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初体験

フローライト第八十三話

夏休みに入って美園は特にやることもなく退屈していた。晴翔からは連絡はくるものの、仕事が忙しいらしくなかなか会えない。ユーチューブも何となくやる気せず、更新は途絶えていた。


暑い夏、美園は部屋で大の字になって寝て「あーヒマ!」と大声を出した。


「ちょっと!そんな暇なら洗濯でもやってよ」と部屋の前を通った咲良に言われる。


「暇じゃない」と美園が横を向いたら咲良がため息をついて通り過ぎて行った。


横を向いた先に利成のスケッチブックがあった。絵画部も何だか乗り気になれず、最近さぼりがちだった。


(そうだ!)と美園は起き上がった。


あいつなら暇では?と朔にラインをした。


<休みは何やるの?ヒマ?>


そうラインしたらまたすぐ既読がついた。やはりヒマなのだと美園は思う。


<絵を描いてる>と返信が来た。


<どんな?>


<色々>


(んー・・・)と美園は考える。朔の絵は部活の時にチラッと見たけど、本当にハチャメチャだった。普段はどんな絵を描くのやら・・・。


<どんな絵か見せて>


<いいけど、どうやって?>


<写真撮ってよ>


少し経って写真が送られてくる。普通な風景画ともう一枚はハチャメチャな方の絵だ。美園は暫しその絵を眺めた。


(私の絵、利成さんの真似だって言ったけど・・・対馬だってそうじゃない?)


<対馬だって利成さんの真似じゃない?>


そう送ったら少し返信が来るまで間が空いた。


(気を悪くしたかな?)


美園がそう思っていると返信が来た。


<マネの部分もあるかも>


意外に素直に認めてきた。


<そうだよね。対馬も利成さんが好きで無意識かもね>


<そうかもね>


<ヒマならうち来ない?>


そう送信したらまたしばらく間が空いた。今度は何なんだろうと美園がイライラしていると返信が来た。


<いいけど、今?>


<うん、今>


<じゃあ、すぐ出るよ>と返信が来る。


<オッケー>と美園は返信した。


 


