2.カインside
僕には可愛くて可愛くてたくさん愛をくれる婚約者がいる。
それはもう僕の心が満たされるほどに愛をくれる。
出会いは舞踏会でエレナが先に僕に声をかけてきてくれた。
正直、最初は他の令嬢のように僕の家柄と外見だけで好意を示してるだけにしか見えなかった。
でもエレナだけは何度もめげずに話しかけてくる。そして僕が笑うとすごく嬉しそうな顔を向けてくるのだ。
エレナの好意を流しているのに何度も何度もカイン様カイン様と近づいてきてくれる君はいつしか僕の心を満たしてくれていることに気がついた。
昔から僕は家族から厳しく育てられ褒められることはなかった。だから誰でもいいから僕自身を愛してほしかった。上辺じゃなくて心からの愛がほしかった。
それでも周りの令嬢からの好意を本当に信じることはできなくて、どうせ僕がこの家に生まれてなかったらこの令嬢たちは僕になんか興味ないんだろうなという気持ちでしか接することができず余計に愛に飢えてしまった。
そんな時エレナが現れた。
きっとエレナなら一生僕の心を満たしてくれる。
そう思って婚約してというエレナに頷いた。
婚約してからは本当にエレナは僕の心を満たしてくれた。
特に、他の令嬢が僕に近づくと嫉妬してくれてすごく愛されてるなと感じた。
だけどある日
「実はクラベェル嬢から美術館に行こうと何度も言われていて………一度行ってきてもいいだろうか?」
いつもなら言われていてくらいのところでだめっと言ってくれるのに今日は様子が違った。
エレナがまた嫉妬してくれると思ったら嬉しくて顔に出てたかな?エレナを試してるのがバレてしまったか?
そう思ったのに予想もしない答えが返ってきた。
「あの方ならカイン様にすごくお似合いかと思います。カイン様どうか幸せになってください。」
一瞬何を言われているのか理解できなかった。
そして理解したときには身体から血の気が引くのを感じた。
「エレナっ!ちがうんだっ!待って!!!」
去っていく彼女を止めようとしたがもう遅かった。
彼女が去ってしまった部屋でなんてことをしてしまったんだと後悔してももう遅い。
生まれて初めてなんて大きなものを失ってしまったんだろうとこれまでの自分の行動を悔やんだ。
でもエレナにもらったたくさんの愛が忘れられない。どうして同じだけ返してあげなかったんだろう。
これだけのことをしておいてそれでも諦めきれなかった。
クラベェル嬢には自分で断りの手紙書いた。
心から愛している人がいるから行けないと。
そしてエレナの住む屋敷にきた。
使用人たちもきっと僕らが何かあったんだろうと気づいていて、血相を変えた僕を見て屋敷に入れてくれた。
今頃エレナは部屋にいると聞いてエレナの部屋に向かう。
そしたら泣き腫らしたエレナと目が合った。
エレナは逃げようとしたけど、今逃したらきっともうチャンスはないのはわかっている。何としてでも繋ぎ止める。
部屋に入ろうとするエレナを追って、なんとか扉を開けエレナに近づこうとするとエレナは後退りする。
そんな姿に胸が酷く痛む。
「なんでここに……。」
僕を見る目がいつもの愛で溢れる目じゃなくて悲しくなった。もう一度好きになってという気持ちでエレナを抱きしめる。
「なんで、なんでいつもみたいにだめって言ってくれないの?
もう俺に飽きちゃったの?
こんな気を引くようなことばかりするから嫌になった?」
また逃げようとするエレナを逃がさまいと強く抱きしめる。
もういつもの自分じゃないのは自分でもわかる。
「逃げちゃだめ。
俺がクラベェル嬢のところに行っても本当にいいの?
ねぇ、
………いつもみたいに引き止めてよ。」
お願い。間に合って。
「うぅ、行っちゃやだ。」
エレナが泣きながらそう言ってくれた。嬉しくてまた抱きしめる力を強めてしまう。
「俺のこと一生繋ぎとめててよ。好きだって、どこにも行かないでって何回も言って。」
「はい。カイン様は私のです。」
ああ、本当にエレナが大好きだ。
そう思うといつもの触れるだけのキスじゃ足りなくて自分の気持ちをぶつけるようにエレナにキスをした。
◇◇◇
エレナが冷静になって、こんな婚約者は嫌だとか言われないか冷や冷やした僕は次の日もエレナの家にきて笑顔を見せてくれたエレナに安心した。
「もうカイン様ったらいつも私を試していたんですか?」
「ごめんね。だって毎回だめって言ってくれるエレナが可愛くてどんな言葉よりも愛されてるなって実感できるんだもん。」
なんてだめな男なんだと自分でも思うが、エレナには本当の気持ちを言う。
「私だってカイン様に愛されてるって実感したかったんですよ?」
「ふふ大好きぃ。」
こんな僕に愛されたいと思うなんて本当にエレナは愛おしい。そして大好きだと言うと顔を赤くさせて可愛い表情をみせてくれるエレナを見て心が満たされていることに気が付いた。
ああ、これからは毎日エレナに愛を囁こう。
[完]