偶然?
「白雪さんなんでここに?」
俺が口を開くよりも早く渚が質問をした
「コーヒーでも飲もうかなって思って入ったら二人がいたからさどうしたのかなって思って」
俺は美鈴が嘘をついているとわかった
だって美鈴はコーヒーが飲めない
それにそもそもこういうお店に来るようなタイプではないと知っている
ならつけられていたのだろうか?
なんて俺には質問することができなかった
「それより、どうしたの?顔色悪いよ?」
美鈴は明らかにいつもの学校でいるときと雰囲気の違う渚に質問をした
話をすり替えたかった意味もあるのかもしれない
「えっと、その、」
渚と美鈴は面識があまりない
そんな人に話しても良いか迷っているのだろう
「美鈴はいいやつだから相談したらしっかり答えてくれると思うけど無理にとは言わないよ」
美鈴が私トイレ行って来るね〜と席をたった隙に渚にそうアドバイスをした
「湊くんのお墨付きなら」
そう言いながら無理やり笑おうとしている渚を見て胸が少し痛くなる
「たっだいま〜」
努めて明るく振る舞っているのがわかる
美鈴の空気を読む力はすごい
「それでなんの話してたの?」
努めて明るくできるだけ相手に怖い印象を与えないように美鈴が質問をした
「あの、」
渚は美鈴にこのことを話すと決心したらしい
「私、彼氏から暴力みたいなのを受けていて」
「?」
美鈴が不思議そうな顔をする
多分暴力みたいなのところで引っかかったのだろう
俺も引っかかった
だって話を聞いて渚の腕を見た限りではみたいではなく明らかに暴力だった
それなのに濁している美鈴にはどういう意図があるのだろうか
「暴力みたいなのを受け始めた原因って何かあるの?」
ゆっくりと優しく美鈴が聞いている
「えっと、その、」
うん、うん、と頷きながら美鈴が言う
「ゆっくりで大丈夫だよ、どれだけ時間がかかっても良いからね」
美鈴は渚の手を優しく握った
「ありがとうございます、こんな私に優しくしてくれて」
「だってもう友達でしょ?」
「友達、はい!ありがとうございます!」
渚はそう言うとまだ目尻に少し涙を残した顔で微笑んだ
美鈴の言葉で渚の顔に少し明かりが灯ったような気がした




