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第5話 空飛ぶ資料の正体

「ぎゃー!!し、資料が浮いてるぅぅう!!」


空中に浮かぶ資料に驚き、叫びながら腰を抜かして尻もちをついてしまった。


「化け物だー!!資料の形をした化け物だー!!」

僕は半べそをかきながら資料を指差し、子供のように喚き散らした。


「“化け物”みたいなやつ相手に仕事してるやつが、ぎゃーぎゃー騒ぐんじゃねぇーよ...」


「あ、あれ?」

資料の方から声が聞こえたので、よくよく観察してみると、資料から見覚えのある白い羽がパタパタとはばたいている。

片方の羽で資料を持ち、もう片方の羽で器用に飛んでいるふわもこ太郎がそこにいた。


「ほーう、随分と綺麗にまとめてあるな、この資料。真面目なこったぁ。あの男、前の会社ではこういう資料作成の事務作業でも担当してたのかね」


「いや、蓮さんは事務より戦闘がメインだったと思うけど...って、なんでふわもこ太郎がこの事務所にいるんだよ!!」


僕が出勤する際は、“家で大人しくしてるわー”と言いながらベットでゴロゴロしていたふわもこ太郎が、なぜこの西葉事務所にいるのだろうか。


(僕の鞄のチャックが空いていることから察するに、内緒で鞄の中に入ってきて、ここまでついてきたんだろうな...)


「おい...一応確認するが、その『ふわもこ太郎』って私のことか?」

ふわもこ太郎が、資料から顔半分を出し、僕の顔を睨むように覗き込んでいる。


「うん、そうだよ。だってふわふわでもこもこしてるから、ふわもこ太郎だよ。こうやって会話する時に、名前がないと困るだろう?」


「...これも一応確認で聞くけど、お前、自分の子供にはなんて名前つけようと思ってる?」


「え!なんだよ急に。男の子ならかっこいい名前がいいから、ぽん太君、女の子ならやっぱりすごくおしゃれで可愛い名前にしたいから美瑠びゅーてぃふるちゃんがいい!って話してるけど、妻には反対されてるんだよなぁ...なんでかなぁ」


ふわもこ太郎は僕の顔をじーっと眺めると、小さなため息をついた。


「お前のネーミングセンスが終わってるってことが、よく分かったよ」


「え!!??何かダメだった!?」


「『何か』ダメ、というか、『何もかも』ダメというか...まあこの話はいいか。私の名前も何でもいいけど、ふわもこ太郎は長いからせめてもう少しコンパクトにしたらどうだ?」


「わかった!じゃあ『もこ太』ね!最高にイケてる名前だよね」


「...あーはいはい、ソウデスネ」

もこ太はカタコトで答えると、再び資料に目を通し始めた。


「そんで、お前はどうやって犯人が次出没しそうな場所を特定するんだ?」


「そんなのもちろん気合いだよ!気合いで手当たり次第探すんだ。気合いだ気合いだ気合いだー!!」

僕はガッツポーズを上に3回掲げながら「気合いだー!」と叫んだ。


「...アニマル春野かな?」


「え?なんすかそれ?」


「......これがジェネレーションギャップか...」

もこ太はそう言いながら、悲しそうな、不満そうな顔をすると、資料を僕のデスクに向かって乱暴に投げ飛ばした。


「あーちょっと!大切な資料なんだから大事に扱ってね!」


資料はクリップで止められていたが、投げられた影響で数枚床に落ちてしまった。

落ちた資料を拾い上げると同時に、資料の内容が目に入る。これは、犯人が今までに出没した場所と盗んだ物をまとめたリストのようだ。


「宝石、洋服、食べ物...有名な絵画まで盗んでるのか。盗んだ物の共通点といえば、どれも安物じゃなくて高級な物ってことくらいしかないかな。何か、共通点が分かれば、次に狙われる場所も特定しやすいと思ったんだけどな...」


もこ太はゆっくりと僕の肩に着地し、僕の手にある一枚の資料を指差した。


「知ってるかぁ?何度も被害に遭っているこの園芸店は、毎月1日に目玉になる高価で貴重な植物を入荷している。人気でその日にすぐ売れちまうらしいよ。

犯人は毎月1日はいつも、その園芸店で盗みを働いていたようだが、この資料を見ると今月1日は美術館で絵画を盗んでいるようだ。

海外の有名画家が10年ぶりに展示イベントを開き、最新の絵画が世界初、ここで展示されるということで話題になってたやつだな」


「園芸店の植物よりも絵画を優先した...よりいっそう『レアな物』を盗むことにしたんですかね?」


「そっ、特にこいつは資料を見る限り『一点もの』が好きらしい。さほど高価でもなさそうなオーダーメイドの雑貨やアクセサリーを頻繁に盗んでいるな。


こいつの活動範囲内で、イベントで検索すると...」

もこ太は僕の机の上にあるパソコンを器用に操作して、この地域周辺で行われる予定のイベントを調べている。


「『【世界初!】黄色に光る新種“光幻魚こうげんぎょ”世界で見られるのはここだけ!今すぐ佐瀬水族館へ!』

...このイベントなんか、絶好の穴場だと思わねーか?」






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