廃墟ビルの戦闘
〜ニューカムイタウン廃墟ビル高層階〜
明美からの情報と俺が奴らのアジトになっているこのビルを探った結果を踏まえ、拉致犯は全部で十人。全員武装している。武装と年齢層のバラバラさから見て組織的な軍隊ではなくテロリスト集団の可能性が高い。
闇夜と瓦礫に紛れて拉致犯が潜む二十三階の奴らのフロアの通風孔を移動中、古い作りの為潜入がしやすくて助かる。最近のビルじゃこんな事は出来ない。
奴らが集まっている部屋に到着、様子をうかがう。テロリストは六名、その中に一人見知った男が混じっている。
向井彰、俺の二歳上で何かと俺に突っかって俺に傷を残した男の一人。俺の情報では五年ほど前にテロ組織『ブラックファング』にスカウトされたと聞いている。これで、相手はほぼテロリストで確定だな。
トレードマークのマンベレを腰にぶら下げている。マンベレはいわゆるアフリカ式投げナイフ。三又に分かれた刃先を持つ重量のあるナイフで、回転させて投げると必ず何処かの刃先が刺さるという凶悪な武器。
「春日井の娘さぁん、怖かったよねぇ。しかしながら恨むのは勘弁だよぉ。」
春日井官房長官の娘を拉致し今回の対テロリスト法案に対しての抗議、もしくは交渉のカードとして使う気だったか。心春が確か同じサークルの友人が春日井官房長官の娘だという話をしていた。
彰が部下の男に命じ椅子に座る小春に被せたズタ袋を取らせる。
彰を見て明らかにびっくりしている心春。彰も心春を見て驚いている。やはり、下卑た教授はこいつか。さて、こいつも拉致失敗に気づいた。もう時間はない一気に行く。
通風孔をぶち破り足を引っ掛けてコウモリのように天井にぶら下がりながら三連射。心春のズタ袋を取った奴の喉、彰の隣にいた男の眉間、彰のこめかみ。
三者三様に叫び声を上げて悶絶する。俺は体を振り、反動をつけて回転をしながら手近にいた男めがけ着地の勢いで右腕をロックし組み伏せると同時に折る。
心春に向かう途中にいた、いまだ状況を把握できていないテロリストの喉に少し指を曲げた状態の突きを入れる。クリーンヒットし、ガハッと言って前のめりに倒れ込む。
無傷の一人が反応し腰のグロック17を抜こうとする。だが遅い、左手で腰のフォークを投擲し肩に突き刺す。
痛みでもがいている男の髪を掴み、思いっきり振り下ろして俺の右膝とキスさせる。俺の膝には常にチタンのプレートが巻いてある為こいつはしばらくは流動食確定だろう。
心春に向かう途中、ズタ袋を持って喉を掻きむしりもがいている奴に組み付き頸動脈を絞めて落とす。
急いで、心春のそばに行きベルトのバックルに仕込んだナイフを取り出してロープと猿ぐつわを外してやり、お姫様抱っこで部屋の端の瓦礫が、うず高くある場所まで連れて行く。
心春は、あまりの展開に声もなく放心している。
「心春! すぐ終わる。ここでじっとしていてくれ。帰ったらサバサンドを食おう」
目に正気のなかった心春の目がカッと見開かれる。えっ?サバサンドか?
「マスター、頑張ってください。そして、サバサンド下さい」
いきなり通常運転に戻った心春に、うんとだけ答えて奴らの動向に注意を払う。まだ、ここにいないテロリストは4人もいる。油断は禁物だ。




