彼から聞く彼の言葉
早川は空いたグラスをウェイターに渡し、おかわりのワインを受け取った。
そして、また話の続きが始まった。
「彼は少し見ないうちに容姿もそうだけど、話し方も大人っぽくなっていてね、
『悠ちゃんの事はもう諦めました。ずっとこだわっていたけど、あなたの言う通り、今の俺には彼女を幸せになんてできない。それが十分わかったので。
早川さんは悠ちゃんを幸せにできますか?永久的に?』
以前に会った時のような敵対心は無くて、彼は僕に素直に聞いていることが分かったから、
『できるよ。幸せにする。近々、プロポーズするつもりだよ。』
って言ったんだ。悠とは真剣なお付き合いをしていたけど、自分の中で、やはり彼の事がどこか引っ掛かっていたから、実はまだ僕にはプロポーズなんて考えは無かったんだ。
だけど、真っ直ぐな彼に対して、何か言わなければ!!と焦ってね。そう言ったんだ。そしたら彼は笑顔になってね、
『そうですか。そうなんですね。それは良かった。
悠ちゃん、大切に思われているんですね。安心しました。よかったです。』
って悲しそうに笑ってた。最後には彼から、
『俺の大切な人です。ずっとずっと、彼女の事を大切にしてください。宜しくお願いします。』
って、深々と頭を下げられたよ。」
早川は困った表情で私を見た。私は彼から目を逸らすように下を向いた。
「栞くん、留学するって。もう、行ったんじゃないかな…。これから誰も知らないところへ行って、大きくなって帰ってくるって。その時、君に頑張ったねって褒めてもらいたいって。かっこいい自分になってきますって言っていたよ。」
早川は何が言いたいのだろう?
どうしてそんな話するのだろう?
私の胸は栞で一杯になってしまうじゃない。
今日の予定は、そうじゃなかったはず。
だけど、栞に会いたい。
そんな私の顔を見つめる早川は、少し笑って、
「悠。彼の事、まだ好きみたいだね。
困ったな・・・。」
そう言いながら、早川はおもむろに懐から小さな箱を出した。




