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七十七、続きのベッド

「……わぁ、この間テレビで見た高級な炭酸水ある~。」

 私はバスローブの格好で冷蔵庫の中を覗いていた。

「これ飲んでいいのー?!」

 私は後から来た澄にそう声をかけた。

「……どーぞ……。」

 彼はかなり不服そうにベッドに腰掛けながら、髪の毛をタオルでわしゃわしゃ拭いていた。

「澄も飲むよね?」

「……じゃあ、飲む。」

「シャンパングラスあるから、より雰囲気あっていいーっ!」

「………………。」

「グラス冷やしとけばよかったねっ、はい、澄の分。」

「………………ありがとう。」

「へへっ、かんぱーい。」

 私は澄のグラスにカチャンと自分のグラスをあて、一気にくくっと一口で飲み干した。

「んーっ!美味しいっ!!」

「……………………。」

 私がさらに追加を注いで飲み始めると、彼はまたさらに不服そうにまた髪をわしゃわしゃと拭いていた。

「あれ?美味しい?」

「……まぁ。」

「…どーしたの?なんかさっきと違って、静かじゃない?」

「……いやいや、逆にさっきまでの雰囲気はどこいったんだよ。」

 彼は呆れながらグラスをテーブルに置いた。

「……え、あそこじゃ、やだって言ったの澄じゃん。」

「そういうことじゃなくって……。」

 確かに私はのぼせる気がして、熱いから出ると言い、身体をささっと拭いて、澄を置いてベッドルームにきてしまった。ただ熱かったのはお風呂のせいだけではなく、だんだんと全体的な自分の行動が急に恥ずかしくなったからというのもある。

「私、髪の毛、乾かしてくる!」

「どーぞ。」

 彼はつっこむのも嫌になったのか、淡々とそう返事をした。私はスタスタまた洗面台に戻り、ドライヤーで髪を乾かし始めた。揺れる髪の毛を見ながら、鏡の中の自分を見つめた。なんとなく顔が火照ってるのは、絶対にお風呂の熱だけではない。私はふーっと息をゆっくり吐き、深呼吸を何回かした。そしてドライヤーを止めて、ゆっくりとベッドルームを盗み見た。彼はグラスの水を飲み干して、ベッドに横たわっていた。私は洗面台で髪を櫛でとかし、整えてからパタパタとスリッパの音を出しながら彼の近くにいった。

「……水、まだいる?」

「俺はいい……。」

「そっか……。」

 私は彼の近くに腰掛けて、彼の頭をなでなでした。

「今度は頭……。」

「いいじゃん、あ、私が乾かしてあげようか?」

「………………お願いします。」

 私はぴょんっとベッドからおり、洗面台からドライヤーを持ってきた。

「じゃあ、こちらに腰掛けていただいて。」

「……うす。」

 私は澄の髪の毛を触りながら、ドライヤーで髪の毛を乾かし始めた。彼の髪は細くて、黒くて、さらさらだった。そして短髪な彼の髪はあっという間に乾いてしまった。

「髪の毛短いと早くていいよねー。私も切っちゃおうかな。」

「もったいくね?」

「そうかな~?いっそベリーショートとかしてみたいかも。」

「…………いや、ロングでいたら?」

「…………………………ロングが好きなんだ?」

 私が後ろから覗き込むようにそう聞いてみると、私がいるのとは反対側に顔を向けて黙っていた。

「……へぇ……知らなかった。」

「別にロングがどうこうって訳じゃない。」

「なんで?いいじゃん。好みなんでしょ。」

「ちがう、本当にそういうことじゃない。」

「なんでー、照れなくてもいいじゃーん。」

 私は彼の背中をツンツンしながらそう言った瞬間、振り向き様に押し倒された。

「……えっ、……そんなに嫌だった?」

「…………………………式…………………挙げる時……………………困る……んじゃねぇかと思っただけ……。」

「へ?」

 私はきょとんとしながら彼を見つめていると、気まずそうに目を背けた。

「……わり……忘れて。」

「……………澄の口からそんなこと出るんだね…………。」

 私は嬉しくて微笑みながらそう返した。

「……意外ですみませんね。」

「ふふ、ドレスは一緒に選んでくれるの?」

「いや姉貴と行ってくれ、もしくは仁美さん達と……絶対どれも一緒に見えるから。」

「えぇ~、つまんないの~。」

 私はそうブーイングをしていると彼の顔がゆっくりと私の顔に近づき、ゆっくりと私の唇に触れた。

「…………澄、部屋、暗くして?」

 彼は何も言わず、ドライヤーを洗面所に置いてきてからベッドの近くの間接照明だけに切り替えた。そして私の横にゆっくりと寝転んだ。

「……離れるまであとちょっとだな……。」

「そうだね。」

「…………香奈?」

「なに?」

「……………………ごめん。」

 私はまさかの一言に反応できなくて固まってしまった。

「……え………………なんで。」

「俺のことをいつも優先してくれてること……感謝もしてる………………ありがとう。」

「………………。」

「…………離れてても…………………付き合っててくれる?」

「……………なにそれ…………あた…………。」

 私が返事をする前に彼が待ってと手で制した。

「いや、違うな………。」

「…………?」

「待ってて。」

「…………………………。」

「絶対に待っててほしい。色んな意味で。」

「………………もう…………結局プロポーズしてない?」

「……………………これ、そうなんの?」

 私と彼はしばらく沈黙の中、見つめ合うと可笑しくなってケラケラ笑った。

「もー、待ってるから安心して優勝してきなさいよ。」

「……はい。」

「決勝進出決まったら沖縄でも絶対にいくからね。」

「はは、頑張るわ。」

 私は自分の拳を彼の前に出すと、彼もコツンと拳をぶつけてきた。私はそれにふふっと笑っていると彼の手が握りしめた拳から、優しく手のひらが広がり、私の頬に置かれた。

「…………澄?」

「ん、なに?」

「…………………………しないの?」

「したいの?」

「……うん、だって……。」

「?」

「ちゃんと澄のこと、感じて忘れないようにしたい。」

「うーわ、そうきたかーーっ。」

 彼はそう言うとごろんとあっちを向いて背中をむけた。

「……なに?違った?」

「…………煽り上手だよなぁ……。」

「…そっちがわざと聞いてくるからでしょ?」

「俺のせいにすんなよ。」

「澄は……?」

 私の質問を聞くと、ゆっくりこちらに身体を向けて、手を伸ばし、私の唇に触れた。

「同意に決まってんだろ。」

 そう言いながら彼は私の口にキスをした。

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