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魔王 vs 亜神①



天使の長が消え去り、戦場は静寂に包まれた。セレフィナは周囲を見渡し、一息つく間もなく次元の歪みを感じ取る。その空間にわずかに残る天使たちの痕跡も、すべて光の粒となって消え去っていった。




「まだ終わっていない、か……。」




セレフィナは冷静に空間を切り裂き、次元の狭間へと足を踏み入れた。歪む空気と途切れ途切れに聞こえる低い共鳴音――そこは異なる法則が支配する世界だった。光と闇が交錯する不安定な空間を進むと、やがて巨大な神殿のような建物が視界に現れる。その神殿は存在そのものが異質であり、まるで次元の中心を支える柱のような威容を放っていた。




「ここが、次の舞台か……。」




セレフィナが静かに呟くと、神殿の扉が音もなく開かれ、その奥から眩い光が溢れ出した。そして、光の中から現れたのは、一体の亜神だった。





亜神の姿は人間の輪郭を保ちながらも、体はまるで純粋な光でできているようだった。その顔ははっきりと見えず、しかしその存在感と威圧感は天使たちを遥かに超えていた。




「ようこそ、我が支配する領域へ。」亜神は深い声で語りかけた。その声は空間そのものに響き渡り、セレフィナの心に直接訴えかけるような感覚をもたらした。





セレフィナの目の前に現れた亜神、その正体は「アルケイン・エーテリアル」という種族の一員だった。アルケイン・エーテリアルとは、古代の精霊と物質界のエネルギーが融合して誕生した特殊な存在であり、その始まりは遥か過去、神々が物質界と霊界を繋ぐ役割を与えた時代にまで遡る。元来、彼らは特定の役割を果たすために造られた半霊的な存在に過ぎなかった。しかし、その中でも一部の個体は、自己の存在を超越することを志し、己を極限まで高めることで神々に近しい存在、「亜神」としての地位を確立した。





目の前の亜神は、その過程を経て「カイレオス」と名乗るまでに至った存在だった。カイレオスは元々、高位の精霊として、星々の運行や物質界の調和を管理する任務を担っていた。しかし、長きに渡り神々の命令を受けるだけの役割に疑問を抱くようになり、次第にその制約を超えた存在への道を模索し始めた。





カイレオスが亜神へと至るきっかけとなったのは、古代に起こった「次元崩壊」と呼ばれる大規模な異常現象だった。複数の次元が重なり合い、霊的存在と物質界の秩序が混乱したその状況で、カイレオスは膨大な力を蓄えたまま暴走する存在――いわゆる「亜神の素体」となるもの――を目撃した。神々ですらそれを制御することができず、精霊たちは次々とその力の余波に飲み込まれ消えていく中、カイレオスはその危機を利用し、自らの限界を超えた力を手に入れることを決意する。





彼は次元崩壊の中心にある混沌のエネルギーを吸収し、それを制御する術を編み出すことで、結果的に自身を霊的存在の枠を超えた新たな次元の支配者へと昇華させた。こうして、カイレオスは「アルケイン・エーテリアル」の中でも稀有な存在となり、神々の領域に限りなく近い存在――すなわち「亜神」として認識されるに至った。





カイレオスが支配する次元は、彼の力が形作った空間そのものだ。この領域は、物質界と霊界の狭間にあり、現実と虚無が入り混じる独特の構造を持っている。重力や時間の概念すら歪んでおり、この領域に踏み入れた者は通常の感覚では立ち続けることすら難しい。





この領域の存在理由は、単なる力の誇示ではない。カイレオスはここを「試練の地」として設けており、自らを訪れる者に力と意志の試練を課すことで、自分自身の存在価値を確かめているのだ。彼にとって、次元を訪れる者との対話と戦いは、自己の本質を再定義する行為でもあり、その中で得られる知識や力を糧に、さらなる進化を求め続けている。





セレフィナがここに至ったことも、カイレオスにとっては予想外でありつつも歓迎すべき出来事だった。彼女の力、存在、そして背負うものに対する興味が、彼の静かな表情の裏で燃え上がっているのは間違いない。





「お前のような者がここに来るとは思わなかった。」


カイレオスが放った言葉には、単なる挑戦だけでなく、確かな好奇心が込められていた。





「お前が、亜神という存在か。」セレフィナはその声に動じることなく、冷静に問いかけた。その視線は亜神の中心を鋭く見据えている。





亜神は淡い笑みを浮かべたように見えたが、その表情はどこか冷たく、感情を読み取ることはできなかった。「我は神々の意志に近き存在。しかし、この次元ではただの試練の管理者だ。」





亜神は手を軽く上げると、周囲の空間が大きく歪んだ。その動きに連動するように、数本の光の槍が現れ、セレフィナを取り囲む。その槍の一本一本から放たれる力は、天使たちの攻撃とは比べ物にならないほどの威圧感を持っていた。





「この槍の試練を超え、我を打ち倒してみせよ。お前の力が真に価値あるものか、見極めさせてもらおう。」亜神は静かに告げた。その言葉には試すような響きがありながらも、どこか高圧的な響きが含まれていた。





セレフィナは一歩前に出て言い放つ。「興味深い提案だ。だが、あなたの試練に付き合う理由はない。」





そう言うや否や、彼女の周囲に魔力の波動が広がり始めた。その圧倒的な力の解放により、周囲の光の槍が微かに震えた。亜神はその光景を見ても微動だにせず、冷静にその力を観察している。




「お前の力がどこまで届くか、見せてみよ。」




光の槍が一斉にセレフィナへと迫る。その速度と軌道は予測不可能で、通常なら避けることさえ困難な一撃だった。しかし、セレフィナは微動だにせず、魔力の防壁を展開し、すべての槍を跳ね返した。その魔力の圧力により、空間が歪み、周囲の景色が一瞬にして崩れそうになる。





亜神はその様子をじっと見つめていた。槍を弾き返されても、その表情には動揺の色は見えない。しかし、内心では彼女の力に驚きを覚えていた。





「なかなかやる。」亜神は呟くように言った。「だが、この試練はまだ始まったばかりだ。」




セレフィナは目を細め、冷静に次の攻撃に備えた。戦いの火蓋は切られ、亜神の領域そのものを巻き込む壮絶な戦いが幕を開けようとしていた。

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