第八話【七年後の再会】
「ディークって…、貴方、ディークっていうの?」
先刻まで居間だという部屋で寝ていた筈の女は自分が家に帰ってきたのを待構えてたのか、玄関のドアをガララッと音を立てて開けてある程度部屋の中を見渡せるなという幅になった時、そう声を掛けてきた。
「………久し振り。好い女になったな」
「……何で…っ!」
女は顔を俯かせ、両脇にダランと垂らした両手に拳を作り、ブルブルと小刻みに震わせている。怒りや、驚きといった感情を表した其の反応に、ディークは背筋にゾクゾクと妙な感覚に襲われた。
唇が乾いた感覚に襲われ、舌なめずりをする。履いていた靴を乱暴に脱ぎ、ギィと音を鳴らし、ゆっくり女に近付いていく。
男の気配を感じ、女が顔を上げると目の前には無表情で此方を見下ろすディークと目が合った。紅い双眼からは全く感情が読めず、女は恐怖を覚える。其れは、あの時と同じ、恐怖だった。
「……っぁ」
「何、変な声出してんの?…まぁ、好いけど。其れより、」
ディークは一呼吸置いて、ついさっきまであった経緯を簡潔に述べると、「そーゆう事だから、御前も保護者な」と言い、通り過ぎて部屋の奥へと向っていった。
「……え…?」
其処でハッと我に返った女は、ディークが語った話を思い出し、顔を一気に蒼褪めさせた。
「そーゆう事って……、ちょっと待ってッ!!」
女は、ディークが消えていった方へ急いで向う。
「廊下を走るな!」と両親や周りの大人に叱られてはいたが、生憎、今は注意する者達は不在な為、女はそんな注意する大人達の顔を一瞬脳裏に過ったが、直ぐに其れは消えた。
そんな小さな事等気にしてられなかった。
「冗談じゃないわ!何で…、よりによって……ッ」
何でこうなってしまったのか。そう思い出そうにも、思考は上手く回っていないのか思い出される記憶はあやふやで、なんか疲れてきた。体力、精神力、双方ともに。
唯一つ理解る事。
其れは、此れから憎たらしい野郎と、一つ屋根の下で共同生活を送るという事だった。
☆★☆
「あ」
「お姉さん、気が付いたのね」
中から人の気配を感じ、襖を開けた。視界に入ったのは、顔が瓜二つの少年と少女。打ち合せでもしたのかと訊きたくなる、少年の言葉の続きを少女が言う。女は、緊張して強張っていた体の力を抜き、クスクスと笑った。
「……なーに笑ってんのよ?何?嫌味?」
「うんん、なんかね、微笑ましい光景だなぁ、って」
「……さっきも言ったと思うけど、子供扱いしないでッ!!」
「あ…御免なさい……っ」
シュンとなる女に、此の侭じゃアレだなと思ったウサギは、話題を変えようと彼女の名前を訊いた。
「…え?あー、そういやまだ、名乗って無かったわねぇ。私、エンジュっていうの」
「エンジュ?なんか、外人みたいな名前ねぇ」
「おいアリス!御前、言葉遣いには気を付けろってあれ程…」
「何よウサギ、文句でもあんの?アンタ、そんな爺臭い事ばっか言ってるからモテないのよ。今時の男子は、ほら。来る者拒まず、去る者追わず。そんな身勝手で、でも大人で、みたいな奴になりなさいッ!」
「居ねぇーよ!そんな奴!!っつか、なれるかアァァァ!!今時はロールキャベツ男子だろうが!…あれ?其れ、一昔前だっけ?あれ?」
「アハハハハ!アンタって、ホント流行に乗れないわよねぇ。其れよ。モテない最大の理由!」
「大きな御世話です!……ハァ…なんか、めんどくさぁ」
「私と相手するのがめんどくさいってか?めんどくさいってか?!あぁん?」
少年と少女が応酬を繰り広げてる横で会話に入っていけないエンジュは、如何しようかと目を彷徨わせると一点を視界に捉え、ソレに近寄った。男は顔を上げ、何?といった感じで、エンジュを見た。
「……貴方の言う通りにするのは癪だけど、でも、あの子達の事は心配だし、其れに…」
「帰りたくても、帰れないんだろ?羽を上手く使いこなせてないから」
「!…っ。えぇ、そうよ。不本意ながら、ね。……其れより、保護者って、何すれば好いの?」
エンジュの其の一言に、ディークは「あ…」と声を洩らし彼女から視線を外すと、未だに口喧嘩をしてる双子を見た。
後書き
御久し振りです。。一応、元気です
馬鹿は風邪引かないとよく言いますが、夏風邪は馬鹿が引くという言葉もありまして、あれ?あったっけ?あったよね?
楽十は風邪を引きました((どんだけ弱ぇんだよ御前
集中力が唯でさえ無いのに風邪のせいで更にダウン…
更新したくても出来ず。。((はい!言い訳タイム終了ォォォォォ!!
さて、話を元に戻しますが((戻すも何も、さっきまで自分の近況報告してただけじゃねぇか!
とうとう女からエンジュという名前が出せました!いやー長かった、長かった\(^o^)/バンザーイ!バンザーイ!((喜び過ぎじゃね?
次からは、エンジュママとディークパパの絡みを多くしたいなぁと思ってます((まだ私、ママじゃないわ!!Byエンジュ
初出【2012年7月8日】