本当の自分
異次元の扉の前――
手に握る魔法剣が淡く光り、静寂を破るように扉が開いた。セレフィナは軽く息をつきながら歩み出る。扉の向こうには、待ち続けた仲間たち――リリィとグレンの姿があった。
「セレフィナ様!」
リリィが駆け寄り、安堵の笑みを浮かべる。
「無事だったんですね!もう、どれだけ心配したか!」
グレンも静かに頷きつつ、警戒を解いた様子だ。
セレフィナは魔法剣を軽く掲げ、得意げに笑った。
「ただいま。これ、亜神の遺産よ。遅れたけど、無事持ち帰ったわ。」
リリィの瞳が輝く。
「すごい……!これなら、次はどんな冒険だって――」
「……その前に、話しておきたいことがあるの。」
セレフィナの真剣な声に、リリィとグレンは顔を見合わせた。
「何か……問題でも?」 グレンが慎重に尋ねる。
セレフィナは少し息をついてから静かに口を開いた。
「私、ね――人間じゃないの。」
「――え?」
リリィの目が見開かれ、グレンの眉が険しくなる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」 リリィが慌てて声を上げる。「え?それって……どういう……冗談ですよね?」
「冗談ならどんなに楽かしらね。」セレフィナは苦笑した。「私は“魔族”……もっと正確には“元・魔王”ってところかしら。」
沈黙が場を支配する。
「……信じられません。」 グレンが低い声で呟く。「なら、なぜ私たちと……?」
「その質問、来ると思ったわ。」セレフィナは腕を組み、目を伏せた。「最初は……ただの気まぐれだった。でも、気付いたら……君たちのことが大切になってた。」
リリィは少し震えた声で問いかけた。
「……私たちを騙すつもりはなかったんですか?」
「騙す?そんなつもりはなかったわ。ただ、言うタイミングをずっと迷ってただけ。」
一瞬の沈黙の後、グレンが小さく息を吐いた。
「……それで、今言った理由は?」
セレフィナは真っ直ぐ二人を見つめた。
「これからもっと危険な戦いがある。私が何者か知らずに、背中を預けるのは不安でしょう?」
リリィの瞳にかすかに涙が浮かぶ。
「そんなの……ずるいです!」
セレフィナは驚き、言葉を失った。
「ずるい……?」
リリィは力強く続けた。
「そんな大事なこと、もっと早く言ってくれればいいのに!ずっと心配させて……でも、それでもセレフィナ様はセレフィナ様です!」
グレンも腕を組みながら小さく笑った。
「人間だろうと、魔族だろうと、仲間に変わりない。」
セレフィナは一瞬、感情が胸にこみ上げたが、それを押し殺して不敵に笑う。
「ふっ……信じるの、早すぎじゃない?」
リリィは微笑んで涙を拭った。
「私たちはもう何度も命を預け合いましたから。」
セレフィナは短く笑い、魔法剣を肩に担いだ。
「まったく……お人好しな連中ね。」
風が吹き抜け、次の冒険の予感が広がる中、三人は並んで歩き出した。




