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【7話 豆田の洞察力】

1日、2話掲載。朝夕6時公開予定。全25話です。楽しんで頂けたら光栄です!

 ワンボックスカーの陰から1人の男が両手を上げながら現れた。豆田はその迷彩服の男『リーガ』を分析し始める。


(身長168センチ。男。筋肉質。聞き手は右。呼吸数1分あたり30回くらいか。多いな。緊張しているのか、あるいは)

「参った。あんたの勝ちだ。降伏する……。話を聞いてくれ……」

(体重が右に乗っている……。車の方に逃げるつもりだな。降伏する気はないか……)


 豆田はそう判断すると早かった。ほぼ反射的に迷彩服の男『リーガ』の眉間に向かって、コーヒーの弾丸を飛ばしていた。弾丸は男の眉間に直撃し、意識を飛ばした。


「リーガ!! くそ! 敵は怪物か?! もう一気に行くしかない! ダリー。頼んだぞ!!」

「ああ。任せろ!」


 ダリーは自信などなかったがそう言うしかなかった。迷彩服の男達はワンボックスカーの前と後ろ、そして屋根越しから、豆田を狙い銃の引き金を引く。が、その行動を予見していた豆田の的確な射撃に1人また1人と簡単に撃ち抜かれ、倒れていく。


 倒れる同僚を見つめながらダリーは、冷静になっていく自分を感じた。


(やはり奴に撃たれても死にはしないようだ。ここから逃亡して、グラザに握り殺されるよりはマシか……)


 そう思考したダリーは、覚悟を決めた。


(この威力が上げた弾丸で、街路樹を打ち抜き、奴に向かって倒す。上手くいけば、奴が能力を使う映像くらいは撮れるはずだ。それでグラザも納得するはずだ)


「ダリー! デール! 後はお前らだけだぞ!! 死んででも奴の映像をよこせ!」

(偉そうに言いやがって!)ダリーとデールは内心そう思ったが口には出せない。


デールはダリーにアイコンタクトを送ると、ワンボックスカーの陰から前方に飛び出した。豆田の銃口はその動きを追随し、引金を引く。デールの側頭部に弾丸が命中しその意識を飛ばす。


「デール! カタキは撃つ! くらえ!!」


 ワンボックスカーの陰から銃口だけを出したダリーは、街路樹に向かって弾丸を走らせた。

 ダリーの能力によって威力の上がった弾丸は『ゴボリ!』と街路樹の幹をえぐった。


 2階を超える高さの広葉樹が豆田に向かって倒れる。


「ほう。威力をあげた弾丸か? 『こだわリスト』だな……」


 豆田は自身の頭上向かって倒れる広葉樹から、後ろに跳躍し距離を取る。


「この瞬間だ!! くらえ!!」


 ダリーは車の陰から勢い良く飛び出し、跳躍中の豆田に照準を合わせ、すぐさま弾丸を走らせた。豆田は自身に向けられた殺気に素早く反応する。


「コーヒーシールド!」


 コーヒー銃は球状の液体に変わる。その球体は高速に回転しつつ、プレート状に引き伸ばされ、シールドになった。中心部から時計回りに渦を巻いたコーヒーシールドは、黒いガラスのように見える。豆田は出来上がったコーヒーシールドをすぐに殺気の方に向ける。


『ビシン!!』ダリーの放った弾丸はコーヒーシールドに触れると、その回転によって弾かれ、車道を削った。その映像がグラザのゴーグル上にリアルタイムで映し出される。


「ダリー!! よくやった! ヤツは液体を使うみたいだ! 良し! 連携して奴を叩くぞ!」

「……」

「おい! ダリー! 撃たれたのか?!」


 弾丸をシールドで弾いた直後、豆田はすぐさまコーヒー銃を作り出し、殺気を放ったダリーに向かって弾丸を撃ち込んでいた。弾丸はダリーのアゴの3センチ下の甲状軟骨に命中。ダリーは痛みでうずくまる。


(くそ……。喉を撃たれた……。声は出せないが、まだ、動ける。やはりこの弾の殺傷能力は高くないようだ)

 グラザはゴーグルに映るダリー視界がわずかに動いていることに気付いた。


(ダリーは生きている。しかも気絶もしていない……。つまりあの男の銃の威力は大したことはない。俺様の敵ではないな)


 そう判断したグラザは悪い笑顔を見せると、その拳に力を込め、後部ドアをぶん殴った。


『バコン!!』と、大きな音を鳴らし、ドアが後方に吹っ飛ぶ。その様子を見ながら豆田は大きな溜息を一度ついた。


「やれやれ、まだ『こだわリスト』が残っていたか……」


 豆田は中折れ帽子を被り直し、コーヒー銃をワンボックスカーに向かって構えた。


「お前は、なにもんだ?!」


 後部ドアからのっそりと現れたグラザは、勝ちを確信しているのか。余裕の表情を浮かべている。


「私は私立探偵だ。エレナから依頼を受けている」

「探偵だと? 探偵風情が俺様の邪魔をするのか?!」

「まー。そう言う事だな。報酬が良いもんでな」

「どんな報酬か知らんが、それで命を捨てることになるとは、バカな奴だ」


 そう言うとグラザは、ワンボックスカーの車体の一部をその巨大な手で?ぎ取った。車体は柔らかい紙粘土で出来ていたのかと思うほど簡単にちぎられた。


(凄い握力だな。あの巨大な腕。見覚えがある。シュルツ財団の宝物庫を狙ったうちの1人か……。筋肉の『こだわリスト』っと、言ったところだな……)


 グラザははぎ取った車体の一部をその凄まじい力で握り締めた。つかみ取られた車体の一部は、見る見るうちに形を変え、歪な形の鋼鉄の槍が出来上がった。その出来にグラザはニヤリと笑うと、すぐに投擲の動作に入った。


「槍投げか? ほう。これは予想外だ……」

「さー! 死に晒せ!!!!」


 全身の筋肉をバネのように使いグラザは、鋼鉄の槍を投げきった。空を切る音と共に、槍が豆田に迫る。


「これは、銃では無理だな……。なら、コーヒーシールド!」


 コーヒー銃は形状を変え、瞬時にシールドになった。グラザはそのシールドを見て失笑する。


「その薄いシールドは、もう見た! 無意味だ!!」


 出来上がったばかりのコーヒーシールドを豆田は前方に向ける。直後、シールドに鋼鉄の槍が直撃した。


『ビシビシ!』


 コーヒーシールドにヒビが入る。砕け散りそうなシールドを豆田は球体に戻した。シールドが消え勢いを取り戻した鋼鉄の槍は、豆田の頬の真横を通り過ぎる。豆田は身体を捻りそれを紙一重で躱した。


 鋼鉄の槍は車道に刺ささると、爆音と共にけたたましい量の粉塵をあげた。視界が霞む。


(あのシールドで、軌道をわずかにずらしたのか)


 グラザがそう分析した瞬間、煙の中からグラザに向かって弾丸が飛ぶ。


「な?! 反撃?!」


 豆田が煙の中から放った弾丸はグラザの眉間に命中する。が、グラザの頭部をのけぞらしただけで、大したダメージになっていない。


「フハハ。やはり軽いな! ビビらせやがって! この程度の攻撃など、痛くもないわ!」

「実弾なら、すでに死んでいたがな……」


 豆田は分かりやすくグラザを挑発する。グラザの瞳に怒りが宿った。


「俺様を侮辱するな!! 貴様はぐちゃぐちゃに握りつぶして殺してやる!!!!」


 そのグラザの叫び声が、粉塵の収まった街に響いた。



ご覧いただきありがとうございます!


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