部屋を出て咲良に「対馬が来るから」と言った。


「え?対馬君?何かあった?」と咲良が驚いている。


「別にないけど?」


「ないけど来るの?」


「そうだよ」


「あんた、彼氏じゃないんでしょ?」


「そうだよ」


「おまけに晴翔君と付き合ってるんだよね?」


「そうだけど?」


「なのに何で他の男子を部屋に呼ぶの?」


「ヒマだから。晴翔さん、忙しくて全然会えないんだもん」


「だからアイドルとなんて付き合ってもダメなんだよ」


「そういう咲良はアイドルと結婚したよね?」


「奏空は特別なんだよ」


「ふうん・・・」と言いながらもその意味は何となくわかる。奏空は他の人とは違う。何がと聞かれても答えるのは難しいが・・・。


「まあ、間違い起こさないでよ」と咲良が言う。


「へいへい」


間違いね・・・咲良の方が大きな”間違い”を犯したのでは?と思ったが、さすがにそこは黙っていた。


朔が到着して部屋にあげると、「すごく涼しいね」と言う。


「まあ、エアコン入ってるからね」


「そうだよね」と朔が部屋の中を見回している。


「ねえ、絵描いてみてくれない?」と美園は言った。朔と話と言ってもあまり思いつかないので、どんな絵なのか目の前でみてやろうと思った。


「いいけど・・・何で?」


「スケッチでいいよ」と美園は自分のスケッチブックと鉛筆を渡した。


「何描けばいいの?」


「何でもいいよ」と美園が言うと「天城さんを描いてもいい?」と言ってきた。


「いいよ」と美園は朔の前に座った。ベッドを背にしたら「ベッドの上に座ってもらってもいい?」という。


美園がベッドの上に座ると、少し離れたところに朔が座った。それからは物凄い集中力で絵を描き始めた。美園が時々足を組み替えると、「あ、変えないで」と言う。


(あーこれはこれでヒマ)と美園は欠伸をした。


「ねえ、少し見せて」と美園は言ってみた。


「・・・ん・・・」と朔が描きながら上の空で答えた。


美園はしびれを切らして朔のそばまで行った。朔が「あっ」と美園を少し咎めるように見たが、構わず美園は「見せて」とスケッチブックを覗き込んだ。


(え・・・上手いな・・・)と美園はその絵を見つめた。


朔が「まだ途中だから」と不服そうに言う。


「ねえ、あんた・・・もっと本格的にやったらどう?」


「本格的?」


「うん・・・でも絵の世界ってどうなんだろうな・・・」と美園は首を傾げた。利成は個展を開くほどの腕前だったけど、これは朔もいい線いくのではと美園は思った。


(今度、利成さんにでも聞こう)と美園は思った。


「本格的ってどうしたらいいの?」と朔が聞いてきた。


「んー・・・私もわからないから、今度利成さんに聞いておくよ」と答えたら、朔が物凄く嬉しそうな笑顔になった。


「ほんとに?」


「うん・・・続きの前に何か飲もうよ。喉が渇いた」と美園は言い「飲み物持って来るね」と部屋を出た。


キッチンに行っても咲良の姿が見えなかった。買い物にでも行ったのかもしれない。冷蔵庫から適当にお茶やらジュースやら飲み物を持って部屋に戻った。


まだスケッチブックに描き続けている朔に「はい」とペットボトルのお茶を渡した。


「ありがと」と朔が鉛筆を置いた。


ごくごくとお茶を飲むと、朔がちらちらとこっちを見てきた。美園は今日も短パンを履いていた。おまけにわざと足を朔の前に投げ出してお茶を飲んで見せた。


「対馬って足フェチ?」と聞いてみた。


「え?足・・・何?」と朔が焦っている。


「足が好きなの?」


「いや・・・」と赤くなって朔が目を伏せた。


(何か・・・純情?なのかな?)


でも感じるエネルギーはギラギラとしている。普通なら見かけに騙されるかもしれないけれど、美園は相手の内面がわかる。朔も普通に性欲があるらしい。


「触りたい?」とこないだのようにまた聞いてみた。すると朔が「うん・・・」と一瞬顔を上げてあからまたうつむいた。


「いいよ」と美園がまた朔の前に足を投げ出すと朔が顔を上げた。それから右手を伸ばしてくる。こないだよりわりと躊躇なく太ももの辺りに触ってきた。


美園はそのまま朔の様子を見つめた。朔の手が太ももを撫で上げてきて、股の間に入ってきた。こないだはそこで止めたが今日はそのまま黙っててみた。


すると朔が前のめりになって興奮したかのように、その手を更に美園の太ももの間に差し込んできた。


(やるじゃん・・・)と美園はまだ黙っててみた。


少しの間、太ももの間を撫でていた朔がその手を完全に美園の股の間に入れた。そこで止めれば良かったのだけど、美園自身好奇心もあってそのまま黙っていた。


するとどうやら本気で興奮してしまったらしい朔が抱きついてきた。


「あ、ちょっと」と美園は朔を押し戻そうとしたが、完全に興奮してしまったらしく強い力だった。


朔の右手が美園の股の間を撫で上げてきて、興奮した朔に美園はその場に押し倒されてしまった。完全に反応している朔の下半身を感じる。


(やば・・・)


遊びが過ぎたと美園は本気で「やめて!」と怒鳴った。大声をだせば怯むだろうと思ったのに、朔はまったく怯まず、美園の短パンの中に手を入れてきた。朔の興奮したエネルギーを感じる。


朔が自分の興奮した下半身を押し付けてきた。どうやら朔は一つのことに夢中になると、なかなか切り替えが聞かないらしい。美園が嫌がってもまったく聞こえてない様子だった。


(まずい・・・)と美園は必死で朔を押し戻そうとした。


こんなんで初体験をするわけにはいかない。


その時、いきなりドアが開いた。


「あ・・・」と声が聞こえた。咲良かと思ったのに奏空だった。


朔が急にハッとして美園から身体を離した。それから自体が飲み込めないかのようにドアを開いた奏空の方を見た。そして急にハッと気がついたかのように朔が「ご、ごめん」と慌てて美園から離れた。美園は起き上がって衣服を直した。


