレンドリー感・・(汗)昨日と全然感じ違うし・・。)」ミチルは思った。




「あのさ昨日オレに歌嫌いなのかって聞いたよね?」ミチルは思い切って尋ねた。



「うん。」



「どうして?」ミチルはまた尋ねた。




「そうねえ。あなたがギターのお兄さんには見えても歌のお兄さんには見えないから。かな。」




「は?」



「てかあなた人をホントに好きになったことないでしょ?そんな気がする。」




「あ、あるよっ!」ミチルは反射的に少しむきになって答えた。




ミチルは大学に入って付き合ってきた7,8人の女の子の事を考えた。




「そ?じゃあたしの聞き間違いかもね。」




「あたしは音楽の事はよく分からないんだけどさ。昨日あなたの歌声を聴いてとても、なんか悲しさの塊みたいのを感じたわ。題名にすると~そうね”愛をください”って感じ?」



「それか誰も信じません!みたいな?。でもロックってそういうのも大事なんでしょ。たしかなんかの雑誌に書いてあった記憶が。」




「・・・・。」ミチルは言葉が出なかった。




真っ白な光線で心の中を丸見えにされた気分だった。







*****************************************************************************************

(ミチルの過去)



今から7年前ミチルは大きな大会を控えた中学2年生のサッカー部だった。



「ミチル・・お前呼ばれてるよ。」



雪の降るある日、ミチルが部室で着替えてると同じクラスの今井が言った。



「だれに?」ミチルが答えた。



「いいから来て。隣のB部室。おれ呼んでくるよう言われただけだから・・。」




妙な雰囲気を感じてミチルは隣のB部室に行った。



サッカー部は人数も多いため部室がA部室とB部室とある。



B部室にはなぜか学校の不良グループの新庄がいた。



新庄は学校1番の不良で強いというより蛇のようにしつこい。



みんな関わりたくないのだ。



何をしでかすかわからないタイプで先生達も触らぬ神に祟り無しといった感じだった。



ある先生は注意したら車のボンネットを金属バットでボコボコにされた。



ミチル達がガムを持っていただけで烈火のごとく怒る教育指導の先生も新庄が廊下でガムを噛んでいても注意すらしない状況だった。




「お前らサッカー部さあ、俺の文句言ってるらしいじゃん。」



「何のこと?」ミチルは意味がわからなかった。



「田辺から聞いたんだよ!。」



薄暗い部室の隅に田辺がいた。昨日まじめに練習しない態度を注意したサッカー部の後輩だ。



田辺はこの不良グループと最近仲良くし始めていたのだ。




「(態度を注意した腹いせか。)」ミチルは思った。




「昨日の帰りに”新庄みたいな不良は死んでほしい”って確かに言ってました。」田辺は

目を伏せながらつぶやいた。




ミチルはそれを聞いて思い出した。



「(中井と木田だ。それ言ってたの)」



中井と木田はサッカー部のキャプテンと副キャプテンで部の中心的存在だがかなり人の悪口を言う癖がある。



昨日も帰りに部室で着替えてる時、新庄の事をいろいろ言っていた。




いつもミチルは中井と木田のそんな話に加わるのが嫌で話に加わることは無かったがもしかしたら昨日木田と中井のやり取りを隣のB部室の田辺が聞いたのかもしれない。




部室と言っても薄いプレハブで音は筒抜けなのだ。




「俺はそんなの言ってないよ。」ミチルがきっぱり言った。




「じゃあ誰が言ったんだよ!」新庄が凄む。




「誰かは知らないけど。」ミチルは言った。




「じゃあサッカー部のやつ全員ボコる。とりあえず次木田呼んでこい。」




「(今井がオレを呼びに来たのはこういう流れだったのか。)」ミチルは思った。




「待ってくれよ。問い詰めても誰も怖くて口割らないだろうし、もしかしたら聞き間違いかもしれないしさ。」ミチルは言った。




木田は犯人だが今井の様に次の人を呼びに行く行為が”友達を売る”様に思えたからだ。



「はあ?呼んでこいや!!コラ!」




「いやだ。」と言うと同時にミチルは殴られていた。




もちろん殴り返えそうと思えば出来た。




ミチルは部活で鍛えている。




しかし昨年陸上部の男子が喧嘩で大会出場停止となっていたのが頭をよぎった。




