魔王 vs 亜神③
亜神が決意を込めた目でセレフィナを見据えると、彼の周囲の空間がさらに激しく揺らぎ始めた。亜神の体から放たれるエネルギーが次元そのものを圧倒し、背後には巨大な異形の光が揺らめいていた。それは彼の本質が具現化したかのような存在で、純粋な威圧感がセレフィナに迫る。
「我が真の力、容易く見せると思うなよ。」亜神は静かに言い、背後に広がる光の像がさらに濃くなり、別次元の存在そのものが降臨したかのような迫力を持っていた。
その瞬間、亜神の全身から放たれた光の波が周囲の空間を覆い尽くし、セレフィナの視界を白く染めた。しかし、セレフィナは動じることなく鋭い眼差しでその光を見据える。そして、彼女の体からも膨大な魔力が放出され、周囲の空間を守るように、闇のような黒いエネルギーが広がっていく。
「貴様がどれほど強大であろうと、我には関係ない。」セレフィナは冷静な口調で言い放つと、周囲に展開された魔法陣が次々に輝きを増し、その一つ一つが独立した力を持って亜神の攻撃を受け止める準備を整えた。
だが、亜神はふと口元に皮肉な笑みを浮かべ、言葉を投げかける。「なぜだ?」
「……何が?」セレフィナは訝しげに眉をひそめる。
「なぜ貴様ほどの力を持つ存在が、人間の味方をする?」亜神の声には疑問と嘲笑が混じっていた。「脆弱で無力な彼らを守る価値が、本当にあるのか?」
セレフィナは一瞬だけ目を細めたが、すぐに冷静さを取り戻して答える。「価値を語るのは、行動ではなく結果だ。守る相手が人間かどうかなど、我にとって重要ではない。」
亜神はその返答に興味を示すように首をかしげる。「ならば、貴様にとって人間を守る理由とは何だ?他の者たちが貴様を裏切り、力を求めて争う中で、なぜ彼らに肩入れする?」
セレフィナは軽く息をつき、口調を少し柔らげた。「我の行動に善も悪もない。ただ、自ら選んだだけだ。それが人間を守ることだったというだけの話だ。」
「……善悪の問題ではない、だと?」亜神は目を細め、その答えを吟味するように沈黙する。そして再び言葉を投げかける。「だが、それは矛盾ではないのか?お前の力は、善でも悪でもないと言いながら、実際に人間を救う行動を取っている。」
「矛盾ではない。」セレフィナは即答した。その声には静かな力が宿っている。「我の力が結果として誰かを救おうと、破壊しようと、それは単なる選択の結果だ。正しさを測るのはお前ではないし、我でもない。世界が決めるだけだ。」
亜神はしばらく言葉を失い、ただセレフィナを見据えていた。彼女の言葉の奥にある確信が、彼の中で一瞬だけ心を揺さぶった。
「……くだらぬ理屈だ。」彼はそう吐き捨てるように言い、再び手を掲げた。巨大な光の槍が彼の手の中に形成され、それは次元を捻じ曲げるほどの密度と力を秘めていた。
「これを受け止められるならば、貴様の信念を認めてやろう。」亜神は低く言い放ち、光の槍を全力でセレフィナに向けて放つ。その一撃は天地を裂くかのような圧力でセレフィナに迫る。
だがセレフィナは微笑を浮かべ、闇の波動を解き放った。その波動は亜神の光の槍と衝突し、激しいエネルギーの爆発が発生する。衝撃波が空間を裂き、あたり一面が白と黒の光で染められた。
「この程度の力では、我を屈服させることはできんぞ。」セレフィナの声は冷徹だが、その裏にはどこか深い哀れみが含まれていた。「お前が信じる力と理屈で進むがいい。我 も、我の選んだ道を行くだけだ。」
爆発の余韻が収まると、亜神は膝をついて荒い息をつく。その目はセレフィナを見据えながら、先ほどの彼女の言葉が頭の中で反響していた。




