10/13
9.
ああ、頭が重い。なにも考えられなくて、ただ足が動くに任せて家に帰った。玄関を開けると、見たことない男物の靴。その隣に母の靴。
視線を上げる。廊下に、点々と何か落ちてる。私はそれをひとつだけ拾った。女性物の、下着。みたことある、これは。おかあさんの。
母の寝室の前まで辿ると、少し開いた扉から、荒い息遣いと…獣みたいな声が聞こえてきた。
「お母さん。誰?それ」
音もなく扉を開いて問い掛ける私に、母と男は心底驚いたようで動きを止めた。
「あっ、あ、梓!?ち、ちち違うのよ、このひとは」
聞いておいて何だが、別に知りたくもなかった。
「ね、あの男の首、もいでくれん?」
気持ち悪い、見たくもない、顔。それの首がブツン、と音を立てて千切れ、頭がベッドに転げ落ちた。
「ッ!!?いっ、イヤァァア!!!」
叫ぶ母。うるさい、うるさいうるさいうるさい。
「ね。お母さん黙らしてくれん?」
母を指さしてそう言うと、ぴたりと悲鳴が止まった。そして、ゆっくりと倒れ込む。母はそのまま動かなくなった。
ね、分かるでしょ、お母さん。ちゃんと居たでしょ。
このコ達は居るんだよ。信じてくれんかったけどさ。