朔が真っ赤になって立ち上がって部屋から出ようとしたのを、ドアの前の奏空が捕まえた。


「対馬君、帰らなくてもいいよ」と奏空が言う。朔は驚いた顔で奏空を見た。


「少し話そうよ」と奏空が笑顔で言う。そして「悪いのは美園でしょ?」とこっちに向かって言った。


 


リビングでアイスコーヒーを奏空が入れてくれて、朔がそれを一口飲んだ。


「さあ、ここはどうしたらいい?」と奏空が美園を見た。


「・・・わかったよ。ごめんなさい」と美園は素直に謝った。奏空に嘘は通用しない。


「うん、そうだよね」と奏空が笑顔で言うのを朔はきょとんとして見ていた。


最近言い方が利成さんに似てきていると、美園は恨めし気に奏空の顔を見た。


「対馬君・・・下の名前何て言うの?」と奏空が聞いている。


「・・・朔です」と朔が答えた。


「そっか、朔君ね、美園はね、こういうちょっと変わった子だから許してあげて」と奏空が言う。


朔はわけがわからないような顔をして奏空を見ていた。


帰り際朔に「これに懲りずまた来てね」と奏空が言うと「はい」と朔もすっかり立ち直って笑顔になっていた。


朔が帰るとポンと奏空が美園の頭を叩いた。


「こら、もう。見つけたのが俺で良かったでしょ?咲良なら大変なことになったよ」


「うん・・・」とそこは同感だった。咲良なら大騒ぎだ。


「男の子からかうのやめなよ。あの年頃はね、セーブできないんだから」


「そうなの?」


「そうだよ」


「奏空もだった?」


「俺も同じ」


「ふうん・・・」


ちょっと面白いと思ったけれど、確かにちょっとヤバかったのでもうやめようと思う。その夜、晴翔からラインが来た。


<またライブツアー始まっちゃうからその前に会おう>


<うん、いつ会えるの?>


<明後日、午後からなら大丈夫>


<うん>


<また俺の家においでよ>


<うん、わかった>


 


