表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

【16話 ダリーの決断】

1日、2話掲載。朝夕6時公開予定。全25話です。楽しんで頂けたら光栄です!

「エレナ嬢。俺が今からメガロの隙を作る。その間に、あんたはあのエレベーターから逃げろ」

「皆を置いて行けないわ!」

「エレナ嬢。誘拐した俺が言うのも何だが、あんたさえ逃げ切れれば、ここに助けにきた警察達も最悪逃げる事が出来る」

「私が逃げられれば皆が助かる可能性があるってこと?」

「そう言う事だ」


 エレナは渋々納得したような表情を見せたあと、何かを思い出したようだ。


「じゃー。あのエレベーターの認証セキュリティはどうしたら良い?」

「ああ、アレか。素早く出撃する時の為に、エレベーターを降りる時は必要ないようになっている」

「分かったわ。じゃー。私は、ここから外に出る事を目指すわ。あなたも死なないでね……」

「……。ああ……」


 ダリーは、そう言ったがメガロ相手にそれは難しいと感じていた。

 先程まで自身の保身だけを考えていたダリーだが、エレナと接することで芽生えた正義感に心地よさを感じていた。


「じゃー。エレナ嬢。メガロの死角から回ってエレベーターに向かってくれ」


 覚悟を決めたエレナは、小さく頷くと、身を低くしながら、エレベーターホールに向かった。


(さてと、ひと芝居うつか……)


 懐から拳銃を取り出したダリーは、リボルバーを回し、その残りの弾数を確認した。


(1発か……。これは死にに行くようなもんだな……)


 唇をかんだダリーは大きく息を吸いこむと、通路から飛び出し、メガロの元に向かって走った。


「メガロ様! ご無事でしたか?!」

「ダリーか。良いところに来た。その銃でそこの刑事を撃て」

「メガロ様。侵入者ですか……」

「ああ。早くしろ!!」


 打開策を探していたクライス刑事は、ダリーの登場ですべてを諦めてしまったようだ。虚ろな視線でメガロの方を見ていた。ダリーは銃口を静かにメガロに向けた。

 

「……。ダリー。どう言うつもりだ……」

「メガロ様。すみませんね。裏切ることにしました」


 その言葉を聞いたクライス刑事の顔に一気に生気が戻った。床に置いた銃を素早く掴み銃口をメガロに向け、その引き金を引いた。


 その動きに気付いたメガロは、身体を捻り弾丸を躱すと、後方に跳躍した。


「ダリー!! 貴様。いい度胸だ!」

「メガロ! あんたを殺してここから出る!」

「ん? あー。そう言う事か……。何かミスをして、ワーグナーに殺されることになり脱走した。と言った感じか?」

「……」


 沈黙を答えとしたダリーは、メガロに向けた拳銃に『こだわりエネルギー』を流し、その弾丸の威力を上げた。


 クライス刑事は、この一瞬の間にハンスの元に駆け寄り、その肩を揺らした。


「ハンスさん。動けるか?」

「……。私は執事失格です……。エレナお嬢様を危険にさらしてしまいました」

「そんな反省会は後でやってくれ! エレナさんを救出しに来たのだろ?」

「……。そうでした……」


 ネクタイをキュッと絞めたハンスは、クライス刑事の肩を借り、刺された足をかばいながら立ち上がった。


「クライス刑事。ありがとうございます。エレナお嬢様を助けに向かわなければ」

「その意気だ」


 ネクタイに『こだわりエネルギー』を流したハンスは、その先端でサーベルを持つと、剣先を前方に向け構えた。

 額の汗を拭ったクライス刑事は、超高分子量ポリエチレンの製の盾を前方につきだしつつ、拳銃を構えた。


 ダリーの構える銃にも狙われ、3人と対峙することになったメガロだが、その顔には笑みがこぼれていた。


「フハハハハハ。久しぶりの緊張感だ。生きている感じがして実にいい!!」

「メガロ。流石のあんたでもこの3体1では、分が悪いだろ? 諦めたらどうだ?」


 ダリーはエレナがエレベーターに辿り着く時間を稼ぐために、メガロを挑発する。

 エレナは受付カウンターの裏から回り込み、後少しでエレベーターホールというところまで来ていた。


「ダリー。貴様、勘違いしていないか?」

「何? 何のことだ?」

「フハハハ。俺は『こだわリスト』だぞ? 俺はまだ何も能力を使っていない……」

「その変装が能力ではないのか?」

「これは、ワーグナー博士の作品だ。まー。俺の能力とは相性がいいが……」

(しまった!!)


 ダリーは、『メガロが何かをする前に動かないと』と、慌てて引き金を引いた。『こだわりエネルギー』を帯びた弾丸がメガロに向かって飛ぶ。メガロはそれを簡単に躱すと、ネックレスに手をやり、一番左にあるボタンを押した。


 ネックレスから、顔面に向かい薄い膜が飛び出る。膜はメガロの顔面を包むと瞬時に硬化していく。メガロの顔面は、ピエロのような不気味なマスクに覆われた。


「いやー。実にいい……。エネルギーが満ちてくるのを感じます。このマスクを付けた時、快楽殺人の『こだわリスト』の能力が開花するのです……」


 そう言ったメガロは、ダリーの視界からフワリと消えた。


「ぐはっ!!」


 ダリーの鳩尾に、メガロの拳がめり込んだ。ピエロのマスクをつけたメガロの身体能力は、飛躍的にあがっているようだ。くの字になったダリーの腹部に次の打撃がめり込む。


 メガロが放った打撃の連続でダリーの身体は、宙に浮く。

 エレナは叫び出したい気持ちを堪え、このダリーが作ってくれた時間を無駄にしない為に走り出した。


(私がここから逃げださないと! 皆も!)


 エレベーター前に辿り着いたエレナは、すぐにボタンを押した。『カチ……』小さな機械音が鳴り、エレベーターが動き出した。


「カチッ? だと?」


 ダリーの意識を奪ったメガロは、そのわずかな音に反応し、視界をエレベーターの方に向けた。


「なんだ? エレナがいるだと? エレベーターから逃げ出す気か? 逃がすはずがないだろ!!」

「お嬢様!!!!」


 メガロの言葉でエレナの存在に気付いたハンスは、今も出血が続く大腿に力を込めた。


(私の足などどうなってもいい!! エレナお嬢様を!!)


 歯を食いしばりながら跳躍したハンスはエレベーター前に着地した。


「エレナお嬢様! ご無事で!」

「爺や!」

「お嬢様。エレベーターが到着しましたら、すぐにここから逃げて下さい。わたくし、命に代えてでも、この場を死守いたします」

「爺や! あなたも逃げて!」

「いえ、わたくしが不甲斐ないばかりにお嬢様を危険にさらしました。けじめは取ります!」


 命をかける覚悟をしたハンスはネクタイにありったけの『こだわりエネルギー』を流した。



ご覧いただきありがとうございます!


「面白い!」「続き読みたい!」と、思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