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【6話 豆田VS迷彩服の男達】

1日、2話掲載。朝夕6時公開予定。全25話です。楽しんで頂けたら光栄です!

 シュルツ財団の化学部門の責任者ワーグナーに才能を認められ、私兵団に雇用されたダリーは、この仕事に誇りを持っていた。入団してからの5年間、シュルツ財団の為にと思い、その身を粉にして働いてきた。ワーグナー自身には【きな臭さ】を感じていたが、行う仕事は真っ当なものであった。


 そう。3か月前に行われた総会で化学部門の予算が打ち切られるまでは……。


(くそ。早めに辞めておくべきだった……。誘拐の実行犯か……。捕まったら懲役。逃げ出したらワーグナーに殺される……)


 ダリーは選択肢のない今の状況に後悔しながら、黙々とアサルトライフルの手入れをしていた。


「イフト!! ハンスの位置情報は、どうなっている?!」

「はっ! 現在、中央通りを越え、アトラス通りに差し掛かるところです。え? 凄い速さでこちらに向かってきています!」

「ほう。今までとは違う動きだ。GPS発信機の故障が直ったのか? その位置情報が正しいのなら、車を使っているはずだ! しかし、運が悪い。わざわざこちらに向かってくるとは」

「接触まで、あと2分です!」

「よし! お前ら、戦闘準備だ。エレナ嬢は殺すなよ。イフトとムツリを気絶させた協力者が1人はいるはずだ。そいつは殺せ!!」 

「グラザ様。GPS発信機が取り付けられているのはハンス様です。もしかすると、GPS発信機に気付かれて、ハンス様が単独で行動されている可能性もあります」

「だったら、ハンスを半殺しにして、エレナの居場所を吐かせるまでだ」

「……。了解しました」


 ダリーは考える事をやめた。【任務をこなすしかない】そう自分自身に言い聞かせた。


「ターゲット接触まで後、30秒……。15秒……」


 前方にこちらに向かって爆走するオレンジ色のコンパクトカーの姿が見えた。


「ん? あのオレンジの車か? ダリー。銃の『こだわリスト』のお前の出番だ。あの車を停止させろ!!」

「はっ!」ダリーは車体から身を乗り出し、アサルトライフルを構えスコープを覗いた。


「よし。そのまま真っ直ぐやって来い」


 唇を軽くかんだダリーは、アサルトライフルに『こだわりエネルギー』の流し弾丸の威力をあげた。集中力を高め、引金に指をかけ、その時を待つ。


***


激走するオレンジ色のコンパクトカーに揺られながら、シュガーはノートパソコンのモニターをチェックした。


「アトラス通り入ったわ。豆田まめおの読み通り、もうすぐ追手の車両と接触の予定よ」

「シュガー。周辺の状況は?」

「前方から迫ってくる2台の車両以外の車はないわ」

「よし。計画通りだな」


 ノートパソコンを閉じたシュガーは、無言のまま小さく頷いた。


「爺さん。いいか? 私の言うタイミングに合わせて急旋回だ」

「豆田様。了解致しました」


 助手席の窓枠に足をかけ身を乗り出した豆田は、鋭い眼光で前方を見据えながらコーヒーを一口飲んだ。


「よし。見えてきたぞ! シュガー。あの黒いワンボックスカーだな?」

「豆田まめお。間違いないわ!」

「了解。爺さん。カウントだ。5.4.3.2.1。今だ!!」


『ギキキィィィィ!!』


 ハンスは目一杯ハンドルを回した。車体は大きく傾き、強力な遠心力が身を乗り出す豆田にかかる。豆田はその力を利用し、ワンボックスカーに向かって跳躍した。


***


 オレンジ色のコンパクトカーが急旋回したのは、ダリーがアサルトライフルの弾丸を走らせたタイミングだった。


「な?! 避けただと?! こちらの狙撃に気付いたのか?!」


 ダリーは慌てて次弾を撃ち込もうと、再度スコープを覗いた。が、その視界はこちらに向かって、跳躍する豆田の姿でいっぱいだった。


(な?! 人?! 協力者か?)