久しぶりに晴翔に会えるので嬉しくてしょうがなかった。晴翔のマンションに着くと「いらっしゃい!」と大袈裟に大きな声で晴翔が言ってくれた。


「ほんとごめん。なかなか会えなくて」


「大丈夫だよ。でも一つ聞いていい?」


「いいよ」


「なかなか会えないのも、前の彼女が怒った原因?」


「アハハ・・・そう。その通りだよ」と晴翔が笑った。


「やっぱりそうなんだ」


「うん、だから美園ちゃんも嫌だったら言ってね」


「私は大丈夫だよ」


会えないのはつまらなかったが、別れの原因にはならないなと美園は思った。


こないだと同じように晴翔と話すのは楽しかった。夕食はこっそりと外食した。晴翔がまた変装をしている。


「見つかったことないの?」と美園が聞くと「いや、あるんだよね」と晴翔が周囲に気を使う。


(やれやれ大変だな・・・)と美園は車に乗り込むまで落ち着かない様子の晴翔を見た。


晴翔のマンションに戻ると「あ、まだ時間大丈夫?」と聞かれた。時刻はまだ夜の七時だ。


「全然大丈夫だよ。泊まってもいいくらい」と美園は言った。今は夏休みで退屈極まりなかったのだ。


「アハハ・・そう?泊まる?」と晴翔が言う。


「うん」と美園が答えると「それだと咲良さんに殺されるかも?」と晴翔が笑った。


「咲良に?何か言ってたの?」


「うん、あんまり本気にならせないでって言われたよ」


「私がってこと?」


「そう」


「何それ。最初から本気なのに」


「そうなの?」


「そうだよ」と美園は挑むような目で晴翔を見つめた。子供扱いが一番不快だった。


「じゃあ、ほんとに泊まっちゃう?」と晴翔が美園の座っている隣にきた。


「うん」と真顔で答えるといきなりキスをされた。


「ごめん、何かあんまり可愛いから」と晴翔が笑顔で見つめている。


美園は晴翔を見つめた。ギラギラと言うほどではないが、普通に性欲を持っていてくれてるようだった。見つめていると晴翔がまた口づけてきた。今度はゆっくりと長い。


「美園ちゃんって不思議な子だね」と唇を離すと晴翔が言った。


「不思議?」


「そう・・・」と晴翔が美園の頭を撫でてきた。


「ほんとに泊まる?」と晴翔が言う。


「泊まるってそのままの意味?それとも違う意味?」と美園が聞くと晴翔が笑った。


「やっぱり美園ちゃんは面白いね」


「さっきは不思議って言ったけど」


「いや、そうだった。不思議で面白い。”泊まる”の意味は、美園ちゃんの好きな方でいいよ」


「そうなの?晴翔さんはどっちでもいいんだ?」


「んー・・・だって、美園ちゃんはまだ高校生だし・・・」


「ふうん・・・高校生だとどっちでもよくなるんだ」


「いや、そういう意味じゃないよ?」と晴翔が少し困っている。


「足だけ・・・」と美園は言った。こないだの朔は足だけでも興奮して抑え切れなくなっていたのだ。晴翔はどうなのだろう・・・。


「足?」と晴翔が首を傾げている。


「足だけなら触っても大丈夫」と美園はわざと言ってみた。すると晴翔が爆笑した。


「そんなに可笑しい?」と美園は少し憮然とした。


「いや、ごめん・・・」と晴翔がまだ笑っている。


「だってね、”キスだけ”ならいいとかそういうのは聞いたことあるけど、”足だけ”は初めてだったから」


「そうかな」


「うん、そう」と晴翔がまたキスをしてきた。そしてキスをしながら美園の太ももを触ってくる。


(キスは反則だな・・・)


自分の方が感じてきてしまう・・・と美園は思った。


唇を離した晴翔が両手で美園の太ももをマッサージするように触ってきた。


「どう?気持ちいい?」と朔と違ってまるで余裕の顔だ。美園はつまらなくなった。やっぱり晴翔は朔と違って大人なのだ。


(なーんだ・・・)と思い、やっぱり帰ろうかなと思ったら、晴翔の手が胸の方に移動してきた。


「俺は胸の方が好きだな」と晴翔が言う。


美園はそのまま晴翔の顔を見つめた。さっきまでさらさらと軽かったエネルギーがギラギラとしている。やっぱり晴翔も男なのだ。美園が晴翔の顔をだまって見つめていると「やっぱり違う意味で泊って」と耳元で言ってきた。


こういうところは経験値が高そうな晴翔が上手だ。美園は頬が火照って来るのを感じた。


「でも咲良さんにはちゃんと連絡してね」と晴翔が言った。


咲良にラインをすると電話がいきなり鳴った。けれど美園はそのまま携帯の電源を切った。ここでもめれば晴翔がやっぱり帰った方がいいと言うだろう。ちょうど晴翔がシャワーを使っていたので、電話には気がついてないだろうと、美園は携帯をバッグの中に入れた。


