表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/78

未踏破区域⑨



セレフィナが指先に魔力を集中させると、空間が振動し始めた。彼女の周囲に展開された巨大な魔法陣は、まるで世界そのものを飲み込むかのように輝き、中心から放たれた光が眩いばかりに広がる。その光は、まるで昼夜を越える太陽の如き輝きで、目の前の黒竜をくっきりと浮かび上がらせた。


「なんて力だ…」グレンは息を呑む。セレフィナの魔力の波動が肌に刺さり、ただ傍に立っているだけでも圧倒されそうだった。


黒竜は一瞬、光の眩しさに目を細めたが、すぐに凄まじい怒りを込めた視線をセレフィナに向けた。その視線だけで大地が震えそうな威圧感がある。


「貴様…何者だ!」黒竜の咆哮が空間を震わせる。それは単なる声ではなく、次元そのものを切り裂かんばかりの波動を伴っていた。


しかしセレフィナは微動だにせず、冷たい視線を黒竜に向けるだけだ。そして、まるで叱りつけるように静かに口を開いた。

「誰だって? ただの通りすがりよ。でも、少しは空気を読んでくれると助かるんだけど。」


その挑発的な言葉に黒竜の目がさらに鋭くなる。「愚か者が! この次元の覇者たる我を侮るな!」


竜が吠えるたびに周囲の空間が歪み、黒いエネルギーが渦巻き始めた。その力は、見ているだけでも膝をつきたくなるほどだ。しかしセレフィナは顔色一つ変えず、あくまで冷静だ。


「グレン、注意してなさいよ。これ、ちょっとばかり厄介そうだから。」セレフィナが軽く肩越しに言う。その余裕たっぷりの態度にグレンは一瞬呆れたが、すぐに剣を構え直した。


「厄介そうって、そりゃそうだろうよ!」グレンは突っ込みを入れるが、内心では彼女の冷静さに少し安心していた。


黒竜がその巨大な翼を広げ、空中から強烈な火球を放つ。燃え盛る火の塊が迫ってくるその瞬間、セレフィナは小さくため息をつき、軽く指を動かした。


「そんな単純な攻撃、見飽きたわ。」


彼女の言葉とともに、展開された魔法陣が光を放ち、竜の火球を消し去る。その光景に黒竜は一瞬動きを止めたが、すぐにその巨体を使って突進してきた。


「グレン、下がって!」セレフィナが鋭く指示を飛ばす。


「わかった!」グレンはすぐに距離を取り、セレフィナに全幅の信頼を寄せるように一歩引いた。


セレフィナは静かに目を閉じ、次元を揺るがすほどの膨大な魔力をその手に集め始めた。その姿はまるで戦場に舞い降りた神のようで、グレンも思わず息を呑む。


「これで終わりよ。」セレフィナが低く呟くと同時に、魔法陣が爆発的な輝きを放ち、その中心から巨大な光の柱が竜に向かって放たれる。その光はあまりにも圧倒的で、黒竜の巨体を貫く音が空間全体に響き渡った。


黒竜は一瞬空中で硬直し、次の瞬間、崩れ落ちるように地面へと落下した。その動きが完全に止まると、あたりの空間も徐々に静寂を取り戻し始めた。


「終わった…のか?」グレンが恐る恐る問いかける。


セレフィナは光の余韻が残る中で深呼吸をし、冷静な顔を保ちながらも、少しだけ疲れた様子で答えた。

「終わりじゃないわ。これでようやく“準備”が整っただけ。さあ、次に行くわよ。」


彼女のその言葉に、グレンは再び気を引き締める。そして、一歩踏み出したセレフィナを追いかけながら、心の中で静かに呟いた。

「これが“通りすがり”の実力だってんだから、本当に信じられない…」


その呟きを聞き取ったのか、セレフィナがわずかに振り返り、薄く笑ったようにも見えた。そして彼女たちは、新たな次元の扉に向かって歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