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八十二、突然の帰宅

「なに、香奈……聞いてなかったの~?」

 仁美はそう言いながらフラペチーノを吸い始めた。先程二人ともドレスが無事に決まったので、私と仁美はカフェに移動していた。美咲は挙式の打ち合わせが引き続きあったので、朝比奈のお迎えを仁美とカフェで待つことになったのでここで待機中という訳だ。

「……いや、さっきスマホ見返したら、あちらから、ちゃんと連絡きてた。」

「マジで社畜な女だね。」

「……なんも言えない。」

 私はグラスに入ったジンジャーエールを飲み、テーブルに項垂れた。そしてすぐに頭を持ち上げた。

「…………いや……まてまて……だとしても!?テレビ電話はちがくないかっ!?」

「これくらいのプレゼントしてあげたら?連絡途絶えてた原因あなたなんだから。」

「……う。」

 そんなことを言われてしまったらと思い、私はもう反論は諦めようとまたグラスを持ち、溜め息を吐いた。そして諦めた口をまた開いた。

「……私さぁ、自分からはフラないって自信あったけど、フラれることもあるよなって……今さら思ったんだよね……。」

「えー、神山君はないでしょ……。」

「分からないじゃん……沖縄にも美女はいる。」

「……いや、さっきどんな顔か見た?……ぜったいに見とれてたよ、ぜったい!」

「そんなの見る余裕ないくらい驚きがでかすぎたんですけど……?」

 私が仁美を軽く睨み付けると彼女はサプライズが過ぎたか~と、ケタケタ笑いながらさらにどうする?バラの花束もって登場したらなんて言い始めた。仁美がそんな冗談を言ってきたので、私は手を振ってそんなことないよと呆れた。彼がそんな突発的な行動をするとしたら、優勝カップ手にするぐらいじゃないと無理だろうなと想像した。

「……香奈はさ……あっち行かないの……?」

「あっち?……いや行けないよぉ……入社して後少しで1年だけど、さすがにじゃない……?」

「仕事は色々選べるじゃん……仕事好きなのはいいけどさ、神山君は一人しかいないんだよ……?」

「…………………………。」

 私はごもっともすぎてさらにまたテーブルに項垂れた。なんか今日は仁美の発言に全然勝てる気がしない。それくらい自分のここ最近が、彼との貴重な時間をないがしろにしてるんだなと思ってしまうが故にぐうの音もでない。そしてそんなことをグルグルと考えていた途中で、ハッとして頭を一気に上げた。その瞬間仁美がびくっとなり、なによ?と首をかしげた。

「ヤバい、部屋片付けてない……私、先に自宅に帰りますっ!」

「え、いや、神山君もいるんだよ?!」

「だからこそっ、じゃん!」

「はい?」

「帰ってきて……ぐちゃぐちゃの部屋なんて……最悪すぎるっ!」

 私はすくっと立ち上がり、ジンジャーエールを一気に飲み干して仁美の声を無視して小走りに店を後にした。


 ――――――――――――――――――


 

「……は?なんで、仁美だけ?」

 朝比奈さんが車の中から不貞腐れた仁美さんを見て、ポカンとしていた。

「……こっちが聞きたいわ、とりあえず乗るよ。」

 そう言いながら仁美さんは後部座席にドサッと乗り込んだ。

「青葉……一緒って言ってなかった?」

「さっきまではね……はぁ。」

 仁美さんは溜め息つきながらやれやれと言わんばかりに頭を振った。

「仁美さん、香奈さん何かありました……?」

「神山君……ダメよ……あのこ……。」

「ダメ……とは?」

「もう人に尽くすことに人生かけてる……仕事にしても、プライベートにしても……。」

「とても、分かります。」

「ねぇ、、、浮気してないよね?」

「え!俺っすか?!」

 あまりの質問に俺は思いっきり勢いよく、後ろに顔をむけた。そのせいで軽く首がグキッと変な音が鳴った。

「…………ッつ、いってぇ~。」

「あははっ!神山の動揺やっば……やっぱあれ……連れ子?」

「は!?……浮気通り越して、でき婚?!神山君、さすがに私だって怒るよ?!」

「違いますっ!違いますから!!……朝比奈さん、マジで俺こそ怒りますよ?」

「え、こわ、ガチじゃん。」

 俺は隣の朝比奈さんを睨み付けた後、ゆっくり仁美さんに話しかけた。

「香奈さん…………俺のこと、浮気してる…………って言ってたんです…………か?」

 俺は衝撃的な質問に恐る恐る聞き返した。姉貴の助言もあり、できる限りで連絡はしてたつもりだが、正直日に日にキープできていないのは否めない。

「違うよ、逆逆!」

「……逆?」

「…………神山君に…………フラれるかもって……。」

「……は!?……っつ!………………いてぇ……。」

 俺はこれ以上は身体に障ると思い、首を擦りながら前に向き直した。

「私はないでしょ……って言ったんだけどねぇ……。」

「………なんで……そんな発想になんだよ……意味わかんねー。」

 朝比奈さんも仁美さんも悪いクセだよねと言わんばかりに呆れぎみに話していた。

「……あっ!ねぇ、ねぇ、神山君。」

「はい。」

「香奈にさ…ちょっとしたサプライズしない?」

 俺は何だと不思議に思っていると、仁美さんがサプライズ計画を話し始めた。   

「……それやりすぎません?」

「えぇ……駄目?」

「んんー、仁美、それはやった後に取り返しつかない気がするからやめとこうぜ。」

 悪ノリ大好きな朝比奈さんも珍しく結構冷静に止めてるので、本当に止めとこうと俺も率直に思った。

「そっすね……本番まがいは嫌っすね……。すんません。」

「そうね、ごめんごめん、私もふざけすぎた。でもさ~何かしら伝えたほうがよくない?」

 仁美さんにそう言われて、俺も朝比奈さんも否定はできずに確かにとさらに悩み始めた。そしてふと俺は思いついたことがあり、二人に話しかけた。

「二人って……この後、予定あるんですか?」

「ん?いや、特には……だよな?仁美?」

「うん、どうしたの?」

「じゃあ、少し寄り道してくれませんか?」

 俺は自分がしたいことをそのまま二人に伝えた。

 

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