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本戦②

2回戦の目玉試合として、セレフィナと名の知れた魔法使いアリシアが対戦することとなった。会場は緊張感に包まれ、観客たちの期待が高まる。セレフィナは、長い銀髪を揺らしながら堂々と登場し、その澄んだ青い瞳は自信に満ちていた。



アリシアは若いながらも、冒険者ギルドで実力派として知られていた。その年齢にしてBランク上位ではあるが、次期Aランク筆頭との評判を持ち、"紅炎のウィッチ"という二つ名を与えられている。若干20歳ながら、数々の危険なクエストをこなしてきた彼女の姿は、多くの冒険者にとって憧れの的であり、その美貌と強さから街でも一目置かれている存在だ。



彼女の得意とするのは火属性魔法で、炎を自在に操る戦闘スタイルは、敵を圧倒する勢いと迫力を持っていた。過去には人里を襲った強力な魔獣を単独で討伐したこともあり、その戦いの記録はギルド内でも語り草となっている。アリシアは自分の力に自信を持っていたし、どんな強敵とも互角に戦えると信じて疑わなかった。



だが、セレフィナとの戦いは、そんな彼女にとっても未知の領域だった。 "紅炎のウィッチ"として名を馳せる彼女が、まるで力を引き出すことすら叶わずに敗北するとは、考えもしなかった。



アリシアは鋭い眼差しでセレフィナを見据えていた。「あなたの噂は聞いているよ。その実力、私が証明してみせる!」



試合開始の合図が響くと、アリシアは全力でセレフィナに向かって駆け出した。彼女の掌に紅蓮の炎が宿り、瞬く間に巨大な火球となって放たれる。


「これでも受けてみなさい、“フレイム・ラッシュ”!」


叫びと共に、いくつもの火球が次々とセレフィナに襲いかかる。だがセレフィナはその場から一歩も動かず、片手を軽くかざしただけで、淡い青白い光が周囲に広がり、柔らかに輝く魔法障壁が展開された。



(実際のところ、障壁を張る必要もなかったのだが…)セレフィナは心の中で思う。アリシアの魔法攻撃は精度も高く、努力の跡が感じられるものの、セレフィナにとっては痛くもかゆくもない程度の威力だ。むしろ、肉体だけでそのまま受けても何の影響もなかっただろう。



だが彼女は、あえて障壁を展開した。あまりにも無防備に攻撃を受けてしまえば、自分が“異質”な存在であることが周囲に強く印象づけられてしまう。観客の視線を意識し、過剰に驚かせないよう配慮する、それも一種の「人間らしさ」に見えるよう、彼女なりの“手加減”なのだ。


(このくらいでいいだろう。少しは魔法使いらしく見えるかもしれないし…)


火球が障壁にぶつかり、激しく爆発するが、セレフィナには一切の傷がつかない。


彼女は微かに微笑むと、次のアリシアの攻撃を悠然と待ち受けた。



次々と魔法を繰り出すアリシアの猛攻は続く。彼女の手から放たれる氷、風、雷といった多属性の魔法が矢継ぎ早に放たれ、会場は魔力の閃光に包まれる。しかし、どれだけ攻撃を重ねても、セレフィナの障壁は微動だにしない。



「まだまだね…」


アリシアの額に汗が滲み、息が乱れ始める中、セレフィナはゆっくりと片手を上げた。そして、口元にわずかに微笑みを浮かべながら、静かに言い放つ。


「…フレイム」


その言葉とともに、彼女の指先に小さな炎が灯る。初級魔法である「フレイム」──観客の誰もがよく知る、基礎中の基礎であり、魔法使いにとっては初歩の段階で習得する技だ。しかし、その炎は異様に強く揺らめき、まるで意志を持つかのようにアリシアへと向かっていく。


「な…なんで初級魔法なんかで…!?」


アリシアが驚きの声をあげる間もなく、その小さな炎は彼女の放った全ての魔法の痕跡を飲み込み、巨大な火柱に変わっていく。その圧倒的な熱量に、アリシアは後ずさりし、必死に防御の魔法を展開するも、フレイムの勢いを止めることはできなかった。


「くっ…!」


炎がようやく収まると、アリシアは膝をつき、息を切らしていた。彼女の全力を込めた防御も、セレフィナの一撃には到底及ばなかったことを悟り、唇を噛みしめる。


「…降参します」


その一言が会場に響くと、観客たちは静まり返り、次の瞬間、大きな歓声が沸き上がった。セレフィナがわざわざ初級魔法だけで相手を圧倒したことに、誰もが驚愕していた。


* * *


アリシアは、試合が終わった後も興奮と驚きで胸が高鳴っていた。セレフィナとの戦いは、自分にとってかけがえのない経験となったが、同時に彼女の圧倒的な力に打ちのめされた気持ちもあった。



「本当に底が知れない。バケモノみたいな人だ……」とアリシアは思った。彼女が放つ魔法は、まるで自然の一部のように美しく、かつ力強く、ただの魔法使いとはまったく異なる存在感を放っていた。自分の魔法が通用しないと感じた瞬間、アリシアの心には恐怖が芽生えた。



試合中、セレフィナの動きは常に余裕があり、どんな攻撃にも冷静に対処していた。彼女はまるで遊びのように戦っているかのようで、アリシアはその圧倒的な力の前に無力感を抱かざるを得なかった。どれだけ努力しても、セレフィナのようにはなれないのではないかと、暗い思いが頭をよぎった。



「もっと強くなりたい、もっと力を手に入れたい……」と、アリシアは強く願った。彼女はセレフィナの姿を見つめながら、自分の未来を思い描いた。セレフィナのような存在になるためには、まだまだ多くの試練を乗り越えなければならない。彼女の強さは、ただの実力ではなく、心の在り方にも表れていることを痛感した。



アリシアは、自分の成長を誓いながら、次なる戦いに向けて心を燃やす決意を固めた。セレフィナに勝つことは難しいかもしれないが、彼女の背中を追い続けることは、自分にとっての目標となるのだと強く感じた。

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