セレフィナ、召喚される⑦
セレフィナは、リュカのまっすぐな視線にちらりと目を向け、わずかに口角を上げる。
「我が教えたわけじゃない。ただ、こいつが少し賢かっただけだ。」
ゼルナは鼻を鳴らすように笑った。
「ふん、なるほど。…だがセレフィナ、お前が人間の王の前に姿を見せるとはな。そういうのは、お前の柄じゃなかったはずだ。」
「我には任務がある。この国と、その民を守る契約だ。」
「契約…ね。」
ゼルナは興味深げにセレフィナを見つめ、そして再び王へと視線を戻した。
「さて、カリス王。話は戻るが――お前たちは“魔王討伐”を名目に何をしようとしていた?」
カリス王は一瞬言葉を詰まらせたのち、口を開いた。
「……人類は弱い。魔族の力には抗えない。だからこそ、勇者を召喚するしかなかった。我々は、ただ生き残るために――」
「そのために、勇者を洗脳し、都合の良い道具として利用しようとしたのか?」
セレフィナの低い声が王を鋭く刺す。王は視線を伏せたまま、何も言えなかった。
そんな王の姿を見て、エリスが強い語調で言った。
「王様……あなたは本当に、私たちの力を人のために使おうとしていたんですか? それとも、もっと別の思惑があったんですか?」
沈黙の中、玉座の間の空気が重く沈んでいく。
――だが、その空気を破ったのは、ゼルナの落ち着いた声だった。
「この場で全てを裁くつもりはない。だが、我がここに現れたことで、少なくとも“魔王は敵”という神話が幻想に過ぎなかったと証明された。」
彼はひとつ息をついてから続けた。
「それでも戦いたいというなら、相応の覚悟を持ってかかってくるがいい。」
その威圧的な言葉に、衛兵たちは一歩も動けずに立ち尽くす。
だが――セレフィナはゼルナの隣に立ち、静かに言った。
「我はこの国にしばらく滞在する。カリス王、人間の未来を守りたいと本気で思うなら、真実を口にする時だ。勇者を“使う”のではなく、彼らと共に歩む覚悟があるのか――」
王の喉がごくりと鳴る音が、広い玉座の間に小さく響いた。
セレフィナとゼルナ、そして勇者たち。
新たな均衡の時代が、ここから始まろうとしていた。




