兵庫のコウノトリへ③
「全く 能天気な奴」
男は 部屋の椅子に腰かけて もう一度 大きなため息をついた
昔からそうだ
—彼女はいつも 能天気で へらへらした女だった
学生時代 彼女はいつも おしゃべりで 元気でニコニコしていて
いつでも クラスの中心にいる人間だった
賑やかな彼女の周りには いつも 人がたくさん集まっていた
物静かで 口下手で 無表情で 何ならいつも むすっとしていて
機嫌が悪そうに見られがちな そんな自分とは 正反対の所に 立っていた
彼女はいつも明るくて 楽しそうで
まるで 苦労や悩みなんて 一切知らず
そんなこととは無縁で これまでの人生を 歩んできたかのようだった
しかし 実際には違った
彼女はかなりの苦労人で 人の痛みや苦しみが 誰よりも身に染みて分かっているからこそ
誰に対しても平等に 強く 優しくあれるのだった
そう 誰に対しても 平等に
誰に対しても 優しくて 強くて
弱みや弱さ 自分の辛さ 苦しみなんて 決して人には見せない人だ
どんな時でも 彼女は笑っていて いつも 元気に振舞っていて
だからこそ そんな彼女の 隠された
苦しみや辛さから 自分だけは 目を背けてはいけなかったのに
見て見ぬふりをして 気がつかなかったふりをして
それではいけないと 分かっていたはずなのに
「はあ」
もう一度 男は大きくため息をついた




