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七十三、久々の姉弟時間

「では、では、お世話になりましたぁ~。」

 玄関でお姉さんは私に深々とお辞儀をしながらそう言ってきたので、私はとんでもないですと慌てて、両手を大きく横にふった。突然の3人での生活だったが、フランクに接してくれたお姉さんとの生活はあっという間で私は苦もなく楽しく過ごせた。そんな中、澄は車の鍵を手に持ち、靴を履き終わると、お姉さんのほうに身体を向けて、腕組みしながら仁王立ちをした。

「違うだろ、すんげぇお世話しました……だわ。」

 澄が何食わぬ顔でハッキリそう返すと、お姉さんは彼の肩をパンパン叩きながら最後なんだから愛想よくしてよと言い返していた。

「香奈ちゃんはこれから仕事なんだよね?最後にどっかでランチしたかったな~。」

 お姉さんはそう言いながら身体をくねくねして、とても残念な顔をしていた。

「そうですよね、すみません、、、どうしても今日は出勤しないといけなくて……。」

 本当は初めのシフトでは休みだったのだが、体調不良のスタッフが出てしまい、シフトをその人と急遽変わることになってしまった。なので私はここでお見送りをして出勤、澄は駅まで車で送ることになった。

「ま、仕事は大事だからね~!また帰国したら付き合ってくれる?」

「ぜひ!日本でワインバル巡りでもいいですよ。」

「わぁ、いいね、その時は女子2人ね!どうせとおちゃんが一緒にいても、意味ないしね~。」

「………………飲んだくれ。」

「はーい、うるさい、うるさい。」

 澄の言葉を適当にあしらいお姉さんはニコニコしながら、私の両手を手にとり約束ねと優しく言ってくれた。

「あと、とおちゃんと離ればなれになっても、よろしくお願いね?絶対に……ぜっーたいに、こまめに連絡できない男だけど、飽きずに捨てないでほしいです!」

「だから余計なお世話だっつてんだろ。」

「あはは……でも私もこれから経験積むのに色んな店舗行ったりして、私も連絡こまめにできるかわからないですし……それに澄君には私も、ぜひリーグ優勝してほしいので……あっちで今以上に頑張ってほしいです。」

「……はぁ…………。」

「……?」

「香奈ちゃん…って、なんでそんなできた女なの!?」

「おわっ!!」

 お姉さんは急に私の手を引っ張り、私を抱き締めながら頭をなでなでしてくれた。

「……おい、出勤前なんだからそれくらいにしろよ。」

「は!そうだった!ごめん、ごめん。じゃあ、またね。」

「はい、お気をつけて、澄は安全運転でね。」

「……わかってるよ。」

 澄は私の頭をポンポンすると行ってきますと行って彼はお姉さんの荷物を持った。


 ――――――――――――――――――


「はぁ~~~、香奈ちゃんのご飯おいしかったな~。」

 姉貴は車の窓から入る風に髪の毛を揺らされながらそう呟いた。

「遠慮なしに食い過ぎだろ…。」

 俺は運転中なので顔は正面を向けながら答えた。

「えー、せっかく作ってくれてるのに食べないなんて失礼じゃん。」

「酒も毎晩のように誘いやがって。」

「もうさ~、うるさーい、誰かと飲んだほうが美味しいんだから!」

「旦那も毎晩大変だろうな……。」

 俺は赤信号でブレーキをかけた後、やれやれと片手をヒラヒラさせた。

「っていうか、とおちゃん、彼女できたって報告してよ!いきなりなんてびっくりするじゃん、しかもあんな美人!」

「ちげーよ、逆だわ逆、いきなりノーアポでくんなよ。あと、日付間違えるのやめろ。」

「しょうがないじゃん、時差もあるんだから!」

「はぁ、それでよく飛行機の時間間違えないよな……。」

 姉の毎回の行動が不思議でしょうがない。こっちにくると毎回日時がずれるのに、ちゃんとフライトに合わせられのは逆に謎すぎる。

「…………………………で、いつすんの?」

「なにが?」

「プロポーズに決まってんじゃん!」

 俺はまたその話と呆れながら、青信号になったので車をまた走らせた。

「なんで姉貴に気にされなきゃなんねぇだよ。」

「あんた……遠距離で別れるカップル、7割くらいが3年以内なの知らないでしょ……?」

「……………………。」

「大体初めてできた彼女で、女の扱い初心者さんの癖に……遠距離でハードルあげてどうすんのよ。」

「…………しょうがないだろ……お互い大事な時期だったんだから……。」

「…………別れる選択はなかったんだ……?」

「……は?」

 俺はまさかの言葉に耳を疑った。あんなにさっきのさっきまでプロポーズしろだの言ってたくせに……。

「どっちなんだよ……。」

「とおちゃんはいつも優先順位高いほうにスパッと決めちゃうじゃん。取捨選択が早いっていうか……一番大事なのだけにするじゃん。」

「……………………。」

「今回は違う……っていうか、決められなかったの?」

「両方大事だった。」

「めっちゃ、即答。」

 姉貴の顔は見れなかったが、声の感じは驚いてる様子だった。

「…………初めて、手離したくないって思ったし、たぶんこの先あの人以上に好きになる人はいねぇ。」

「なに、すごいハッキリ答えるじゃん。」

「………………ちょっとわかった。」

「なにがよ?」

「………………姉貴の……………その………愛おしいって…………やつ?」

 さすがに言葉にするのは恥ずかしいなと思い、ちょっと咳払いしてごまかしぎみに俺はそう言った。

「とおちゃん……。」

「……んだよ。」

「尚更なんでしないのよっ!!!プロポーズ!」

「わっ!やめろっ!事故るだろっ!」

 姉貴は隣でわーわー文句を言いながら、俺の腕を引っ張ってきたので、ハンドルをより強く握りしめた。

(移籍前に事故とかで、契約切られる可能性だってあるだろばかっ!)

「んもーーーっ!とおちゃんって、本当に能天気!バスケ以外は、全然だめ男なんだから、顔にだけ栄養いってんじゃない!?」

「……道端に置いてくぞ。」

「言いすぎました、ごめんなさい。」

「…………………はぁ…………………来年……くらいにはするから。」

「……っ!」

 俺の返事に姉貴は満足そうに結婚式はイタリアでもいいよとご機嫌そうに言ってきたので、あっちに聞いてくれと適当に流した。 

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