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八十一、突然の連絡

 俺は空港で携帯をポチポチ触りながら、ひたすら自分の迎えを待っていた。もうそろそろと聞いてたが、道が渋滞しているのか意外と到着しない。

『あの……すみません……。』

「ん?……はい?」

 俺は肩をとんとんされたほうに振り返り、イヤホンを外して、ふと見ると、小学生の男の子がたぶん母親であろう人の足にしがみついてモジモジしてこちらを見ていた。

『か、神山選手ですよね?』

「……はい。」

『あの、あの、息子が、バスケやってて……神山選手に憧れてて……しゃ、写真撮ってもらえませんか?』

「……あーーー…………。」

 俺が返事をしようとしたら、携帯が鳴り始めたので、少しすみませんと言って、少し離れてそのまま電話に出た。

「おー、たぶん着いたんだけど……。」

「えっと、、あ、ここっす。」

 俺はいつもの車に手を振り、自分の居場所を伝えた。

「…………ん、あーはいはい、それね。」

「あとお願いあるんで、一回降りてくれません?」

「ん?、はいよ~。」

 俺は一回電話を切って、さっきの親子に近づき、男の子の目線に合わせるためにしゃがんだ。急に目線が一緒になったことに驚いたのか、少しびくびくとしながらこちらを見つめていた。俺は素直に可愛いなと思いながら、クスリと笑い、サングラスを外して声をかけた。

「こんにちは。」

『こっ……こんにちは。』

「今から、サプライズゲストもくるよ。」

『え……?』

 そう告げた瞬間にタイミングよく車が到着して、朝比奈さんが颯爽と降りてきた。

「…………え、まじ?、神山……子連れと結婚した……?」

「は?……バカなこと言ってないで一緒に写真撮ってください。」

 俺は呆れながらゆっくりと立ち上がった。

「なんだよっ、やめろよな~、仁美とかに何て言うか考えちゃったじゃねぇか。」

『あ、朝比奈選手!?』

「お、少年よく分かったな~。」

 そう言いながら今度は朝比奈さんがしゃがんで、男の子の頭をポンポンした。

「バスケやってんのか?」

『う、うん!……い、家でもずっとボール、触ってる!』

「おー!将来有望じゃん!いつか一緒にやろうなっ!」

『え、、あ、は、はいっ!』

「……すみませんお母さん、僕達あんま時間なくて、3人一緒のだけでもいいですか?」

 俺は申し訳なさそうにそう伝えると、お母さんは慌てて頷いて、カメラのシャッターを数回押した。写真を確認した後に朝比奈さんが車から常備してる色紙にさらっとサインを書き、俺に手渡したので何も言わずに続いて書いた。

「はい、お互い頑張ろうな。」

 俺がそう言いながらその色紙を手渡すと、少年は顔を真っ赤にして激しく縦に頭を振った。そしてお母さんに会釈して、朝比奈さんの車に二人で乗り始めると、少年が何かを思い出したのか口をパクパクしたので、車の窓ガラスを下に下ろした。

「……どした?」

『あ、ありがとうございましたっ!!』

「……ははっ、どういたしまして。」

 俺達はお互いに手をふり、改めて出発した。


 

 ――――――――――――――――――――――――


「いやぁ~……俺、マジで焦ったからな?!」

「なにが?」

「沖縄で違う奴と出逢ったのかって!」

「…………本当に……想像力すごいっすよね……。」

「あ、てめっ、今バカにしただろっ!?」

「……………………。」

 俺はあえてスルーして、スマホで今日の日程を確認した。その横でやいやい文句を言い続けていた先輩にふと思い出したことがあり話しかけた。

「朝比奈さんって……。」

「おい、盛大に無視したクセに、話題変えんのかよ。」

「香奈……さんと会ってます?」

「君、ホントに青葉しか眼中にないんだね……心配してたけど、安心したわ。」

「ないっすよ?……で?会ってます?」

 朝比奈さんはお前な~と言いながらも、進行方向見ながら首を横に振った。

「…………そっすか…………。」

「なに?……なんかあんの?」

「……いや、身体が心配で……。」

「青葉の?……あいつそんなにハードなの?」

「仁美さんから聞いてないんですか?」

「俺らも何だかんだ式の準備とかでバタバタしてるから、聞いてるかもしんないけど、あんま記憶ねぇな…………悪い。」

 俺はそうですかと言いながら、ゆっくり息を吐いた。

(たぶん、、言ってないんだな……ただ大変ってくらいしか答えそうにないもんな……あのひと……。)

「おまえら……大丈夫か?」

「………………なるようになるんすかね……こういうの。」

「珍しっ、弱気発言じゃん。」

「…………いかに今まで相手に頼ってたかを痛感しました……あっち行って……。」

「ほら見ろ、とっととプロポーズしろって言っただろ?!」

「…………なんも言えね~。」

 すると朝比奈さんの車のBGMとは別にスマホの着信音と思われる音楽が鳴り響いた。

「…お、仁美だ……」 

「どうします?……とります?」

「おう、そうしてくれ。」

 俺は分かりましたと言いながらスマホを手に取ると画面が何故かテレビ通話の着信だった。

「…………テレビ通話みたいっすけど……。」

「大丈夫、大丈夫、予定把握してるから、出ちゃいけない画面にはならねぇよ。」

「………………。」

 俺は正直疑わしいと思ったが、仁美さんなら謝ればいいかと思ったのでそのまま画面をスライドすると仁美さんがニコニコしながら電話にでた。

「えっ!、最高なんだけど!」

「さ、最高……?」

「ちょっと待っててね……あ、静かにしててよ。」

 俺の顔を見るなり、仁美さんは小声でそう言うとインカメラから外に切り替わった。何やらカーテンらしき物だけが見える。

「………………?」

「準備できました!?」

『朝比奈様……今、できましたよ。』

「じゃあオープンっ!…………。」

 仁美さんがそう合図すると、目の前に急に自分の彼女がウェディングドレス姿で登場した。肩から指先、デコルテまではレースがかかっており、胸元は少しだけ肌が露出していた。またスラッとした彼女の身体のラインに沿うように綺麗な白い布がピタッと合っていて、下の方にいくにつれてドレスが波打つようにヒラヒラしていた。

「…………ねぇ、仁美……これ、なんかおしゃれすぎて恥ずかしい……。」

「なんでよ、似合ってるじゃん。」

「えぇ……ってか、早く写真撮ってよ。」

「もちろん、写真も撮ってるさ。」

「………………写真も……?」

 仁美さんの返答に画面のむこうの彼女が不安そうな顔をし始めた。

「ねぇ、動画でしょ……?マジで恥ずかしいから……。」

「動画じゃないよ!」

「いいよ、嘘つかなくて……。」

「ほら。」

 すると画面がインカメラに戻り、急に揺れて一気に彼女の顔が近付いた。そして俺と目が合った瞬間、顔を真っ赤にして、スマホから姿が消えた。そして少し騒がしくなって通話が切れた。

「……………………。」

 俺は思わず両手で顔を覆いながら、下に頭を下げた。

「今の青葉?元気だったか?」

「……仁美さんの予定って……。」

「ん?、ドレス選びに3人で行くって言ってたぜ。」

「………………え、香奈…さん……も?」

「なんか青葉にアドバイスもらうって言ってたな……え、仁美のドレス見たんか!?」

「…………………………やば………………。」

「え?……エロかった?」

「……………プロポーズしそうになった。」

「……は?俺の奥さんなんだけど?」

 俺はそっちじゃないんでとだけ言って、さっきの姿を頭に焼き付けた。


 

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