「なんだお前喧嘩もしきらんのか?根性ないのぉ!!!」




ミチルは新庄のパンチや蹴りで数十分間サンドバック状態となった。




「ナメやがってこのクソが!!絶対お前から口割らせるからな!!明日待ってろよ。」




新庄は捨て台詞と噛んでいたガムを吐いて部室から出て行った。




そして田辺も。




田辺はそれ以来部活にも来なくなったがその出て行く田辺の横顔がうす笑っている様にも見えた。




ミチルは起き上がって痛むところを押さえた。




触ると試合後のボクサーの様に顔が腫れているのが分かった。




横腹も痛い。




服が足跡だらけだ。



しかしそれよりも親になんて言おう。ホントの事言ったら心配するだろうし。ミチルはそう思った。




しかしミチルはこの行動に後悔はしていなかった。







B部室を出てA部室に戻るともうすぐ練習開始時間だというのに木田と中井がいた。




絶対に隣のやり取りを聞いていたはずだ。




ミチルは今回のいきさつを改めて二人に話そうとした。




「実はさっきさ、新庄が・・」ミチルがそう言った瞬間




「知らないよ!。お前の問題だろ。」木田が言った。




「オレ達関係ないから。」中井が言った。




そう言って二人はそそくさと部室を出て行った。




「(今まで自分が信じていたものって一体なんだったんだろう・・)」ミチルは思った。









そして昔ある不良に言われた事を思い出した。






それは去年の夏祭りにミチル、木田、中井、川田、吉川というクラスメイト5人で行った帰りのバスでの出来事だった。



ミチル達の他に誰も乗客は無く、バスの最後部のシートにゆったり5人で座っていた。



すると偶然隣町の不良が二人乗ってきたのだ。



見るからに図体も大きく高校生くらいはある体格で正真正銘の不良だった。



「お前らオレらと喧嘩せいや!」



すぐにその二人組はミチル達5人の前を塞ぐように座り因縁をつけてきた。



こっちは5人とはいえ中1の小さな身体。



2人とはいえ向こうの方が強いのは明らかだった。



ミチル達は恐怖しながらも当たり障りの無い会話でなんとかやり過ごそうとしていた。



そしてミチル達が降りる予定2個前のバス停にバスが止まった瞬間、木田と中井と川田の3人は座席を飛び越えて逃げていった。



ミチルと吉川の2人は何が起こったか分からなかったが取り残されたことだけは明白だった。



「けっ!ショボイ奴らが!」不良の一人が言った。



ミチルと吉川はまずい事になったとお互いの顔を見合わせた。



「お前ら置いてけぼりくらったな。」もう片方の不良がポツリと言った。



それから降りるバス停までミチルはその不良達と少し話をした。



というより不良達が意外にも気さくに話してきたのだ。



もちろん他愛のない話ではあったが。



そしてミチル達が降りるバス停で不良がミチルに言った。



「おいお前。ダチはダチだからダチなんだぜ。」



その時は何事も無く無事に帰宅できたことで特に気に留めて無かったがその言葉が今になって強くミチルの頭に思い出された。









開いた部室のドアから入り込む冷たい風。気付くと鼻の奥と切れた口の内側からの止まらない血が垂れてきた。



ミチルは誰もいない部室の外に出ると口一杯に溜まったそれを白い雪の中にブッと吐き付けた。




次の日、新庄がまたミチルを呼び出したが今度は取っ組み合いになりそれを見かけた女子が先生達を呼んで事が公になった。




結局誰が新庄の文句を言ったとか言わなかったとかそこら辺は迷宮入りのままミチルと新庄はもうお互いに手は出さないということで一件は決着ということになった。




「これからまた何かあったらちゃんと私に相談しなさい。」




と部の顧問の先生に言われたが、明らかに殴られて血のにじんでる昨日のミチルの顔を見てミチルが言ったボールが当たったという言い訳の方を選んだ人に解決なんて無理だとミチルは思った。





その事件以来、ミチルが美術で描いた絵にガムが付けられるなどちょっとした不良からの嫌がらせはあったもののそれ以外はミチルに対して特に何も起きなかった。




変わったと言えばミチルの方であった。表向きの理由は受験勉強に専念したいからであったがミチルはあの事件以来部活には行かなくなった。顧問の先生の計らいで在籍扱いにはしてくれたがミチルにはそんなのもうどうでも良かった。





