【8話 ダリーの判断】
1日、2話掲載。朝夕6時公開予定。全25話です。楽しんで頂けたら光栄です!
ワンボックスカーの裏に身を潜めていたダリーは、豆田が放った弾丸のダメージから回復しつつあった。
(あの男、グラザと対等に戦っているのか……?)
ダリーは、豆田の力に感心しつつも、グラザが負けることになれば、その八つ当たりは想像を絶する物になると感じた。
(俺がグラザに加勢しても、足を引っ張るだけだ。何か手は?)
粉塵が収まり、ようやく見えるようになってきた視界の中、ダリーは打開策を探し周囲を見渡した。
(ん? アレはエレナ嬢が乗っているコンパクトカーか?)
何故この場に留まっているのかダリーは疑問に思うも、これを好機と捉えた。
「本部。応答してくれ」
『ダリー! 無事だったか!』
「ああ。何とかな。それよりアソコに止まっているコンパクトカーの中にエレナ嬢が乗っているか知りたい。そちらで画像解析してくれないか? 目視では確認出来ない」
『分かった。ダリーがカメラで写した映像を解析する』
「ああ。頼む」ダリーはインカム越しにそう言うと、銃を取り出し、残りの弾丸を数える。
「あと、2発。充分だ」
『ダリー! 待たせた。エレナ嬢は、オレンジ色のコンパクトカーに乗っている。運転席にハンス。後部座席の左後ろがエレナ嬢。そして右側に知らない女が乗っている』
「女? あの男の連れか? 分かった。今からコンパクトカーに回り込みエレナ嬢を拉致する。グラザ様に、その事を伝えてくれ」
『分かった。ダリー。死ぬなよ』
「ああ」
そういうと、ダリーはグラザと対峙する男の死角に入るように気をつけながら、コンパクトカーを目指した。
(よし。エレナ嬢はダリーに任せるか……。ダリーが車に向かうまで、時間を稼げばこちらの勝ちだ。だが、この帽子野郎だけは許さねー。殺す事に変更はなしだ!)
インカム越しに本部からの情報を聞いたグラザは、そう決断すると、再度ワンボックスカーの後部ドアの一部を自慢の握力で再度?ぎ取った。
「おい! 帽子野郎。貴様の程度は分かった。今、降参するなら、楽に殺してやる。まだやるなら惨たらしい死が待っているが、どうする?」
「残念だが、お前程度のこだわりに負ける私ではない」
「では、交渉決裂という事だな……」
『グラザ様。ダリーは無事コンパクトカーの背後に到着しました』
グラザは、ニヤケそうな口元もその巨大な手の平で隠し、緊迫した表情を作り直すと、掴み取った車体の一部から鋼鉄の槍を作り出した。
「帽子野郎! 残念だがコレで終わりだ!!」
「コーヒーシールド!」
コーヒーカップから浮かんだ『こだわりエネルギー』は形状を変え、再度シールドになった。
「ふははは。どこを見ている! 終わりなのは後だ!!」
豆田は慌てて背後を振り返った。そこには、ハンスに銃口を突きつける。ダリーの姿が見えた。
「豆田様。申し訳ありません」
「おい! 動くなよ! エレナ嬢! それに隣の女もだ!!」
ダリーは運転席に座るハンスの側頭部に銃口を付けながら、ドスの利いた声で脅す。
「分かった。そこの男。私が目的なんだろ?」
「ああ。エレナ嬢。そう言う事だ」
「なら、私以外の2人は車から降ろしてくれないか?」
エレナは、ハンス達を庇いそう言った。
「お嬢様!!」
「爺や! こいつらの目的は私だけだ。それに殺される訳ではない。身代金が目的なんだろ?」
「ほう。エレナ嬢は、理解が早いな。そう言う事だ! 2人は車から降りろ!」
シュガーとハンスは、ダリーを刺激しない様に両手を挙げ、それに大人しく従った。
「ダリー! この帽子野郎は、俺様に任せろ! お前は先にエレナ嬢を連れて行け!」
「はっ! かしこまりました!」
ダリーはそう言うと、コンパクトカーの助手席にエレナを移動させ、自身は運転席に乗った。銃口をエレナに向けたままエンジンをかけると、アクセルを強く踏んだ。エレナを乗せた車は一気に加速し、視界から消えた。
「エレナお嬢様!!」
ハンスの悲痛な叫び声がミュンヘンの街中に響いた。
「クハハハ!! 帽子野郎! コレで俺様の勝ちだ。さー! どうする降参するか?」
豆田は深いため息をつくと、コーヒーシールドを球状の液体に戻した。
「豆田まめお……」
シュガーは、豆田の方をまっすぐ見つめた。そして、にっこりと微笑む。
「豆田まめお。一時はどうなるかと思ったけど、計画通りね!」
「シュガー。確かに!」
「ようやく自由に話せるわね! もうこんな事は辞めてよね!」
「ははは。シュガー。すまない。今後はこの遊びはしない」
豆田は、そう言いながら、コーヒーを一口飲んだ。
「? 帽子野郎。貴様置かれている状況が分かっているのか?」
「ああ。すまない。まだお前がいたんだったな。コーヒー銃」
豆田は浮遊する『こだわりエネルギー』をコーヒー銃に変えた。グラザは慌てて鋼鉄の槍を投げようと、投擲動作に入る。
「串刺しになりやがれー!!!!」
鋼鉄の槍がグラザの手の平から離れる寸前、発砲音と共にグラザの手首に強い衝撃が走る。グラザが撃たれたと認識するまでに、もう3発の弾丸がグラザに撃ち込まれた。
グラザは堪らず、槍を地面に落とした。
「貴様! 何をした?!」
「銃を連射しただけだが、分からないのか?」
(?! こいつさっきまでと違うぞ!!)
グラザは背筋が凍り付く感覚を覚えた。しかし、グラザの感情がそれを拒絶する。
「何かの間違いだ! これがこの程度の威力の攻撃に負けるはずがない!」
「ほう。逃げ出さないのか?」
「お前程度に逃げる訳がないだろ!! 俺はグラザ様だぞ!!」
グラザは豆田を強敵と認識すると重心を落とし、ナックルダスターを前方に突き出しファイティングポーズをとる。
(この自慢の拳で、撃ってくる弾丸を全て打ち返してやる!!)
グラザはそう覚悟し、己のナックルダスターに『こだわりエネルギー』を流した。
「豆田まめお。タクシーが迎えに来るまで、あと3分よ」
シュガーはスマートフォンの画面を確認しながらそう言った。
「シュガー。了解した。では、そういう訳だ。急がしてもらう!」
「貴様の攻撃など効かぬと言うのが分からないのかー!!!!」
豆田は咆えるグラザに冷たい視線を送った。その直後、グラザの胸部に衝撃が走った。
(撃たれたのか? 速い!!)
そう思った時には、さらに次の衝撃がグラザを襲っていた。
(くそ! 動かなければやられる!!)
グラザは闇雲に拳を振り回す。時折、ナックルダスターに弾丸が当たるが、コーヒー銃の連射の前に成すすべがない。
(このままではやられる! 一気に距離を詰めて握り潰してやる!)
そう決断したグラザは、歯を食いしばりながら、銃弾の嵐の方に向かって進む。グラザは全身に被弾しながらも、徐々にその距離を詰めていった。
「ここまでくればいける!! 握りつぶしてくれるわ!!」
グラザはその巨大な腕で豆田の身体を掴み。握りつぶそうと力を込めた。
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