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第1話 僕は完璧なパパになる!!

あなたは、今、幸せですか?それとも、不幸ですか?

それはなぜですか?満たされているからですか?不満があるからですか?

愛されているからですか?愛が足りないからですか?


あなたは、もし、今日、この世から去ることになるとしたら、

何を思いますか?何を思い出し、何を後悔しますか?


あなたは、この世に未練がありますか?



----------------------------------


「妻が・・・妻が妊娠しましたー!!!!!」


大声を出しながら豪快に扉を開き、事務所に入る。

勢いよくドアを開けたせいで、ドアと壁がぶつかって「ドガッ」という音が鳴った。もしかしたら壁に傷がついてしまったかもしれない。

でも、今は気分が高揚してしまって、そんなことはどうでもいいんだ!!


「はあ...朝からうるさいっすよ~、先輩」

オフィスのソファに寝転がっている榎本君が、アイマスクをちらりと外し、こちらをけだるそうな顔で見てきた。


「まあまあ、そう言わずに。ご懐妊をお祝いしようじゃないか。おめでとう」

蓮さんは、にこやかな笑顔で僕に拍手しながらお祝いの言葉を述べてくれた。


「ありがとうございます!!僕は...僕はもう少ししたらパパになるんだ!子供の恥とならないよう、子供に誇れる完璧なパパになるために、今日から頑張るぞー!!」


「うええ~...だから朝からピーピーとうるさいっすよ...うるさくて眠れやしな...」

榎本君はそこまで言い終わるといびきをかき、爆睡し始めた。

(本当にこの子は発明している時間以外は寝てばっかりだな...)


彼の名前は榎本仁えのもとじん君。

たまに女性に間違われることがある、と本人が言うくらい華奢な体型で、いつも気だるそうに、眠そうにしている。目まで覆い被さる長くて黒い前髪のせいで、彼が目を瞑っているのか、それとも起きているのか、たまに分からないことがある...。

最近は彼女からアイマスクを貰ったらしく、寝る時はアイマスクを身につけて寝るようになったので、寝ているのか起きているのか一目で分かるようになった。

(まあ、そもそも寝ないで仕事しろって話ではあるんだけどね...)


榎本君は、僕よりも1年あとにこの事務所にやってきた、僕の初めての後輩君だ。

この事務所のメンバーでは、霊力は1番少ないため、戦闘要員としてではなく、戦闘や捜索に必要なアイテムの発明を担当している。

正直、僕が何度注意しても気だるい口調は治らないし、事務所ですぐ寝るし、社会人としてはダメダメなところがいくつかあるけど、発明家としてはピカイチの才能を持っているのも事実だ。

本当は、うちよりもっと大手の事務所にスカウトされていたらしいが、うちの職場の方が休みがとりやすい上に、彼女の職場と近いからここにしたとか...。


「ははは、すごい意気込みだな。それじゃ完璧なパパになるための修行の一つとして、まずはいつも通り「悪霊退治」の仕事に行ってもらうか」


「はい!!任せてください!!!」


僕に仕事の指示を出すこの人は、僕の先輩でもあり、この事務所の経営者でもある西葉蓮にしはれんさん。

堅苦しいのが嫌いで、親しみを持ってほしいということで皆から下の名前で呼ばれている。


年齢は教えてくれないが、綺麗な茶色の髪の毛と白いツヤツヤの肌、結構若そうなんだよなぁ...

目は一重でキリッとした大人のイケメンで、正直、童顔の僕からしたらすごく羨ましい...


ま、まあ、僕は、童顔のイケメンではあるけどね!

童顔界の“イケメン”ではあるけど!!


.............

.................(告白されたことは一度もないけれども....)



蓮さんは僕よりも霊力が多いことや、子供の頃からお父さんに武道を教わっていたこともあり、戦闘スキルは僕より圧倒的に高い。


蓮さんは、元々は大手の事務所に所属していたらしいんだけど、その事務所の「金儲けに繋がりやすい、目立つ悪霊だけ退治して、金にならない小さな悪霊の依頼は受けない」という方針が気に食わなかったらしい。


それで自らこの「西葉事務所」を立ち上げたとか。すごい人だよ...


そして僕の名前は春野匡希はるのまさき

この事務所で働く、そして未来の完璧なパパになる(予定)のゴーストファイターの1人だ!