そしてミチルは高校生になった。




勉強に打ち込んだ甲斐もあったのかミチルもそこそこの進学高に入学できた。



でも部活なんてやろうとは思うことはなかった。




高校時代ミチルは何もしないまま何もないまま過ごした。




思い出なんて特になかった。




ただ流れる時間を過ごした。




そして大学受験となりミチルも大学を受けた。




一人暮らしが出来る地方の小さな大学を。




誰も自分を知った人がいないところへ行きたかったのだ。




そしてもう一つ。



あることを始めたかったからだ。




それは『音楽』だった。





高校時代ミチルを支えてくれたもの。





それは音楽だった。





中でも洋楽のロックバンドを聴いている時が一番の至福の時だった。





音楽は裏切らない。





そう思った。





誰も知ってる人がいない大学で音楽を始めて新しい自分にスタートを切りたい。





心の中でそう思っていたのだ。





だから面白くも無い受験勉強にもなんとかやる気が出た。





その甲斐あって希望通りの国立の大学へ進学できた。




みんなからはなぜその成績であえて地方に行くのかと不思議がられたが。




ミチルは大学へ入り文字通り新しいスタートを切った。




軽音サークルに所属しすぐにバンドを結成した。





刺激的な毎日だった。





みんな音楽に熱い。





ミチルはボーカルとしてパンク系バンドを組んだ。





ピストルズみたいな感じで男が集まるような攻撃的なバンドにしようとみんなで話して盛り上がった。




ピストルズやニルヴァーナなどのコピーバンドとして学内でイベントライブをこなして行く度ミチルの声と激しいパフォーマンス性もバンドの個性となり人気も出た。





そしてミチルも大学3年となりそれぞれのメンバーの演奏レベルも上がった。




そして今度はオリジナル曲をやることになった。




ミチルは今まで書き溜めていたオリジナルの歌詞と楽曲をみんなに見せそれをベースに編曲を行った。




すぐに12曲が完成した。




感じとしてはレイジアゲインストマシーンの様なヘビーな音色伴奏にグリーンデイの様なキャッチーなメロディーイメージのパンク系のバンドスタイルだった。



大学4年になる頃にはどのライブハウスで演奏しても客は満員のソールドアウト。



ワンマンライブをやるまでになった。




激しいパフォーマンスと過激な歌詞でライブ中は喧嘩やケガ人も出たが地元では名実ともに超人気のパンクバンドという位置付けとなった。




ミチルは充実を感じていた。




これが自分の求めていた幸せだと。




音楽は一生懸命弾けば必ず同じように鳴ってくれる。




努力と時間を費やせば必ず答えてくれる。




求めても去りはしない。




最高の友だと。






しかし事態は一転した。





それはメンバーからの突然の解散の申し出だった。





「お前は音楽に対して熱すぎる。学生バンドなのにそこまで要求しないでほしい。付いて行けない。」




「オレはもっと楽しくやりたいんだよね。人気のビジュアル系から誘われててさ。」




「曲の歌詞とか客も過激過ぎて怖いし。毎回ライブの度乱闘起きるのも勘弁。」





確かにここまで軌道に乗ったのは”ミチルの音楽に対して求めるもの”がファンに激しく受け入れられたからではあるがそれはいつしかメンバー全員の総意ではなくなっていたのである。




