ぐしゃぐしゃな感情
「遅れてごめんなさい」
渚は来て早々に俺に頭を下げた
「別に待ってないよ俺も今来たとこ」
俺はそう言って注文していたコーヒーを啜った
「…」
少しの間沈黙が流れた
店内は大人や高校生いろいろな人たちがおりどこの席も賑わっている
俺達の席だけ周りから浮いていたと思う
「それで、今日はどうしたの?」
沈黙が続き渚は俯いている
流石にそろそろ話を始めなくてはと思い声を出す
「彼のことで相談があって、」
やっぱり
そうだと思った
だから来たくなかった
そういう感情になんとか蓋をして平然を装って続けた
「あの先輩?なにかあったの?」
もちろん心の中はモヤモヤしている
だけど相手に知られてはいけない
なぜだか俺はそう思った
「先輩が付き合った次の日から、その、あの、」
渚の言葉が詰まっている
ここではあまり言いたくないことなのだろうか
少し嫌な予感がした
「大丈夫?言いたくないなら言わなくても良いよ」
柄にもないことを言っている自分に嫌気が指した
やっぱり俺は渚に良く見られたいんだなと理解して自分が嫌になる
「私から相談したので言います」
渚は一呼吸置くとこう言った
「あの日から先輩に体の関係を迫られてて、」
渚はそう言うと来ている服の袖俺に見せつけるように捲った
「えっ、これって」
目の前には数か所青く色の変わった渚の腕があった
「嫌だって断るとそのたびに叩かれて、」
目の前の渚は目から大粒の涙をこぼし始めた
「そっか、」
言葉が詰まってしまう
俺には他人事のような返事しか返すことができなかった
実はさっきまで俺と付き合わなかったの見返すことができた〜なんて今考えるとおかしいことを頭で思っていた
だけど実際は予想よりもっとひどく目の前にいるのは彼氏から暴力を受けて傷ついているか弱い女の子だった
「辛かったね、相談してくれてありがとう」
やっぱり俺の言葉は他人事で何処かで聞いた言葉の詰め合わせでしかなかった
「私どうしたらいいんでしょうか」
別れたらいいんじゃないかな?
そう言うのは簡単だ
だけど相手が求めている答えは違うんじゃないか
そう考えてしまうと返す言葉が見つからない
「とりあえず涙ふこ?」
俺はそう言ってポケットから取り出したハンカチを渚に渡した
「ありがとう、やっぱり湊くんは優しいね」
渚は目尻に涙を残しながら微笑みそう言った
その渚のセリフを聞いた途端さっきまでとは全然違う気持ちが俺の中に湧いてきた
あの先輩に対する怒りとも憎しみともつかないような感情が俺の中に湧いてきた
「あのさ、渚、」
俺が言葉を綴ろうとしていると隣から知っている声が聞こえてくる
「あれ?湊と鈴城さん偶然だね〜どうしたの?なにか真剣な話?」
絶対に偶然じゃないタイミングで美鈴が来た




