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八十、2人の花嫁

「ねー、どれにしようか悩むねー!」

 仁美はワクワクしながらドレスを色々触り始めていた。そしてその横では、美咲が頷きながら、ふわふわなドレス一着を手にした。

「あ、ねぇねぇ、これは?!……ね、かんちゃんもこれかわいいって思わない?!」

「うん、可愛い……二人も含め。」

 私がそう返答するのもお構いなしに目の前で、女子二人がきゃぴきゃぴしながら、自分達のウェディングドレスを選んでいた。私はそんな二人を呆れながらも幸せそうだなと見つめた。

 今日は二人が自分達の挙式のウェディングドレスを選ぶと言って予約してたサロンに、なぜか私もアドバイザーとして連れてこられた。何やら客観的に意見というものが欲しいが、各々の相手にはサプライズしたいみたいで、その代打で呼ばれた次第だ。

「……ってか、二人ともよく同じ場所にしたよね―。」

 そう呟き、私はソファに座りながらカタログをパラパラとめくっていた。

「えへー!お陰でお互いバタバタだけどねー!あ、私、これでー。」

 美咲はそう返事をしながら着たいドレスを次々と選んで担当者とカーテンの向こうの世界へいった。

「しかも午前と午後で同じ日って……そんなこと普通できるの……?空いてたのが奇跡すぎない?」

 私が次にそう言うと、先にドレスを選び終え、担当者を待っていた仁美が笑いながらそうだよねと言ってきた。

「いや~、私とハルはこの間、身内だけでさらっとしたんだけどさ、軽いパーティーはしたいよねって話してて、そしたら美咲の会場綺麗だし、2二次会やるか悩むって言ってたから、なら私達のパーティー入れたら、新しいし、花嫁花婿二人でって面白いかなって。」

「そうそう。」

 先に試着室で着替え始めていた美咲がカーテンごしに返事をしてきた。

「開成さんと列席者かぶる人いるし、みんなそれぞれ多忙だし、ならいっそね、楽かもねって。」

「なんだかんだ男二人も悪のりみたいの好きだから、なんだかんだあっちはあっちで楽しそうに進行すすめてるよ。」

 私は頭の中で想像つくなと少しクスリと笑った。3人で話していると仁美の担当者さんが戻り、アテンドされ仁美もカーテンの中へと案内された。

「ってか、それよりかんちゃんはどうなのよ?!」

「ん?何が?」

「いやいや、遠距離恋愛始まって3ヶ月経ちましたけど?」

「……あー……まぁ、案の定、たまーにの連絡になりつつあるよね。」

 私は軽く伸びをしながら淡々と答えた。

「えー、大丈夫それ~?」

「…………それが私のが多忙でして……。」

「へ?」

 私はそうなんだよなと、ため息をついた。あれから私は異動があり大型店舗に勤務したのだが、大きいからこそ人も多く、何よりパーソナルジムを任されることになり指名がありがたいことに増えに増え、毎日ハードな日々になってしまった。なので澄からの連絡も数日に一回の返信になってしまったりという感じになり、ろくにテレビ電話もできなくなっていた。なので正直しばらく顔も見れてない。

「香奈はやっぱ仕事中心な人になるとは思ってたけど、まさかここまでとはねー。」

 仁美がそう言うと美咲も本当にとカーテンの向こう側で共感していた。

「えー……しょうがなくない……って、いいよ、私の話はっ……美咲着れたのー?」

「着れたーっ……どうかな?」

「おぉ……。」

 美咲は今時の淡いカラーのグレーのチュールドレスを着て登場した。

「めっちゃ似合う!やっぱ美咲は肌白いから淡い系がいいよっ。」

「えへへ~。」

「私も着れたよーっ。」

 そう言いながら隣のカーテンも開き、今度は真っ赤なAラインドレスを身にまとった仁美が登場した。

「え、意外といいじゃん!」

 私より先に美咲がそう返答すると、仁美も満更じゃないのか、でしょう~と言いながらドレスを横にフリフリさせた。

「仁美ってシンプル選ぶイメージあるよね。」

 私はまじまじと見ながらそう言うと、隣から覗いていた美咲もうんうんと頷いていた。

「そうでしょ!?……でもあえてのギャップでヒロを驚かせたい!……ってことで、この後も派手めを着ていきます。あ、香奈、写真撮ってー!」

「はいはい、お嬢さん方、順番に撮りますよー。」


 ――――――――――――――――――――――――

「うん!私はやっぱり直感を信じてこれにする!」

 仁美はそう言うと初めの真っ赤なドレスにしていた。

「えぇ~っ、まって、まって、私、もうちょっと着させて。」

 仁美の発言を聞いて、美咲はまた慌ててドレスが並んでるほうに向かって行った。私はそれを見ながらゆっくりでいいよ~っと優しく声をかけ、隣で携帯をいじり始めた仁美に話しかけた。

「仁美は早すぎない……?全然時間もて余してるじゃん……。」

「一回やってるから、こんなもんじゃない?」

「そうな……の?」

「いや、だってそう言ってる香奈だって、絶対に選ぶときに悩ま………………。」

 話の途中で仁美が何かを思いだし、携帯をポチポチ触って何かを確認し終わるとタイミング~っと言いながらこっちを見た。

「……………………なに。」

「…………すみませーん!」

 仁美は自分の担当者さんを大きな声で呼び始めた。私はやっぱり他のがよくなったのかなと不思議に思いながらそのまま眺めた。

『朝比奈様、いかがなさいましたか。』

「あの、私がおさえてる時間だけ、この子も着ていいですか?一着でいいので!」

 そう言いながら指された指は私に向かっていた。

「……はっ?!」

「……たぶん、来年あたりには結婚予定なので、また私が連れてきますから!」

『ふふ、かしこまりました……延長はできないので、そちらだけ宜しくお願いします。』

「はい!……よしっ、行くよ!」

「ちがっ、え、私、まだプロポーズされてもないって。」

「なーに、言ってんの?プロポーズまがいは、散々されてんじゃん。」

「ま、まがいって……。」

 私は完璧に否定もできないなと返す言葉が出てこなかった。そんな私の戸惑いを気にもせず、仁美はじゃあ私が選んであげるからそこにいなさいと言われ、着るはずの私を置いてきぼりにして行ってしまった。

「ええ…………まじ?」 

 私は無駄毛処理しててよかったとよくわからないがそんなことを思いつつ、ただ遠くて楽しそうに選ぶ友人を待つしかなかった。

 

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