「そんな・・・。」ミチルは驚きを隠せなかった。



みんなで向かっていたはずのゴールがミチル一人のゴールになっていたのである。




いつの間にかみんな別の方向を向いていたのである。




ミチルはみんなを説得したが無理だった。




3年間かけてここまでみんなで作り上げてきたのに。




バンドとしてここまで息が合うメンバーはいないと思っていただけにミチルは落ち込んだ。



しかしこうなったら新メンバーを集めよう。幸い楽曲は自分が作ったものがあるのだから。ミチルはそう思った。




元々人気バンドだったため新メンバーはすぐに集まった。




そして新メンバーで再活動を始めた。





しかし直後異変が起きた。




突然ミチルの声が出なくなったのだ。




出なくなったとは高音部分で普段の生活には支障はないがミチルの作った高音を大きく出す曲は歌えないのは確かだった。




医者は声帯の酷使が理由で一年くらい大音量で高音を出さなければ元に戻るだろうとのことだっだ。




ミチルは求めていた音楽に対して自分の身体がギブアップしてしまったことを情けなくも思った。




声の出ない自分を忌々しく思った。





もちろんバンドは空中分解した。




ミチルは何をしていいか分からなくなった。




そうして季節は春から秋になり10月になった。




ミチルの声はまだ出ないままだった。




ミチルはリハビリも兼ねて駅前で軽い弾き語りをしていた。




弾き語りをしていると、解散したバンドを知っている人達からは幾度となく声をかけられたが聞かれるのは何故解散したかだけだった。




*******************************************************************************************






ミチルはハッとしてフラッシュバックした過去の記憶から現実に戻った。




「あんたおれの何知ってんの?!酔っぱらいにはデリカシーってないの?!」それがミチルから出た精一杯の言葉だった。



しかも怒鳴ってしまった。




「あーデリカシー無くて訳わかんなくてすみませんでした!だからあたしはダメなんですよっ!。」女の子はカチンときたのかそう言って走って行ってしまった。




「(あ~どうしてあんなこと言ってしまったのだろう。女の子に怒鳴るなんて最低だ。)」ミチルは思った。





偶然だろうが自分の心を見通されたような言葉に、ミチルは自分を守るのに必死になったのだ。




ミチルは自己嫌悪に陥った。




それから3日間ミチルは駅には行かなかった。




またあの女の子に遭遇するのを心の隅で恐れていたからだ。




その次の日、いつもと時間をずらして夕方駅に行った。





ギターを弾こうと腰を下ろそうとするとミチルは腕を強く捉まれた。




ミチルが振り向くと、あの女の子だった。



「あ!」ミチルは驚いた。




「やっと見つけたわ!。」女の子は言った。




ミチルを見つけて走ってきた様で息を弾ませていた。




「え?」




「あなた22時までここいるよね?ね?いるよね?」




「え?まあ・・」




「じゃあ絶対ここで待っててよ。お願い!」そう言って女の子はまた駅の改札の方へ走っていった。




ミチルは訳がわからなかった。




自分と会いたくないだろうと思っていた女の子が自分を見つけて22時まで駅にいてくれというのだ。




「(怒られる?)」ミチルはそうも思ったが自分が怒鳴ったことは謝ろうと思ったので待つことにした。




「(といっても22時ってあと5時間もあるな(汗))」ミチルは思ったがとりあえずいつもの弾き語りを始めた。




すると駅員がミチルのとこへやってきた。




「君どこへ行ってたんだい?2、3日見なかったけど。」見知らぬ駅員がミチルに話しかけてきたのだ。




「え?はあちょっと。いろいろありまして(笑)」ミチルは造り笑顔で答えた。




「じゃあ今日はやっと大丈夫みたいだね。まったく。」駅員は苦笑いしながら去って行った。




なぜミチルに話しかけてきたか謎だった。




今までそんなことは一度も無い。




5時間という時間は長いがミチルはギターを弾きながら”あの子になんて謝るのが一番いいだろう”とかあの子の不思議な行動のいくつかを考えていると意外に22時は早くやってきた。




しかもまたしても息を弾ませた女の子に腕を捉まれて22時であることにミチルは気が付いた。




「ごめんなさい。今日バイトどうしても遅れらてなくて。」



またしても走ってきただろうかミチルはそう思った。




「あ、あたしパン屋でバイトしてるんだ。これバイト先の残り。もらい物だけど。よかったらあげる。」女の子はそう言ってパンが5,6個入った袋をミチルに渡した。




「あ、ありがとう・・。」



ミチルは意外なプレゼントに驚いた。




そして怒ってはいないようだど少し安心した。





「あたしずっと探してたんだけど。あれからあなた駅来なくなったでしょ。」女の子が話を続けた。




「え?あ、たしかに・・」



「ごめんなさい!」ミチルが言い終わらないうちに女の子がそう言って深々と頭を下げた。




「え?!あいやオレの方がごめんなさい。怒鳴っちゃってさ。」とっさにミチルも謝った。



「いいの。あたし思ったことすぐ言っちゃうのが悪い癖っていうか。そんな感じだから。この前あなたの事知ったような事言っちゃってそれからあなたを駅で見なくなったから。謝ろうと思ってたの。」




