意外だが当然の成り行き
ドアチャイムを鳴らして入ってきた人物を見て一瞬ギョッとしたが平静を装い、声を掛ける。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
会釈をしてゆっくりとカーネルママに近づき隣の席に座る。男性は頭を下げながら語りかける。
「カーネルママ、お呼びいただき光栄だよ。今回の件はどうお礼を言ってよいやら」
思っていたとおりだが、カーネルママの客だったか。文脈を察し目を逸らして一心不乱にケバブを食べ始まる明美。結はテーブル席のコンセントにノートパソコンの電源をつなぐと仕事モードに入ってしまう。
「春日井中将の息子が官房長官とは、大きくなったな。そして、呼びたててすまない。今は関係者しかおらぬ、周りも手のもので封鎖した。頼むなら今だな」
カーネルママが大佐時代の顔つきで春日井官房長官に問いかける。フォーマルな装いの官房長官としては若く見える男性は俺に向かい頭を下げてくる。
「娘の代わりに攫われた女性を助けてくださってありがとうございます。由々しき国家の根本を揺るがしかねない問題を解決いただいて国民を代表して感謝します」
苦笑いをして官房長官に出す珈琲をネルドリップで淹れ始める。長官はその様子を見守り俺が温めたカップに淹れた珈琲を一口飲んで微笑む。
「この様に平穏を愛する君に、頼まなければならないとは…………平和の為、君の力を借りたい。話を聞いて欲しい」
ゴクリと息を呑む。話が大きくなってきたな。官房長官は今回の事件の背景を話し始める。この国は今までの生ぬるい政権の負の遺産と、大国からの圧力により裏の世界からの干渉に国家として抗う力は皆無と言っていい程無い。
ただ、民間に古くから続くいくつもの裏の組織がある為、乗っ取られることなく程々に生かされてきた。それぞれの組織は積極的ではないものの、国家としての日本が無くなることを危惧し日本を守ってきた。
今回、官房長官の娘の警護に回ったのは本来は、この様なことには関わらないが、この国の裏組織でも唯一と言っていい金だけでも動く組織『夢魔殺し』だ。明美や結の所属する組織でもある。
巨額の資金が必要な夢魔殺しに頼らねばならぬほど、官房長官のやろうとしていることは裏の世界の力をこの国に入れない力となる動きだということ。
向こうの抵抗も大きいのは当たり前だ。さて、どんな依頼なのか?
正直、乗り気ではない。ただ、力を振るうことでこの国の、ひいては俺の家族の平和が保たれるのであればと話だけは聞いてもいいと思った。
「話だけは聞こう。ただ、受けるかは別だ」
彼は俺の返答を聞き安堵の表情を浮かべた後、依頼を話し始めた。




