セレフィナ、召喚される④
解呪されたエリスは肩で息をしながらセレフィナを見上げた。
まだ状況を完全には理解していないものの、セレフィナの助けには気づいているようだった。
「……あなた、今の……私を助けてくれたの?」
「助けるつもりでやったわけじゃない。面倒な魔法がかけられてただけだから、片付けただけだ。」
そう言いつつも、セレフィナはエリスの体調を気にして距離を詰めた。
リュカが心配そうに近寄り、エリスに声をかける。
「大丈夫か?俺も同じようなことをされて、彼女に助けられたんだ。」
エリスは少し眉をひそめたが、リュカの言葉を疑う様子はなかった。
「……助けられたのは事実みたいね。でも、こんな場所にいきなり呼び出されて、“魔王を倒せ”なんて言われても……。意味がわからない。」
「お前の反応はまともだな。こっちの少年は最初、流され気味だったから心配したが。」
セレフィナはリュカをからかうように笑った。
リュカは少し赤くなりながら反論する。
「最初は仕方ないだろ!いきなりあんなこと言われたら、普通は戸惑うって!」
「……それで、ここは何なの?この国は一体何を企んでいるの?」
エリスの鋭い視線に、セレフィナは内心感心しつつ、冷静に答えた。
「それを知るために、しばらく様子を見るつもりだ。お前たちも勝手に動かず、まずはこの国の連中の話をよく聞くことだな。」
三人がやり取りをしている間、神官長は慌てて周囲の神官たちに指示を出し、儀式の混乱を隠すために動き回っていた。そしてようやく三人の元に戻り、低姿勢で頭を下げる。
「セレフィナ様、そして勇者リュカ様、エリス様。先ほどの不手際、誠に申し訳ございません。お二人には改めて国王陛下にご面会いただき、聖王国の使命をお伝えしたく存じます。」
セレフィナはその態度の変化を冷たく観察した。
「使命だって?ずいぶんと都合のいい言葉を使うな。その前に、さっきの魔法について説明する気はないのか?」
「そ、それは……召喚陣の副作用でございまして……決して、意図的なものでは……!」
神官長の視線が泳ぐのを見て、セレフィナは小さく鼻を鳴らした。
「言い訳はもういい。私たちを国王に会わせるなら、さっさと案内しろ。ただし――余計なことを企んだら、次は容赦しない。」
神官長は青ざめながらも、頭を下げて従った。
王宮へ向かう途中、エリスはセレフィナの隣を歩きながら問いかけた。
「ねぇ、あんたは一体何者なの?どうしてこんなに冷静で……あの魔法まであっさり解除できるの?」
「ただの旅の魔術師だよ。お前たちみたいに使命を押し付けられるのはごめんだからな。」
軽く答えるが、その言葉の裏にある含みをエリスは感じ取った。
リュカも口を挟む。
「でも、助けてくれたのは事実だし……セレフィナさんがいなかったら、俺はどうなってたか……。」
その言葉に、セレフィナはほんの少し表情を柔らかくした。
「礼を言われるほどのことじゃない。お前たちはまだ何も知らないんだからな。」
「“何も知らない”……?」
エリスはその言葉に引っかかりを覚えたが、セレフィナがそれ以上言う気がないと察し、黙った。