「いやオレの方が悪いよ。ごめん。てか探してたってマジで?」




「探すって言っても学校とバイトあるからバイト前後駅をちょっとね。駅員さんにもちょろっと聞いたりして。」



ミチルは駅員が話しかけてきた理由がやっとわかった。しかし駅員の言い方からして

”ちょろっと”ではない気がした。




ミチルは申し訳なさと同時に遭遇を避けていた自分が恥ずかしくなった。




「そうなんだ。オレ2,3日ちょっと用事あったからさ。ありがとね。」ミチルはもらったパンの袋を見つめながらウソをついた。




遭うのを避けてたとは口が裂けても言えなかった。




ミチルはふともらったパンの入った袋に紙が入ってるのに気付いた。レシートだった。




パンはバイト先の余りではなくバイト先でお金を出して買ってきたものではないのか。ミチルは思った。





「あのさ、良かったら一緒食べない?なんかたくさんあるみたいだし。」ミチルはもらったパンの袋を指差した。




二人は丁度良いロータリーの縁石に腰掛けてパンを食べながら少し話をした。




「あ、オレ名前清水ミチル(シミズミチル)。ミチルて呼ばれてるからミチルでいいよ。」



「へー。君ミチルって言うんだ。女の子みたいでかわいいね。」




「だからあんま気に入ってはないけどね。あ~君名前聞いてもいい?」




「ごめんあたし自己紹介もしてなかったね。田中千尋タナカチヒロ。千尋でいいよ。」






二人は同い年であること、



千尋はミチルの大学の隣の女子大であること、



ミチルと初めて会った日千尋は彼氏にフラレた帰りだったことが分かった。




「(だから猫に独りぼっちとか話していたのか)」ミチルは納得した。



独りぼっちはミチルでも猫でもなくて千尋は自分のことを言っていたのだ。








そして失恋話で友達とかなり飲んだ帰りが二回目に会った時だったことがわかった。




浮気した彼氏に新しい彼女について問い詰めると変な事をベラベラしゃべらないデリカシーのある子と言われたのが自分と逆でショックだったらしい。



そういうこともあってミチルに謝ろうと探したのもあるようだった。



ミチルは何かいろいろと話が繋がった気がした。








しかしミチルは自分の事をほとんど喋っていなかった。



なぜミチルがあんなに怒鳴ってしまったのかも。






しかしこの千尋という子はそういうのは特に気に留めていないようだった。






二人は特にアドレス交換などはしなかったがすぐに仲のいい友達になった。





いつも千尋のバイトが終わるくらいに丁度ミチルは駅で弾き語りをしていたのでミチルと千尋はよくロータリーの縁石に座って話をした。




学校のことバイトのこと。




好きなお笑い芸人のこと。




ハリウッドスターは誰が好きかなど。




話題は何でもよかった。




何も気を使わず話すことができた。




千尋はミチルの名前が女の子みたいだからと言ってよく男性口調の低い声を出して「ミチルちゃん」と呼んでミチルをからかったりした。




千尋は自分でそれを「ナイスガイ口調」と呼んでいたがミチルはそれで呼ばれるのを嫌がった。




しかしミチルはこういう関係も悪くないかなとも思っていた。




大学へ入って付き合った女の子も何人かいたが体だけ的な感情しか抱かなかった。




そういうものに虚しさを感じてはいたがそういうものなのかなとも思っていた。




しかし会話だけでこんなに楽しいと思う相手は初めてだった。




ミチルにとって自分自身をつつみ隠さない性格の千尋はとても新鮮に眩しく見えた。






しかし心の影を持つ自分には眩し過ぎる存在にも感じ始めていた。





自分とはまったく違う世界の人間にも見えて仕方なかった。












11月になったある日の夜。



いつものように駅の縁石で二人は楽しく話をしていた。



話も一段落すると、ミチルはおもむろにギターを取り出しオアシスというバンドののDon't look back in angerを弾き語りで歌った。



以前千尋が”誰が歌っているのか”とミチルに聞いてきた曲だ。




千尋は神妙な面持ちで聴いていた。




歌い終わるとミチルが言った。




「感想は聞かなくても分かってる・・。実はさ・・。」ミチルはミチルの過去のことについて千尋に話した。





中学の部活でのこと、音楽を聴く以外何もなかった高校のこと、大学で始めたバンドと解散と自分の声のこと。




そして自分の歌声から千尋に全てを見抜かれたと思ったこと。




