第五話【七年後の再会】
人間界(死神さん達の間では生界)と呼ばれる世界では、私達、天使は願いを叶える、謂わば神様の使い出として崇められ、逆に、悪魔は願いを叶える代りに代償を頂くといった、閻魔様の使い出として忌嫌われ。
詰り、私達は出会ってはいけなかった。混ぜたら危険!、なんて誰かが何かに例えて言ってた気がするが、其れがまさに今の私達には御似合いで、私の目の前で地面に座込んでる同い年位の男は、私と目が合うと、ニヤッと不敵に笑った。
『だって、此処、エンジェル界じゃねぇもん』
「じゃあ、此処は何処?」そう訊こうとする前に、男は、人間界なんだからな、と淡々とした口調で言った。
あー…人間界かぁ。そうなんだぁ、人間界かぁ。うん、人間界。……あれ?人間界って確か、エンジェル界から凄く下にある世界で、一旦降りたとしても、成人した天使なら行き帰りに困りはしないだろうけど、でも私は、まだ羽を最近になって使える様になったわけで、まだ上手く使いこなせてないから、頑張ってもエンジェル界には帰れない。
「…………」
突然の頭痛。意識が朦朧とする。
如何すれば好い?
迎えがくるのを待つか、此処等辺を徘徊してる死神さんを見付けた時に声を掛けて故郷に帰してもらうか、あー…ダメダメ。仕事で忙しいのに、其処に声を掛けて邪魔をするのは……でも…。
ふら付く体は、とうとう耐え切れず、引力に従って前に倒れる。頭痛も酷くなり、意識を手放す。
意識を手放す寸前、来るであろう衝撃は来ず、代りに逞しい胸に抱締められるのを感じた。そして、懐かしい匂いに温もり。
★☆★
生温い風が、肌を掠めた。さっきまでギンギンと照付けていた太陽は姿を晦ませ、其れを隠したと思われる雲が一粒涙を落すと、耐え切れなくなったのか大粒の涙を沢山降らした。
通り雨なのを祈り、直ぐ近くにあった大きな木へと避難する。少し濡れた処は直ぐ乾くだろうという結論に至り、ウサギは、隣で女を背負う男へと視線を向けた。
雨が降る少し前、亡き母の面影に似た女は具合が悪くなったのか、突然意識を手放した。そんな彼女が地面にダイブする寸前の処を、前述の女が悪魔と言った男が、彼女を抱すくめる。
何とも、奇妙なものだった。男が女を抱締める光景だけを見た人ならば、「ケッ!公衆の面前でいちゃつきやがって」と思うだろうが、一部始終を見ていたウサギとアリスにとって、此の二人の関係性から考えると、何とも違和感この上ない。
「恋人なの?」
自分が言いたかった事を代弁して、アリスが男に訊いた。男は、チラッと此方を一瞥すると、「違う」と答えた。其の答えに不満だったアリスは、「じゃあ何?」と、訊く。
「……別に好いだろ、そんな事」
「でも気になるのよねぇ。なんか、アンタ達見てると、死んだ御父さんと御母さんに似てるから」
そう聞くと、確かにそうかもしれない。漆黒の長い髪を短髪にし、もう少し男前な顔をしたら亡き父に似ていなくも無い。雰囲気も若干似てるし、とウサギは思った。
男は眉間に皺を寄せ、此方に顔を向けた。其の動きに合せ、女の体が揺れ、ずり落ちそうになるが、男は、よいしょ、と声を洩らし、器用に抱え直すと、キッと此方を睨み付け、ハァ…と溜息を吐いた。
「そんなの御前等の勝手な都合だろ」
「確かにそうねぇ…まぁ、そうなんだけどぉ、御節介の血ってヤツぅ?なんかぁ、ほっとけなくてさ、二人の事」
「……………」
「気になるのよ。彼方達の関係性について、此の、違和感について」
フッと不敵に笑うアリスに、男は観念したのか其れとも唯めんどくさいだけなのか再び溜息を洩らすと、腐れ縁、とだけ答え、雨から身を守ってる木の葉から少し顔を出し、空の様子を窺った。
「チッ……止まねぇな」
男の言葉を最後に、再び流れる沈黙。気まずい。非常に、気まずかった。息苦しい此の状況を何とか打破したくて、気付いたら、自分でも驚く事を発していた。ウサギはハッとして、やっぱり今のは無しで、と言おうとした。が、此れに乗っかたのが一番厄介な人物・アリスで、「ウサギのクセに、好い提案じゃない」と、彼女なりに褒めてくれた。
僕のクセに、は余計だ!と思いながらも、もう訂正は無理だなと此の流れで感じ、もう流れに任せようと思い、もう一度同じ事を繰返す様に言った。
「近くに家があるんで、好かったら寄りにきませんか?」
後書き
久し振りの更新です。。覚えてるかな?((覚えてませーん
実は、前回の天悪で書こうと思ってましたが書けなかったので、今になって書くのですが((何?
アリスとウサギというキャラは、私が天使と悪魔を誕生させた時点では、まだ生まれてなかったキャラなのです((へぇ
何処で生まれたかというと、昔、テレ○のアニメ「○メット○ん」という話の中に、確か双子キャラが居た様な居なかった様な…((ちょっ、曖昧っっ!!
兎に角、そっから双子キャラというのを登場させたくて、練りに練って出来たキャラというわけです((いやいや全然練って出来たものとは思えないんだけどっ
初出【2012年6月7日】