セレフィナ、召喚される⑤
広々とした王宮の玉座の間。
厳粛な空気の中、リュカ、エリス、そしてセレフィナは導かれるままに赤い絨毯を歩いていた。周囲には重厚な鎧をまとった衛兵たちが整列し、幾重にも警戒が張り巡らされている。
正面に座る国王、アルマリア聖王国の第十七代国王、カリス=アルマリアは、豪奢なローブに身を包み、穏やかな微笑みを浮かべて三人を迎えた。
カリス王:「おぉ、新たなる勇者たちよ。我が国にご到着いただき、心より感謝申し上げる。」
彼はゆっくりと立ち上がり、玉座を下りて三人のもとへ歩み寄る。
その優雅な立ち振る舞いに、リュカは感動した様子で一歩前に出る。
リュカ:「初めまして、リュカと申します。このような機会をいただけて光栄です!」
一方、エリスはわずかに警戒を浮かべながら黙ったまま頭を下げた。
セレフィナは無表情でその様子を眺め、何も言わない。
カリス王はセレフィナの沈黙に目を留めるが、気にする素振りを見せず、続けた。
カリス王:「ここアルマリア聖王国は、近年、魔族の侵攻に苦しめられている。そして、遂に我らの力だけでは防ぎきれぬ時が訪れたのだ。ゆえに、神々の導きに従い、勇者を召喚する儀式を執り行った次第である。」
その言葉に、リュカは感銘を受けたように頷く。
リュカ:「なるほど……僕たちが呼ばれたのは、そんな理由があったからなんですね。」
しかし、エリスの眉が僅かに動き、セレフィナも冷ややかな視線をカリス王に向けた。
セレフィナ:「それが理由なら、最初から“洗脳”なんて仕掛ける必要はないだろう。」
その一言に、玉座の間の空気が一瞬凍り付く。衛兵たちが動揺して身じろぎし、側近たちが互いに顔を見合わせる。
カリス王は微笑みを崩さず、静かにセレフィナを見つめた。
カリス王:「……洗脳、とは何のことかね?」
セレフィナ:「とぼけるのはやめてくれ。その魔法を解いたのは我だ。お前たちが何を企んでいようと、興味はないが――勇者たちを操ろうとするのは最低の手だな。」
エリス:「それ、本当なの……?」
セレフィナの言葉にエリスは目を見開き、カリス王とセレフィナの間を交互に見つめた。
カリス王は一瞬だけ言葉に詰まったが、次の瞬間には穏やかな声で弁解を始めた。
カリス王:「セレフィナ殿、貴殿の言葉には誤解があるようだ。我々は決して操るつもりなど……あれは勇者としての力を引き出すための一時的な補助であり、害するものではない。」
セレフィナは鼻で笑う。
セレフィナ:「言い訳も大したものだな。でも、我には通用しないぞ。」
その冷淡な言葉に、カリス王の笑みが微かに揺らいだ。
沈黙が漂う中、エリスはセレフィナに向き直り、強い口調で言った。
エリス:「……私たちが何も知らされずにここへ呼ばれたのは事実。でも、あなたが言う通り、何か裏があるのなら、それを確かめる必要がある。」
リュカが驚いた様子でエリスに声をかける。
リュカ:「エリス、そんなこと言ったら……!」
エリス:「リュカ、私はお飾りの“勇者”になるつもりはないわ。それに、セレフィナの言ってることが正しいなら、放っておくわけにはいかない。」
セレフィナはエリスの言葉に微かな笑みを浮かべた。
セレフィナ:「いい判断だ。まぁ、私の興味はお前たちがどう動くかだが……。」