全てを話した。




とても暗い話ではあると思ったがミチルは全てを話した。




千尋に自分の全てを知って欲しいと思ったのだ。




話が終わると長い沈黙が訪れた。





お互いの息が聞こえるくらい静かに感じた。




しばらくして千尋が口を開いた。




「ミチルはホントに誰かを好きになったことないんだ。」



「・・・たぶん。」ミチルは言った。



「じゃあ好きって言った事もないんだ。」



「・・・うん。」ミチルは言った。



「なんかそういうの苦手ってか恥ずかしいしさ・・。」ミチルは続けた。




「だろうね。」千尋が言った。




「だろうねって・・」ミチルが聞き返すように言った。




「だろうねだからだろうねよ。」




「は?意味がわかんないよ!。」ミチルが言った。




突然千尋は縁石を立った。




そしてミチルの唇にキスをした。



それは10秒くらいの時間だった。



ミチルはまるで時間が止まったかのようにも感じ、そして今まで感じたことのない永い時間にも感じた。




そして首を少し傾けて千尋が言った。




「意味わかったかな?ミチルちゃん。」いつものナイスガイ口調で千尋が言った。




ミチルはまじめに話したのにからかわれたと思った。




「は?! わ、わかんねーよ!!」ミチルは言った。




「じゃ、わかるまで続けようか?ベイビー。」千尋がまたナイスガイ口調で言った。




「いいよ!もう。」ミチルは強く言った。




それを聞いて千尋は笑った。




「ミチル、手出して。」




そう言って千尋はミチルの手首を掴むと手の甲を上にした。




「何?」ミチルは言った。




「マジックだよ。」千尋が答えた。



「手品?」ミチルが訊いた。




「そう。油性のね。」千尋はそう言って自分のバックから油性マジックを取り出した。




「マジックってペンじゃん!?まさか・・」




「動かないで!このドリトル千尋におまかせあれ!」




「おいっ!」



「ちょっと動かないでって言ってるでしょ!」




千尋はミチルの手の甲に油性マジックで字を書いた。




『この人はチヒロの彼氏です。』そう書いてあった。




「何これ?(汗)」ミチルが言った。




「ハートも入れる?」千尋が軽く答えた。




「いやいいよ(汗)!」




「てか何これ?」



「だからあなたは私の彼氏です。てことだよ。」




「え?!いつから!?」



「今から。」




「どうして!?」



「いやなの?」




「いや・・いやじゃ・・ないけどさ。」




「じゃあいいじゃん。あ、携帯貸して。」



千尋は赤外線機能を使い自分でアドレスを交換した。





「さみしい時はいつでも電話していいぜベイビー。」



千尋はいつものナイスガイ口調でそう言って帰っていった。





ミチルはしばらくポカンとしていた。


ミチルは狐につままれるどころか擽られたような不思議な感覚だった。







しかしそれから二人はメールや電話でも連絡をとるようになった。



そしてよく二人で出かけるようにもなった。





その日は日曜日で二人で市の水族館に行く約束をしていた。




朝10時に駅で待ち合わせだった。



アパートで用意してるミチルの電話が鳴った。



大学の友達の広瀬からだった。



広瀬とは以前コンビニのバイトで一緒だった。




電話は広瀬がインフルエンザにかかってしまい今日のバイトに代わりに出て欲しいという内容だった。



バイトの代役が今日に限って見つからないらしく以前バイトしていたミチルならOKとオーナーが言ったらしい。




「でもなあ・・予定が・・」




「頼むミチル!。ホント困ってんだ!。もうお前しかいなくてさ!。でないと店開けられないんだ。」




「・・・わかった。でも9時から16時までな。」迷ったがミチルは引き受けた。




「サンキュー!マジ助かったよ。」




ミチルは電話を切ってすぐに千尋に行けない趣旨のメールを送った。




「やばい。あと10分しかない。」ミチルは急いで用意をして代役のコンビニへ向かった。




通りに面したその店は日曜のドライブ客などでとても忙しく昼飯の時間もほとんど取れない程だった。




バイト交代の16時になってミチルは携帯を家に忘れてきていることに気付いた。




結果的にドタキャンになってしまったのでおそらく千尋から何かメッセージも来ているだろう。




