二十七、思い出の更新
高速道路が想像より空いてたので、私達は予定時刻より早く着いた。サービスエリアはお昼時だったので、沢山の人で賑やかだった。どこかに遠出しなくても、ここにいるだけで少しテンションが上がるのは何か心理的現象なのかな。私は車を降りるとわぁーっと言いながらその場をキョロキョロした。大学で一人暮らしを始めたのもあって、旅行に行くとしても電車や新幹線で行ける範囲しか行動してなかったので、久しぶりの空間にさらにワクワクしてしまう。車の反対側からキャップ、サングラス、マスクの完全装備の神山が降りてきた。
「……今日やたらと完全装備だね?」
「そりゃそうでしょ。」
「……なんで?」
「香奈さんとの時間、邪魔されるの嫌っすもん。」
「…………く、またしても心の臓がっ!」
「…………たまにでるそれ、アニメか何かのキャラっすか?」
「んー、気にしないで……さぁ、行こう!」
私は神山の手を掴み、お店が並ぶ所に引っ張っていった。お店はどこも活気に溢れていた。右から串焼き、アメリカンドック、ベビーカステラと色取り取りの店が並んでいた。
「ねぇ、何にするか、っ……。」
私は大きい声で神山と言おうとして、途中で口をつぐんだ。やはり世間で呼ばれるのは名字が多いはず、せっかく彼が身バレ防止策をしているのに、ここで私が名前を呼びまくったら意味がなくなってしまう……。
「……か、か、かみ……くら?とか?」
「…………何故に偽名。」
「だっ、だってバレないようにするって……」
私は彼の顔の近くに手を添えてこそこそ言った。
「そうっすけど……他にありません?」
「他に……。」
「だから、、そろそろ……名字やめません?」
「……えぇ!いきなり?」
「だって付き合って、もう大分経ってますけど……。」
「ま、まぁ、確かに。」
「なんなら、そろそろ敬語もやめたい。」
「それは全然……どうぞ。」
「じゃあ、はい。まず練習。」
彼はそう言うと、私に自分の耳を少しかがんで近付けてきた。
「………き、急に?!」
「はい。」
彼はさらに耳を近付けてきた。
「~~~っ。」
「ん、ほら。」
私は少し背伸びをして彼に近付いた。
「と、とおる……。」
「聞こえない。」
「え、、っとおる!」
「はい、言えたじゃん。」
彼はクスクス笑いながら、頭をポンポンしてきた。最近弄ばれてるような気がするのは私だけなのかなと思いながら、撫でられた頭を自分でも触った。
「か、……んんっ、とおるってさ。」
「なに?」
「……頭触るの、好きだね?」
「そうかな?……無意識だな。」
「うん、よく触るよ……?」
「ふぅん……あぁ、あれじゃん?」
彼は何かを思いついたように、今度は自分が私の耳元に近付いてきた。
「香奈……が嬉しそうだから。」
「…………はぃ?!」
「あはは、やば、何その反応っ。」
私は目の前のいたずらっ子の背中をポカポカ叩いた。彼はいてぇと言いながら反省もせず前を歩き始めた。
それから各々食べたいのを買い、時にはお互いの食べ物を交換しながら楽しんだ。しばらく歩いていると、さっき車内で話していたソフトクリームのお店が見えてきた。私はさっそく看板を見ながら悩み始めた。
「うぅん、バニラ、キャラメル、限定のアーモンドミルク……強者ぞろいだなぁ。」
「ゲームのキャラじゃないんだから。」
「むー、じゃあ何味にするの?」
「バニラ。」
「うわ、無難な男だな、チャレンジ精神あれよ。」
「……早く、選べよ。」
私は限定に弱い自分に勝てず、アーモンドミルクにした。彼は買って持ってくからそこに座っててと、私にベンチをすすめてきたので素直に従った。遠くから彼を眺めながら待っていると、何故か店員さんに手を振りながら首も振っていた。私は注文間違えられたかなと思いながら、様子を見ていると、紙らしき物とペンを受け取って何かを書いていた。しばらくするとペコペコお辞儀して、ソフトクリームを受け取りこちらに来た。
「……どうしたの?」
「バレた。」
「え、やば。大丈夫だった?」
「プライベートだからって写真は断って、サインだけしてきた……俺はいいけど香奈さんの写真はまずいから、車行こっか。」
「わかった。」
私達は車に足早に向かい、車内の座席で一緒に食べ始めた。
「んー、うまっ!」
「さーせん、早めに切り上げる感じになって……。」
「ん?気にしてないよ?」
「…………。」
「もう忘れたの?」
「何が……?」
「神山が迷惑じゃないなら平気って言ったでしょ?」
「………言った。」
「ほら、冬といえど溶けるよ?食べな。」
「……ん、うま。」
「ね?……あ、一口ちょうだい。」
「どうぞ。」
私は神山のソフトクリームを一口もらった。バニラも濃厚で美味しかった。そしてそのままソフトクリームを食べ続け、最後の一口を頬張った。
「ふふ、幸せ~。」
「どんだけソフトクリーム好きなの?」
「はぁ~?分かってないね、神山君。」
私はさっきみたいに探偵風に話しかけた。彼はまたそのキャラだすのって顔をしていた。
「……澄と一緒に出掛けられたら幸せなの!」
「…………。」
「こうやって、思い出って更新されてくんだね。」
「…………。」
「私トイレと温かい飲み物買ってくる!ソフトクリーム買ってもらっちゃったから澄の分も買ってくるね!」
「…………うん。」
私は車を降りて自動販売機に向かった。
「…………そっちも忘れてんじゃん。あんまり、可愛いこと言うなって言ったのに…………はぁ。」
――――――――――――
私達はサービスエリアを後にして私の自宅方面に戻ろうと車を走らせていた。
「やっぱ暗くなるの早いね~。」
「そうだね。」
「今度はどれくらい合宿行くの?」
「3週間。」
「そっかぁ……。」
「ちょっと遠回りしていい?」
「ん?うん、いいけど……どこ行くの?」
「サービスエリア。」
「え、また?」
「うん。」
私はトイレ休憩かなと思いながら返事をした。明日から彼はまたハードなスケジュールなのだから、早めに解散しないといけない。私はナビの時間をチラッと確認すると夕方の5時45分と表示されていた。
(この時間なら7時には解散できそうかな……。)
「ずっと運転してるけど、疲れてない?」
「あぁ、平気。」
「そう。」
「…………。」
「…………。」
「香奈さん、眠いんでしょ……?」
「う、、、眠く……ない。」
「うそじゃん、寝れば?どうせ、まだ着かないし。」
「えぇ……が、頑張……る。」
「倒すよ。」
そう言うと、彼はボタンを押して私の座席を倒した。
「……寝ちゃう……よ?」
「だから寝なって。」
「…………。」
「寝るのはや、、。」




