六十五、3人の晩酌
「わぁ~~、準備ありがとうね。」
「あ、いえ、ほとんどいただいたものを並べただけなはので、、、あのワインまだ冷えてないのでビール飲みます?」
「飲むーっ!とおちゃんも、今日は一杯くらい付き合ってよ?」
「…………はぁ、めんどくせ~。」
「わたし!わたし、わりと飲めるので付き合います!」
「のものもーっ!」
私はあえて澄のグラスだけ小さいのにして、各々のグラスにビールを注いだ。お姉さんは嬉しそうにかんぱーいと言ってグラスをこちらに寄せたので、私も慌ててグラスを前に出して乾杯した。澄は軽く上にあげて、呆れながら一口飲んだ。
「おいしーっ!やっぱ、日本のビール美味しい!」
「あちらではビールのまないんですか?」
「ダン……あ、旦那ね、ワインが好きだから、一緒に晩酌なるってなるとワインばっかなんだ。」
「へー、そうなんですね。」
「そうそう……わっ、チーズケーキ美味しい!」
「あ、良かったです、私も生ハムとか美味しいです。」
「良かったぁ~。一人で飲むお酒よりこういうほうが楽しいからね。」
「一人でもいつも楽しく飲んでんだろ。」
「はい、そこうるさーーい。」
私は思わず二人のやりとりを見てクスクス笑ってしまった。
「なに、笑ってんだよ。」
「……あ、や、だって、澄が高校生男子みたいで、なんか弟感?強く感じるのが珍しくて……。」
「はっ!?」
「ずーーーーっと、バスケばっかしてるからじゃない、とおちゃん?」
そう言うと、お姉さんは生ハムを美味しそうに頬張った。
「……はぁ、もうやだ、姉貴、早くイタリア帰れよ。」
「ねぇねぇ、香奈ちゃんって、明日はお休み?」
お姉さんは澄の言葉をガン無視して、私に話しかけてきた。
「…………え、あ、休みです。」
「あっちの友達に頼まれたお土産買いに行きたいんだけど、付き合ってくれないかな~?なんか、女子に人気のお店みたいなんだけどわかる?これ。」
私は差し出された携帯の画面を除くと、それはさっき私達が飲んでいた紅茶のお店だった。
「あ、私、この間行きました!」
「ほんと!?なんか、ここの日本茶は日本限定らしくて、飲んでみたいだって~、連れてってくれない?」
私はどうしようかなと澄のほうをちらっと見た。明日は澄にドライブでも行こうかと言われていたので、私の独断で返答する訳にはいかなかった。
「………………はぁ、俺も行く。」
「えー、とおちゃんも付いてきてくれるの?」
「どうせ、他にも買って、辛くなって、荷物持てなくて呼びだされる気がするから一緒に行く。」
「やっさしー、いつも来てくれないくせに。」
「…………え、そうなんですか?」
「うん、そうだよー、行くのめんどくせぇからタクシー代渡すわって言ってさ。」
「そうですか……。」
私はいつもわりと率先して送り迎えをしてくれてる彼を知っているので、普段からそういうとこは律儀な人なのかと思っていた。私が心の中で不思議そうにしているとそれを感じ取ったのか、私がお姉さんを見るとすごくニヤニヤしてこちらを見ていた。
「……違うんだ、香奈ちゃんには?」
「……っ!」
私はアルコールが入ってるからか余計に顔が熱くなった。
「あは、可愛い……香奈ちゃんって、とおちゃんのどこが好きなの~?」
「え!!」
「見ため?たしかに顔だけはイケメンだよな~。」
「え!いや、確かにカッコいいですけど、見ために惹かれた訳じゃなくて、一緒にいて、中身?のが好きになったので…………。」
私は途中でハッと2人の視線が集まってるのに気付き止まった。
「…………続き、話してくんねぇの?」
彼は少しだけ微笑みながら私が続きを話すだすのを待っていた。それを見て正面に座ってるお姉さんも同じようにニコニコして待っていた。両方を交互に見たら口角の上がりかたが二人ともそっくりだった。
「~~~~~っ秘密です!」
「えー、聞きたかったのにぃ~。」
「つまんねーの。」
「み、光秋さんは?旦那さんのどこが好きで結婚されたんですか?」
「わたし?……うぅーん、何だろう……聞かれると難しいけど…………あ、そうだな。」
「はい。」
「愛おしかったから。」
「……………………愛おしかっ…………た?」
「うん……もちろん、初めは優しいなとか、ご飯上手だなとか普通だったんだけど……ふと、あぁ好きっていうよりダメなとこも含めて、愛おしいって思った。」
「……………………。」
「だから、今でも付いていったことは後悔してない!」
「…………素敵です……女性としてもかっこいいです。」
「ほんとー?!嬉しいな~、香奈ちゃんはいつ結婚するの?とおちゃんと。」
「ぶっ!……げほ、ケホ!……え!?」
私はお姉さんのその発言に思わず、飲んだビールが変なとこに入ってしまった。
「え?結婚するから同棲してるんじゃないの?」
「違う、俺これから沖縄に移籍するからその間だけ。」
「は?なにそれ。」
「あ、あの、私が、まだ就職したばかりで、色々タイミング的にも…………ちょっと……まだ。」
「そっか、そっか、さすがにそれは……ね、ってか、とおちゃんタイミング悪すぎ。」
「しょうがねぇだろ、こればっかは。」
「そう……だけど……。」
「………………あ!わ、ワイン冷えましたかね?私、持ってきましょうか?」
私はなんとなく少しだけ空気が変わってしまった気がするので、話題を変えてみた。
「んー…ビール、とおちゃん買ってきて?」
「は?やだ。」
「あ、じゃあ、わたし――――――。」
『絶対ちがうから。』
ほぼ同時に二人からそう言われたので、私は静かにはいと小声で返事をして軽く上げた腰を下ろしそこに座った。
「………………はぁ、ダルい……何本?」
「私が飲んじゃった分も含めて、6本かな、はい、お金!おつりはいらないから。」
「当たり前だわ………………姉貴?」
「ん?」
「俺の彼女にあんまわがまま言うなよ。」
「わーってる、いってら。」
「……はぁ、香奈も何でも引き受けないで、いい?」
「………………はぃ。」
私が返事をするとリビングの部屋を出て、自室で準備を終わらせ、玄関から外に出る音がした。
「…………よーし、邪魔者いなくなった!」
「………………え?」
「香奈ちゃん、正直に答えてもらうよ……?」