そう思い急いでアパートに帰って携帯を見た。




すると千尋から3件着信があった。




二時間おきに。




メールも来ていた。




ミチルはもしかしてと思って自分の送信メールを見た。




すると×マークで未送信になっていた。




「しまった!。」ミチルはすぐに千尋に電話した。




「千尋ごめん。メール未送信になってて。今どこ?」




「駅だぜ。ベイビー。」いつものナイスガイ口調だった。



ミチルは少しホッとした。



「ごめんすぐ行く!」ミチルはそう言うと急いで駅に向かった。




20分後ミチルは駅に到着したが探してもそこに千尋の姿は無かった。




「もしかして怒って帰っちゃったか。やっぱ6時間は・・。」ミチルは千尋に謝りの電話をかけようとした。



その瞬間、




「16時サンマル分、遅刻犯緊急確保!」という声と共にミチルは後ろからタックルされた。



千尋だった。




「もう連絡ないから何かあったのかと思ったよ!」千尋はそう言ってミチルの胸にパンチするマネをした。




「ホントごめん。」そしてミチルは理由を説明した。




「しょうがないヤツだなベイビー。」ナイスガイ口調で千尋が言った。




「怒ってないの?」ミチルが言った。




「まあ確かに退屈だったけどあたしも5時間待たせたこともあったしね。」千尋が笑いながら言った。




「そだね。」



「あら開き直っちゃう?でも結構退屈しのぎにいろいろ考えてたらいい案が浮かんだのよ。」



「いい案?」




「そう。遅刻犯は逮捕5回で実刑に処します。」




「え?」




「ミチルが5回遅刻したら・・」




「ペナルティとして、言ってもらいます!」千尋が深刻な顔で言った。




「何を?」ミチルが訊いた。




「『千尋ちゃん好きだよ~』って。もちろんかわいらしく感情込めてね!。そしたらあたしが『知ってるぜベイビー』ってカッコ良く言うから。」





「やだよ!!かっこ悪いなんでそんな・・。」





「か弱い女の子を6時間も待たせておいて?あ~寒かったなぁ~駅は。」





「てかオレ遅刻しないタイプだし。高校も無遅刻無欠勤だったし。」





「ならいいじゃん。ミチルちゃん、あと4回でペナルティだぜベイビー!。」





そう言って千尋は改札へミチルを引っ張って行った。





「え!?」





「え?って水族館よ。」




「でも水族館17時までだよ。もう16時50分だし。」




「いいからいいから。」




千尋はそう言ってミチルを電車に乗せた。




水族館に着くと予想通り17時で門が閉まり閉館していた。




「ほらね。」ミチルは言った。




「よし門を乗り越えるぜベイビー。」千尋がナイスガイ口調で言った。




「え!?まじで!?」ミチルは驚いた。





「冗談よ。貸しきり水族館は映画の世界でしょ。」



「水族館より海岸散歩したかったの。前、電車から海岸見えた時きれいだなあって。」



そう言って千尋は水族館のすぐ横の道を指差した。






二人は海岸を散歩した。






辺りはもうかなり薄暗かったが昇りかけた月と外灯のおかげで灯台の方へ続く道まで見えた。




二人は海の見える階段状になっている石のところに腰を下ろした。





風もなく海は静かだった。





「なんか・・きれいだね。」ミチルがポツリと言った。




「うん。」千尋が答えた。




15分くらい座っていたがお互いそれ以外何も話さなかった。





そして千尋が口を開いた。




「初めて会った日さ・・」




「あたしが猫に話しかけてたの見て引いたでしょ。」




「え?まあ・・あの時は少し。」




「だよね。はは(笑)」




「いつもそうなの?」




「うーん。本読んでからかな。」




「何の?」




「100万回生きたねこ。知ってる?」




「さあ。どんな話?」




「100万回繰り返し生きたねこが最後に愛を知ってからはもう次生まれ変わることは無かったって話かな。うまくいいとこ説明できないけど。」




「その本読んでからはさ、なんか道路のネコとかも、もしかしたら何かを探して生きてたりするのかなあなんて気がしたりしてさ。生きる意味みたいなの。人みたいに。もしかして何万回か生きたネコだったりするかもしれないし。なんてね。あ~ダメだ。こういう訳わかんないことベラベラ言うからダメなんだよねあたし。男の人ってこういう変なこと言う女好きじゃないもんね。」千尋が笑いながら言った。