ゴーストファイターのお仕事は、現世に巣食う悪霊をあの世に返すこと。


この地球上の生き物は、植物、動物も、命あるものであればすべて霊力を持ってこの世に生まれ落ちる。

その霊力の差には個人差があり、僕や蓮さんのように霊力が人よりも多いタイプもいるが、基本的には一般人の霊力は僕たちの10分の1程度だ。


そして、生物は死んでしまうと、そのまま魂があの世に還るパターンと、この世に留まってしまう2つのパターンがある。


原因は不明だが、現世に留まってしまう魂の特徴として、この世に強い執念がある者や、生まれ持った霊力の量が多い者の魂などが挙げられる。


この仕事に就くに当たって、色々な本や論文を読んだことはあるけれども、ここの原因は詳しく解明されていないんだよねぇ...。


現世に留まる魂がみんな悪い者ってわけじゃないんだ。

普通のゴースト(一般的には幽霊と呼ばれている)たちは、現世に何の影響も与えずある程度すると勝手に成仏する。

しかし僕たちが悪霊と呼ぶゴーストたちは、この世界とはかけ離れた、特別な『力』を持っている。


基本的には霊力の少ない一般人がゴーストを視認することはできない、が、悪霊の中には「あえて人に見える」姿に化ける力を持つ者もいる。


「姿が見えない」ことを利用する悪霊も「姿が見える」ことを利用する悪霊もどちらも存在する。

能力次第では、僕たちの住む町の治安に大きく影響することもあるんだ。


僕は、この町の平和を守りたい。

そして、現世で悪霊となってしまった魂を成仏させてあげたい。


そのために、僕は悪霊と戦う、この「ゴーストファイター」という仕事に就いたんだ!!!





「今朝から悪霊探知機が反応していてな。最近この町で子供の誘拐事件が多発しているだろう?

その犯人の割には霊力が弱すぎる...が、霊力をわざと弱く見せる力の可能性もある。見に行ってくれないか?」


蓮さんは、事務所にある“悪霊探知機”とパソコンの両方を素早く操作している。


僕たち“生きている者”の霊力は、薄い青色のようなオーラで、体全体を包んでいる。

たいして、普通のゴーストの霊力は、色がなく、白いモヤのような色の霊力を全身に纏っている。

そして、“特別な力”を持つ悪霊は、僕達や普通のゴーストとも違う、もっと薄暗くて冷たい色、黒と紺色の間のような霊力を持っている。



こういうのに詳しい、発明と研究大好きな後輩の榎本君曰く、僕たち生きている者と普通のゴーストの霊力は、色は違うけれども元々の物質的にはかなり近い物らしい。

僕たちの霊力には生命エネルギーや活動エネルギー、記憶エネルギー...他にもたくさんのエネルギー源なるものが入っているらしいんだが、そこから生命エネルギーがほぼなくなったものが普通のゴーストの霊力みたいだ。

(だから悪霊と違って、普通のゴーストはすぐ成仏するんじゃないか、と言ってたなぁ...)


でも、悪霊はそもそもの霊力の物質が私たちとはかなり異なっているらしい。

(榎本君はこれよりもっと詳しい説明をしてくれたけれども、僕はさっぱり分からなかったから「あー!うん、分かる分かる!なるほどね!それなぁー!yeah!」って聞き流しちゃったな...)


正直、僕にはよくわからないけど、「悪霊の霊力は他の霊力と違って“特別”なため、逆に探知もしやすい。だからどのゴーストファイターの事務所も悪霊探知機を使ってるんだな〜」と、僕の中で勝手に簡易的に解釈をしている。


まあ、うちの悪霊探知機は、他のゴーストファイターの事務所に置いてある物とは違って、榎本君改造.verなので、探知できる距離も通常より長いのが自慢なんだよね!よくやった榎本君!!


そう思い、誇らしげな顔をして、寝ている榎本君の肩をポンポンっと叩く。



(そういや、あのポケット探知機も榎本君が少し改造してくれたんだったな。)

机の上に置いてある、スマートフォンのような見た目のポケット探知機は、持ち運びができるサイズなので、外出時に近辺に悪霊がいないか確認することができる。普通の悪霊探知機よりは探知できる距離がかなり短くなってしまうが、それでも、ゴーストファイターなら、ポケット探知機は調査時は必須アイテムだ。



「よし!!早速見に行ってきます!!未来のパパが!!この町の平和を守るぞーー!!うおおおーー!!」


僕は大急ぎで調査の支度を始める。


「お、おい。そんなに急がなくても...」

蓮さんは苦笑いしながら「落ち着け」と言わんばかりの表情をしている。


「止めないでください!!僕がこの町の平和を守るんですから!!」


そう言って僕は勢いよく事務所を駆け抜けていった。









「すいません、ポケット探知機忘れました...」


「だから急ぐなと言ったのに...」

蓮さんは呆れた様子で頭を抱えている。


「先輩〜しっかりしてくださいよ〜」

寝ていたはずの榎本君はいつの間にか起きていて、僕のことをケラケラと笑っている。


僕は頬を赤らめて恥ずかしそうに頭をかきながら、忘れ物がないかしっかり確認して、ゆっくりと事務所の扉を開けて出発した。



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