「美園ちゃんもシャワー使っていいよ」とシャワーから出てきた晴翔が言う。


「うん」と美園は浴室に向かった。


(やっと初体験か・・・)とつくづくこないだ朔にやられなくてよかったと思った。初体験が朔であるのと、晴翔であるのとでは大違いだ。


シャワーを浴びてリビングに行くと、晴翔がテレビを見ていた。


「シャワーありがと」と美園が言うと「何か飲みたかったら適当に冷蔵庫から取って」と晴翔が言う。


キッチンで冷蔵庫を開けてみると、ペットボトルのお茶と水、ビールに炭酸が入っていた。


「ビール、飲んでもいい?」と美園はキッチンから聞いた。


「え?」と晴翔が立ち上がってキッチンまできた。


「美園ちゃん、ビール飲むの?」


「うん」


「咲良さんは知ってる?」


「ビール飲むこと?」


「そう」


「知ってるよ」


「そう。じゃあ、いいよ」と晴翔が言う。


美園が晴翔の隣に座ると、「このドラマ見てる?」と聞かれる。美園が見るとそれは奏空が出てるドラマだった。


「見てない」と美園は言った。奏空が出る恋愛ものなどつまらないのだ。


「そうなんだ。奏空の出るドラマは見ないの?」


「見ないよ。つまらないから」


「アハハ・・・そう?」


「うん」


今度始まるライブのツアーの話を晴翔が話し、「明日からまた忙しいな」と呟いた。美園が欠伸をすると「もう、寝ようか?」と晴翔が言った。


「うん」と晴翔と一緒に寝室に行った。寝室も落ち着いた雰囲気で、余計なものが一切なかった。大きめのベッドに晴翔が先に入り「どうぞ」と布団をめくった。


美園がベッドに入ると、晴翔が布団をかけてくれた。


「やっぱり寝る?」と晴翔が聞いてくる。


「やっぱりとは?」


「何もしないってこと」


「晴翔さん、何もしたくないの?」


「そうじゃないよ。美園ちゃんがってこと」


「私?私はして欲しいよ」とはっきり言った。すると晴翔が嬉しそうな表情を作った。


「美園ちゃんて・・・他の女の子と違うね」と晴翔が言う。


「そう?でもよく言われる。はっきりしすぎだって」


「そうなんだ。でも、俺はそういうの好きだよ」と晴翔が口づけてきた。


さっきより深く口づけて来る晴翔。美園は実はキスも初めてだった。


「私、したことないの」と美園が言うと「そうなの?」と晴翔が言う。でも嬉しそうなエネルギーを美園は感じた。


「じゃあ、美園ちゃんにとって俺が初めての男ってわけね」


「うん」


晴翔の手が美園のTシャツをめくりあげてきた。そしてブラの上から胸を触ってくる。ゆっくりだったのが、口づけと共に激しくなっていった。


胸を触りながら晴翔の唇がだんだん移動してくる。美園もだんだん興奮してきてしまった。下着を脱がされて裸にされると、晴翔もパジャマを脱いだ。


「ほんとに大丈夫?」と晴翔に聞かれる。


「大丈夫」と美園が答えると「うん」と晴翔が美園の足を開かせた。


晴翔のが入って来た時、少し痛みが走った。晴翔の動きが早くなってきて美園の胸を揉んでくる。


「美園ちゃん・・・もう、出るけど・・・」と晴翔が動きを少し弱めた。


「ん・・・」と美園は晴翔を見つめた。


「上に出すね」と晴翔がまた動きだした。


最後の瞬間、美園は何となく薄目を開けて晴翔を見てしまった。そして後始末をしている間もじっと見つめていると晴翔が苦笑した。


「そんなに見つめられると、ちょっと恥ずかしいな」


「あ、ごめん」と美園は少し顔を赤らめた。


「でも、これで俺、咲良さんに殺されるの決定だな」と半分本気な口調の晴翔。


「咲良のことは放っておいて」と美園は言った。


「ん・・・」と晴翔が美園の額に口づけた。下着をつけてTシャツを着てもう一度ベッドに横になると「何か俺が初めてって嬉しいな」と晴翔が言った。


「そうなの?」


「うん・・・やっぱ男にしてみればね」と晴翔が微笑む。


「・・・そうなんだ・・・」


「うん・・・」と言ってから晴翔が欠伸をした。


「明日、早いの?」


「ん・・・まあ・・・」


「じゃあ、もう寝よう」と美園が言うと「うん、ありがと」と晴翔が言った。


「おやすみなさい」と美園は目を閉じた。


 


次の日の朝、美園が目を開けると、もう晴翔が着替えを済ませていた。


「おはよう」と晴翔が言う。


「おはよ」と美園が起き上がると「美園ちゃん、悪いけど一人で帰れる?」と晴翔が言った。


「うん、大丈夫」


「ごめんね。鍵したらポストに突っ込んでおいて」と晴翔が言う。


 


「また、おいでね」と晴翔が出かける間際の玄関で言った。


「うん」と美園が答えると、晴翔がキスをしてきた。


「また連絡するね」と言い笑顔で出て行く晴翔を見送り、美園は一人でポツンと広い晴翔の部屋に取り残された。バッグからスマホを取りだして昨日切ってしまった電源をつけた。


その途端、ラインが入って来る。


<知らないからね!>と咲良からだ。


何が知らないのか意味不明・・・と美園は思う。


(だけど最初のセックスが晴翔さんって・・・)


良かったなと美園は嬉しくなった。これから晴翔とはずっと付き合えるのかな・・・と美園は期待してしまう。


でもこの後からはツアーも始まり、また晴翔になかなか会えなくなった。

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