七十八、ふたりの欲
「はぁ……ん……は……ぁあっ!……んんっ!!」
私は彼の猛追の攻撃にただ声を出すしかなかった。
「………………かな、大丈夫?」
彼はそう言いながら私の内腿にそっとキスをして、舌でゆっくりまたさらに撫でた。私は思わず身体を震わせて彼の頭を手でおさえた。
「……だ……だめかも…………もぅ…………あぁぁっ。」
彼は私に大丈夫か聞いてきたくせに、何も聞いてなかったかのようにまた顔を埋めた。
「……ね……とっ……んん!……澄…………もういいってばっ…………あっ、!」
「んー?…………やだ、まだ。」
「やっ?!…………、やだって……っ!」
「だってさっきのお返ししないと。」
彼はそう言うとさらに激しくして、しまいには指も使いはじめてきた。
「だ、だめっ!!……と、とおっる、私、おかしくなりそうで……っ!…………も、むっむり!!!無理だからっ!」
「んーん、まだ大丈夫。」
「だ、だめだってっ………あ……………あぁあーーっ!」
私は果てた後、自分の息を頑張って整えようとはぁはぁと荒く、なんとかゆっくり呼吸をしていた。そんな私にお構いなしに、足の指先からまたキスを一つ一つ、丁寧に彼は落としていた。
「……な、なんで……そんなに…………。」
「俺のこと…………忘れさせないように。」
「…………っ!」
彼のキスはいつの間にか、腹部まできていた。そしてそのまま力強く吸ってきた。
「……んっ!!」
私の肌に痕を残すと一旦満足したのか、近くにあった飲みかけの炭酸水をそのまま彼は口つけた。私は力が入らず、その行動をただただぼーっと眺めた。私の視線に気づいた彼はゆっくりと私に近づいてきた。
「…ほら、口開けて。」
「……へ?」
彼は自分の口に再び水を含ませ、私の口の中に注ぐかのように顎を持ち上げながら私の中に入れてきた。
「んぐっ!……んー。」
口の中に全部入るわけもなく、水がポタポタと落ち、シーツを濡らした。また水は顎をつたい、喉をつたい、下へ下へ零れていく。そんなことはどうでもいいのか、彼は気にも止めず、そのまま私に食らいついている。私はそんな中で一生懸命呼吸しようと、必死に彼にしがみついていた。もうすでに口の中の水分が何なのか分からないくらい、私達はずっと求め続けていた。すると部屋のベルが急に鳴った。それを聞いた瞬間に私達は現実に引き戻されて、お互いに一度止まった。そして彼がバスローブを手にとり、羽織ながら、ドアに向かって行った。彼の姿が角を曲がり見えなくなった途端、私はチャージ切れのようにベッドにそのまま倒れた。
「澄の全開……すごすぎる……。」
私も近くにあったバスローブを手繰り寄せて、一旦くるまるだけくるまった。すると彼がカートをおしながら、戻ってきた。カートの上には豪華なフルーツの盛り合わせがのっていた。
「え、いつの間に頼んだの?」
「サービスだって……食べる?」
「………………え、、食べて……いいの?」
「いや、そういえば、何も食べてないって、今気付いた。」
「た、確かに……。」
彼はそれをベッドの上にトレーごとのせ、シャインマスカットを一粒もぎ取り、私に差し出した。私は差し出されたものをそのまま素直に口に入れた。
「……むぐ、甘くて美味しぃ~……染みる~。」
私は感動しながら噛み締めていると、彼が顔を近づけ、私の耳元にさらに近づいた。
「……たんまり体力蓄えたほうが今日はいいんじゃない?」
私はその言葉を聞いた瞬間、食べかけの物を思いっきり飲み込んでしまった。
「けほっ、な、なななにっ!?」
「意味分かってるくせに。」
彼はニヤッした後、隣に座り綺麗にカットされたりんごを一口かじった。
「こっちも食べれば?」
彼は食べかけのりんごをまた私に差し出した。
「……………………。」
「……食べかけじゃ、やだ?」
「………………食べる。」
「ん。」
私はまた差し出されたりんごを口に頬張った。シャリシャリして、冷たくて、美味しかった。それくらいに自分が体力を失っているんだろう。そんな私の横でただパクパクとフルーツを食べている彼。私はそんな彼をじっと見つめながら同じくフルーツを口に運んだ。水分が身体に染み渡る感じがした。しばらくすると私の視線に彼が気付き、お皿を見て、また私を見た。
「……ん?イチゴ?」
彼は物欲しそうに私が見えたのか今度はイチゴを差し出した。
「……………………。」
私はそのイチゴを今度は手にとり、口には入れずにお皿に戻した。
「…………イチゴじゃな…………っ。」
彼が言いかけた言葉を無視して、私はそのままフルーツには口をつけずに差し出されたままだった彼の指先から咥えた。
「……なに……?間違えて……る訳じゃないよな……。」
私は澄の問いかけに答えもせず、そのまま口に含ませた。部屋では水音だけが響いていた。
「……………………。」
「…………………………香奈?……いつまでそれすんの?」
「………………わ、分からない……。」
「………ふぅ~ん?………もう……こっちにしたら?」
「……へ?……ふむっ!!」
気付いた時には彼の唇が私の唇に到着していた。
「……ね、こっちのがいいでしょ?」
「……………………ぅん。」
私が小さく頷くとさっきのトレーをカートに戻し、彼はバスローブを脱いだ。私はそれを見つめるのは気が引けて何となく目を伏せた。しかしすぐ彼が私の頬に手を添えて、またゆっくりと口をつけ、ゆっくりと後ろに倒された。私は彼をまじまじと見つめながら次の行動を待っていた。すると彼は上から覆い被さるように倒れてきた。
「………………あー、やば。」
「………………?」
「その顔……俺以外に見せんなよ。」
「え……?」
「無意識かよ……余計に離れてる期間が怖いわ。」
彼はさらに力強く抱き締めてきた。いつもの行動にいつもとは違う感情がそこにのってる気がした。私は彼の頭を優しく撫でながらさっき言えなかったことを伝えた。
「…………澄にしか見せないよ。」
「そうしてもらわないと困る。」
「逆に澄しかいないんだけど……?」
「なにが?」
「……こんなに私をドキドキさせるのも、困らせるのも、触りたくなるのも、、、。」
「………………。」
「………………そ、その…………あ、甘え……たくなるの……も。」
「いや、ほとんど甘えたことなくね。」
「う……だ、だって……わ、分からないんだもん……。」
「……じゃあ、甘えてみなよ。」
彼はそっと離れ私の口元に手を添えた。
「……………………。」
「………………………………。」
「………………とおる…………ほしいです……。」
「…ははっ、めっちゃ赤!」
「っ……つ!!見ないで!」
「無理。今日は全部見せて。」
彼は優しくそう言いながら私の肌に口をつけた。




