モノクルという美魔女
「亘っち、急発進はあれほどやめてって言ったよね」
Zephyrの後輪部分を手早く外しながらブツブツと説教してくるモノクルこと愛川 愛莉澄。
仕方がなかったとはいえ事実なので素直に謝罪すると、まぁ事情は聞いてるからしょうがないんだけどさと言いながらパーツの交換をしていく。
「こっちはオプションでやっといたげるから机の上の子を装着して待ってて」
机の上にはゴーグルと、手首まで覆うボディアーマー、レギンスにブーツ。まさにフルアーマーと呼べる装備が揃っている。
総重量は7キロ前後、ケプラー素材を中心に要所をセラミックプレートで強化したボディアーマー。それを中心に、全ての装備が連携しており一体感があり接続部の違和感はほぼなく、動きの干渉は最小限。
俺のパフォーマンスをほぼ落とさないで作戦行動ができそうだ。十年前から比べると軽く、動きやすくなっている。
だが基本的な機構は同じようで、俺がオーダーした装備は全て備えている。最先端の制御装置も組み込まれており電子戦に関しても十分対応が出来る。
百点だ。
俺が装備を確認しているとモノクルがパーツの交換をほぼ終えて、オイルに汚れた顔をタオルで拭きながらこちらに近づいてくる。
「ヒュー、似合うじゃん流石Widowmaker」
戦場での一番有名な俺の二つ名。寡婦製造機。多くの兵士を殺め、幾多の未亡人、帰りを待つ人の涙を作り上げた俺が背負うべき十字架。苦笑いしながら答える。
「古い名だ、忘れる気はないが今は亘と呼んでくれ」
はっと口を押さえ、バツの悪そうな顔で謝るモノクル。とても若々しいが、少なくとも俺の五歳以上は年上。始めて会ったときから全く変わらないように見える。
「ごめん、亘っち。つい十二年前、私が小学校に入る前のいにしえの記憶が出ちった」
ケラケラ笑いながらジョークを口にする。
「永遠の十七才は変わってないんだな」
やや呆れて軽口に付き合ってやる。
「とまぁ、冗談はこの辺にして。聞いたよぉ、大佐ってば随分な案件持ってきたよね~
亘っち平気そう?」
ギャル言葉と言うやつで、語尾が上がる独特のイントネーションが妙に似合う外見のモノクル。
「どうやら中型船舶で相手方の増援が来るらしく、俺は単身乗り込んで幹部を確保せよとの依頼だ。だが、この装備なら十分な結果がだせそうだな。いくつか知らない装備もあるが」
モノクルはニヤリと笑い、こっち来てと手招きをする。後について店の奥の階段を降りて地下の広い空間に出る。
様々な武装、銃器や近距離兵装などが並べられた棚、射撃レーン、巨大なサンドバックのあるトレーニングスペースが広がっている。
モノクルは銃三丁とホルスター二つ。フラッシュボム三つと大きめのコインのようなスタンマイン五つ。俺愛用のチタン短杖と同じ形状のバネ筒を持ってくる。
ホルスターを着け二丁の銃を収める。単発式の掌に隠れる程度の小型銃はボディーアーマー右の脇腹にある専用ホルスターに収める。
フラッシュボムとスタンマインもボディーアーマーとブーツにあるポケットに入れていく。
「モノクル、これは?」
バネ筒を手に取るとモノクルはニヤリと笑い、ドイツ語で解放を意味する『Befreiung』と唱える。
バネが伸び短杖になる。チタンニッケル系の形状記憶合金に音声認識を組み合わせたのか。これは面白い、使い道がいくらでも広がる。
その他、Zephyrの自動走行機能やレギンスに搭載された三連砲の使い方などを説明された。これだけの装備をすぐに調達し、俺用に完璧に調整。
やはり、装備に関してはモノクルに頼むのが一番だな。
さて、今回補足されているのは中型タンカーに偽装した武装船舶。多少誤差はあるが百名程度と様々な武器弾薬。
モノクルの装備で武装した俺と百名のテロリストとの船上かくれんぼだ。相手にとって不足はない。




