真の次元①
セレフィナは裂け目に足を踏み入れる直前、ふと振り返り、仲間たちの方を見やった。その冷ややかで落ち着いた瞳は、どこか余裕すら感じさせる。
「…少し待っていなさい。すぐ戻るわ。」
その言葉には揺るぎない自信が込められており、仲間たちは彼女の圧倒的な存在感に頷くしかなかった。セレフィナは彼らが安心するようにわずかに微笑むと、再び裂け目へと向き直る。その瞬間、裂け目から漏れ出る異質な力が肌を刺すように彼女を迎える。
「ここが『真の次元』だと?」セレフィナは裂け目の向こうに広がる空間を鋭く見据えた。その目には嘲笑と興味が入り混じっている。「亜神ごときが創り出した空間が真の次元だなんて…笑わせるわね。」
嘲るような彼女の言葉は、その場に渦巻く力をまるで取るに足らないものと断じていた。胸の奥でかすかに高揚感が生まれるのを感じる。未知の力、それがどれほどのものかを試してみたくなる衝動が、彼女の冷静な外面の下で静かに沸き立っていた。
亜神は冷静に言葉を返す。「確かに、私が創り出したものに過ぎないが、それでも"通常の存在"にとっては破滅を意味する領域だ。そこに踏み入る覚悟があるのなら…進むがいい。」
「覚悟だって?」セレフィナの口元に冷たく挑発的な微笑が浮かぶ。「覚悟が必要なのは、むしろそちらの方よ。こんな場所で私が止まると思うのなら、思い上がりも甚だしいわね。」
裂け目の前で、一瞬立ち止まる。空間の向こうに広がる未知の領域。その圧倒的な力の奔流を前にしても、セレフィナの足は微塵も揺るがない。むしろ、この挑戦こそが彼女にとって日常の延長線上にあるものでしかないことを思い知らされる。
「さあ、試してみなさい。真の次元とやらが、私の存在に抗えるものならば。」
裂け目に片足を踏み入れた瞬間、圧倒的な圧力が全身を襲った。だが、セレフィナは微動だにせず、その力を受け流す。裂け目の奥へと完全に足を踏み入れると、視界が一変する。
その先に広がるのは、時間も空間も概念すらも崩壊した、ただ荒れ狂うエネルギーの奔流。それは生きとし生けるものを拒絶する次元そのものだったが、セレフィナは何一つ怯むことなくその中心へと歩を進めていく。
「これが真の次元だと言うのなら…」
その目には、支配者としての冷徹さと、未知の力を見極めようとする鋭い輝きがあった。
「私が真実の存在というものを教えてあげるわ。」
魔法陣を展開し、己を守る防御を張り巡らせながら、彼女は真の次元の深淵へと進む。圧倒的な力の渦中で彼女の姿は揺るぎなく、まるでその次元そのものすら飲み込むかのようだった。
仲間たちは、裂け目に消える彼女の背中を見送りながら、その強大な存在感に改めて驚愕し、彼女が再び戻ってくることを信じて待つことしかできなかった─。




