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第六話【七年後の再会】

私は天使という種族ではあるが、皆が思う様な事をするかというと、全く違う。

というのも、種族だからってエスカレーター式に天使としての仕事が出来るかというとそんな甘い世の中なわけでもなく。そう。唯、天使という種族なだけ。


『世間では天使って、良い人としてあがめられてるけどさぁ、エンジュの場合天使ってゆぅか、悪魔をたぶらかす悪女だよなぁ』


昔、大好きな人に言われた、心無い言葉。今でも、あの時の事は、鮮明に思い出せる。まるで、つい最近起きた出来事の様な気分。


――ねぇディーク君。

私、貴方に何したの?如何して、私の大切な人達を傷付けたの?






雨がザーッザーッと降る中。昔ながらの一軒家。イメージは、国民的アニメの磯○家の様な、御屋敷だ。古びた玄関門を通り、硝子張りのスライド式のドアを横に引くと、ドアを開けたウサギを押し退け、一番にアリスが家の中に入った。

「……オイ」

「レディーファーストっていうのがあるのよ。男児たる者、女の二歩……いや、三歩だったかな?まぁ、女の後ろに下がって、黙ってついて行くの。分った?」

「や、そんな格言聞いた事ないし。…ってか、逆だから。『女が三歩下がって、男の後ろを歩く』だから。…まぁ、そんなの昔の話だけど」

そんな会話をウサギとアリスがしてると、オイ、と第三者の声で二人は同時に声を掛けてきた男の方を向く。

男は、さり気無く背負ってる女が雨で濡れない様、屋根の下に自分の背中が丁度隠れる様に立ち、肩越しに振返り、此方を見ていた。いや、睨んでいた。


「あらら…お熱い事。何々?やっぱり、恋人なわけ?」

「……何でそー思うわけ?」

「うーん。唯、何と無く?でも、ま、御似合いよ。御二人さん」


男はハァ…と、今日で何度目か分らない溜息を吐くと、アリスを一瞥し、めんどくせぇガキ、と吐き捨てウサギに目を向ける。「何だとぉ!?」と、喧嘩腰で此方に襲い掛かってきたアリスの攻撃を避け、早く入れ、と目で促す様に見詰る……睨み付けると、勘の好いウサギは渋々家の中に入る。

其の後直ぐに、男も家の中に上り込んだ。




「随分、立派な家じゃねぇか。御前等だけで住んでんのか?」


ギィギィという音を軋ませながら、三人は廊下を歩く。男は、歩きながら、家の中を見回す。背に抱えてる女を落さない様、器用に。そんな男の問い掛けに、先頭を歩いていたアリスが肩越しに振返り、「まぁね」と、誇らしげな顔で言った。

「唯……」

急に声のトーンが下がり、再び前の方に顔を向けるアリスに、男は「唯?」と、少女の言葉の続きを促す。だが、返答は無かった。


其れから、居間に着くちょっとした時間、三人の間に重たい沈黙が流れた。唯一、聞える声は、男が背負ってる女の規則正しい寝息。と、偶に三人の誰かが此の沈黙に耐えられなくて、生唾を飲む音だけ。

「布団、持ってくるわ」

沈黙を破ったのは、アリスの其の一言。男二人がハッとした時には、アリスは脱兎の如く逃げる様に居間を飛出し、来客用の布団が仕舞われている物置として扱ってる部屋へと、向っていった。


「…………」

「……」


遠退く足音。あのヤロぉ一人で逃げやがってぇ、と、頭の中でアリスを血祭りにする想像を浮べるが、逆に返り討ちにあうか、と現実的に考え、如何する?と、チラッと、男を見た。

「………」

目が合う。気まずさやら恐さやらで、つい、目を逸らす。

何やってんだよ、僕!?唯、少し年上なだけじゃんか。ずっしり構えろよ、僕!と、自分に心の中でエールを送ると、今度こそ、と声を掛け様と思った其の時――チャイムが鳴った。


「……っ」


誰だよ!丁度、覚悟決めた処に水差した奴は!?…あれ?此の言葉の使い方合ってたっけ?と、やや頭の中がパニック状態のウサギの耳に、玄関の方から、今もっとも一番聞きたくない男の野太い声が聞えてきた。

「おい、如何した?」

さっきまで意識しまくって、緊張させてくれた男の問い掛けに答えず、ウサギは、腕をクロスさせ、自分を抱き抱える様な体勢になると、体をブルブルと小刻みに震わせた。

初出【2012年6月10日】

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