「はぁ~。」千尋がため息を一つついた。




そして少し黙った。





「あ、人には言わないでよ。変人に思われるから。」




「・・もちろん。」




ミチルはそう答えるとバックからペンを出して千尋の手の甲に字を書いた。




「ちょっとそれ油性?」




「残念ながら水性。はい出来上がり。」




千尋は書いてある文字を見た。




『この人はミチルの変人ヘンジンです。』と書いてあった。




「ちょっと!何で変人なのよ!」




「ごめん、ヘンジンヘンジンって言うから間違ったよ。貸して。」





ミチルは笑いながら『変人』に大きく×印を入れてもっと大きく『恋人』と書き直した。




「おれ、今のままの千尋でいいと思うよ。」




ミチルは千尋を強く抱き寄せた。




月はもう高く昇っていた。静かな夜だった。
















12月になり今日はクリスマスイブだった。



ホワイトクリスマスという事もあり街のクリスマスセールの飾りつけも一層華やかに見えた。




ミチルは千尋と駅で22時に待ち合わせていた。




千尋は今日もバイトだったが終わって一緒にクリスマスイルミネーションを見に行く約束をしていた。




時刻は21時45分分だった。




ミチルは駅に向かっていた。




すると駅裏の方から走って逃げる中学生らしき2人組みとすれ違った。




「ほっとけよ。」すれ違いざまにその中学生がもう一人に言った。




ミチルは不思議に思い駅裏の路地を覗いた。




すると3人の不良中学生らしき集団に殴られている一人の中学生を見つけた。




ミチルは迷ったが助けに入った。




不意を突かれた3人の不良中学生は逃げた。




「おい、大丈夫か?」ミチルは殴られていた中学生に言った。



結構まじめそうな子だった。



「うっ・・」中学生は泣くのをこらえていた。




「あいつら僕を見捨てて逃げたんだ。」




あいつらとはすれ違った二人のことだろうとミチルは思った。




そう言葉にするとその中学生は声を押し殺しながら涙を流した。




「ああ・・。そういう奴らもいるさ。」ミチルは言った。



「通る人はみんな無視で・・助けてくれなくて・・。お兄さんはどうして助けてくれたんですか?」



「別に・・。」



「・・似てたから。かな。知ってるやつに。」



「まあいいよ。それは。オレも用事あるしお前も早く帰りなよ。あ、その前交番行ったがいいかも。」



「あ、はい。」



中学生はお礼を言って走ってその場を去った。



ミチルは時計を見た。



「やば。もう55分だ。」




「ブチッ!!」


すぐに激痛が走った。





見るとミチルのわき腹にナイフが刺さっていた。




振り向くとさっきの不良の一人だった。




ほんの一瞬の出来事だった。




「カッコつけやがってそういう偽善者が一番ムカつくんだよ!」




そう言って不良は逃げて行った。





ミチルは倒れ込んだ。




なんとか出血した場所を押さえはしたが刺したナイフを抜かれたため大量の血が流れ出ていた。






「(これってのが俗に言う走馬灯ってやつ?かな)」



赤い鮮血と路地に溜まった白い雪を見てミチルは昔のことを思い出していた。




過去の自分と今の自分。そして千尋のことも。




「千尋・・」




意識が薄れていく中ミチルは最後にそう思った。








数分後ミチルは救急車で病院へ運ばれていた。




駅は人が刺されたという事で救急車とパトカーで大騒ぎだった。




千尋もミチルの携帯に救急隊員が出たことから急いで病院に駆けつけた。




意識はまだ無かったが輸血も済み命に別状は無いだろうということだった。




ナイフが抜かれていたため出血は多かったものの刃渡りが比較的小さなナイフだった事、早期に発見できた事により出血多量寸前で処置できたのだった。




ミチルの両親は実家が遠方という事と雪の悪天候のため到着は明日になるとのことで、病室では特別に許可をもらい千尋がミチルに付き添っていた。








ベットのミチルを見つめ、千尋はずっとミチルの手を握っていた。





もう7時間近くなるがなかなか意識は戻らない。





既に時計は午前5時を指していた。





「んっ・・」ミチルがゆっくりと目を覚ました。





「ミチル・・。」千尋はミチルの手を強く握った。






「千尋・・」


「オレ・・」ミチルは途切れ途切れになりながら言った。





「そうよ!助かったのよ。あなたが助けた子がミチルの名前を聞こうとまた戻ってきて。早く発見されたから助かったのよ!。」千尋は説明した。





「そっか・・。いい事も・・あるね・・。」ミチルは力無くだが笑った。





「バカねもう少しで出血多量で死ぬとこだったんだよ!。」千尋は涙目で言った。




ミチルは千尋の目が泣き腫れているのがわかった。




「千尋・・もしかして・・ずっと?」




千尋は何も言わなかった。そして涙が頬に流れた。





「ありがとう・・。」ミチルは千尋に言った。







しばらくお互い何もしゃべらなかった。








「今日、ごめん・・。大遅刻だよね・・。」とミチルが口を開いた。




「ホント・・。待たせすぎよ・・。」少し微笑んで千尋が言った。





「遅刻・・5回で・・アウトだったよね・・。」ミチルが言った。





「そう。だからあと2回しかないよ。5回目はペナルティなんだからね。」





「そっかあ・・。あと2回もあったか・・。」ミチルはゆっくりと言った。





「あと2回もじゃなくてあと2回しかだよ。」千尋が釘を刺した。





「いや・・・・もう・・必要ないと思うからさ・・。」ミチルは千尋を見て言った。




「え?」












「チヒロ・・。愛してる。」











そして涙混じりの優しい笑顔で千尋は答えた。













「 知ってるぜ ベイビー。 」




(終わり)











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― 新着の感想 ―
[一言] とってもいい作品でした! 後半涙でぐしゃぐしゃでした・・・・っっ!
2011/03/04 19:36 退会済み
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