 困惑しながらもダリーは、その飛来する人影に向かって、照準を合わせる。


「遅い!! コーヒー銃!!」


 跳躍中の豆田がそう叫ぶと、コーヒーカップから浮かび上がった『こだわりエネルギー』は球体となり、すぐに大小の塊に分裂した。大きな塊は瞬時に銃に形状を変え、豆田の右手に収まった。無数の小さな塊は弾丸に変わり、出来上がったコーヒー銃に自動的に装填された。


 この間、僅か0.2秒にも満たない。


 豆田は、黒光りするコーヒー銃の引き金を構えると素早く引金を引いた。

 ダリーに向かって一直線に飛んだ弾丸は、アサルトライフルに直撃し、それを空中に飛ばした。ダリーの視界がそれに釣られる。


 その間にワンボックスカーの屋根に音もなく着地した豆田は、すぐに銃口を後方に走る2台目のワンボックスカーに向ける。


「とりあえず、消えとけ!」


 豆田が放った弾丸は、後方を追随していた車両の前輪を打ち抜いた。激しいブレーキ音と共にバランスを崩した追随車は、横転し煙をあげた。


「後続車がやられた? 敵は上にいるのか? お前ら! 屋根を撃て!!」

「「「はっ!!」」」


 迷彩服の男達は、豆田のいる屋根に向かって発砲する。それを予見していた豆田は、ワンボックスカーから飛び降りつつ、再度銃弾を走らせた。銃弾は後輪を打ち抜き、タイヤをバーストさせた。車体は大きく蛇行したあと停止した。


「くそが!! エレナ嬢の協力者か?! 舐めやがって!! お前らやれ!」

「「「はっ!!」」」


 グラザの怒声に反応し、イフトとムツリはドアを開き、車外に勢いよく飛び出した。が、その場所に崩れ落ちた。豆田の視界に入った2人は、銃を構える間もなくコーヒー銃に撃たれていた。


「な?! 2人がやられただと?! 協力者は『こだわリスト』か?!」

「グラザ様。銃を所持しているのは見ました」

「ダリー!! それは誰が見ても分かるだろが!! 何の『こだわリスト』かが問題だ! 考えなしに車外に出ればやられるぞ!」


 迷彩服の男達は、沈黙しグラザの判断を待つ。


「隠れていないで、車から出てきたらどうだ?」


 豆田は停止するワンボックスカーに銃口を向ける。


「くそ! 不意をついただけのクセに偉そうな野郎だ! おい! お前らヤツに向かって突撃しろ! そうすれば何の『こだわリスト』か分かるはずだ」

「いや、あのー」

「なんだ? 俺様に殺されるか?」

「ひぃ! すいません。やります!」

「よし! おい! 本部!」


 グラザはインカムを使い、本部に残る部下に連絡した。


『はい。本部です』

「状況は見ているな?」

『はい。しかし、現状は把握しておりますが、敵の攻撃の様子は確認できていません。車体に積まれたカメラにどう言う訳か映っておりません』

「ん? たまたまカメラの視界から外れたのか?」

『分かりません』

「分かった。これから5名を突撃させる。各自のゴーグルに取り付けられたカメラの映像を俺のゴーグル内に映せるか?」

『はい。可能です。では、5名分の動画をリアルタイムで表示します』

「よし……。これか?」

『確認出来ましたか?』

「ああ。大丈夫だ」グラザはニヤリと笑った。


「よし! お前ら! 準備は出来た。突撃しろ!!」

「「「はっ!!」」」


 ダリーを含めた5名の迷彩服の男達は覚悟を決めた。イフトとムツリが飛び出たドアの反対側から車外に出ると、車体を背に突撃するタイミングを見計らう。


「やれやれ、車外に出たか。こちらとしては、諦めてくれると話が早くて良いが……。そういう訳にはいかないか」


 豆田は深い溜息をつくと、念のためにワンボックスカーの前輪も打ち抜いた。


「ダリー。俺たちが隙を作る。『こだわリスト』のお前が活路を見出してくれ」


 ワンボックスカーの裏に隠れる男は、ダリーにだけ聞こえる小声でそう言った。


「いや、しかし……」

「ダリー。見てみろ。イフトとムツリはうずくまっているが生きている。グラザ様より、敵に向かう方が安全だ」

「分かった……」


 ダリーは、懐から拳銃を取り出すと『こだわりエネルギー』をその内部に流す。ダリーの能力は弾丸の威力をあげるだけの簡単なものであったが、それでも無いよりは余ほど良い。『こだわりエネルギー』を流し終えたダリーは、4人の顔を見た。


「よし。俺が降伏するフリをする……。その隙を付いてくれ」


 迷彩服の男の1人『リーガ』は、そう言うと両手を上げて、ワンボックスカーの陰から、ゆっくりと歩み出た。ワンボックスカーの陰に隠れる男達は銃を握り締め、呼吸を殺した。



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