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それでも桜が見たかった

作者: 藍果

初短編!コメント待ってます、誤字脱字などの報告もよろしくお願いします!

桜が散り,葉が目立つ頃 クーラーの効いた部屋でアルトクラを吹く僕は、義泊セラ。

5月終わりにもかかわらず蒸し暑くなった外気にさらされるなんて

もってのはか、室内でも暑い。今年は異常気象だとニュースキャスターが言っていた。

運動、勉強を苦手とし、手先も器用ではない.(というか不器用)な僕を連れて吹奏楽部に誘ってくれた橙野アスカ先輩にはとても感謝している。

とはいえ もともと学校はあまり通っている人ではなかったらしく ,これまで 10日 会えたか会えてないかくらいの登校頻度だ。前聞いてみたけど 「サボリだよ。」とか言って笑っていた。すごく頼りになる元気でかったいい先輩だから 驚いた。この時僕は全く気がついていなかった。僕自身の先輩に抱いた恋心に。そして先輩が笑顔の奥に隠した 深い悲しみに。



季節は巡り9月。3年生が引退してから先輩はますます学校に来なくなった。

そして10月になると遂に全く来なくなっていまった。クラスでも人気があったと聞いているし いじめが原因という訳ではないのだろう。上手かった橙野先輩が抜けたことですこしうすくなった 伴奏を聞きながら 僕は理由を探しつづけていた。



12月になり雪が降りはじめた頃になっても先輩が学校に来ることはなかった。

僕の中の先輩はもう過去のものになりはじめていた。いつかこのまま 声も顔も優しさも言葉も無くなってしまうような気がしてならなかった。そんなある日 放課後,公園立ち寄った。集中力が足りないと塾の先生に言われた。むしゃくしゃしていた。その先生は前から僕を理外尽なとで怒ってきた。でもそれすら言い返す勇気のない自分が僕は嫌いだった。

「セラくん……?」


鈴を転がした様な綺麗な声。僕はこの声をした人物を1人しか知らない。


「橙野先、輩。」


こんなところで何をしてるんだろう。けれど嬉しかけた。もうあえることなんて無いと思っていたから。


「なんで学校に来ないんですか。」


言った。言ってしまった。勇気の「ゆ」の字もないような僕の口から零れた言葉。


「ずっと気になっていたんです。真面目で責任感があって優しい貴方がサボりなんてありえないって。話してくれませんか、先輩。」


先輩は困ったように笑った。


「全く。セラくんには敵わないなぁ。 そうだね。君になら話してしまうのもいいかもしれないね。

私はね、もう永く生きられないんだ。余命3ヶ月。いつもは病院で点滴にまみれた生活をしてる。わかったのは去年の今くらいかな。最初は皆頑張ってくれたの。でも、もう助かる術はなくて。 今日やっと外出許可をもらったんだ。でも人生に悔いはないよ。強いて言う来年の桜を 君と見たかった。ああ、もう 観念するよ。君が好きだ。どうしようもないくらに。気遣いも優しさも全部好き。完敗だよ。ごめん。でも どうせ死ぬなら言いたかった。遺書にするのは恥ずかしかったから今日会えて良かった。」


笑いながら話す先輩の目には涙が溜まっていた。


「そんな悲しいこと言わないでください!どうせ死ぬとか悔いはないとか言っておいて泣くならまだ生きたいんじゃないんですか?僕も好きです、先輩。もっと一緒にいたいし生きたい、で……す…。」


僕の目にも涙が溜まっていた。


「また会いましょう先輩,来世で。」


「あぁ。会えるといいな。」


3月。橙野アスカと書かれた病室をノックする。扉を聞け,目にとびこんでくるのはたくさんの点滴。先輩の体につながれたチューブのせいで とても痛々しく見えた。


「桜咲いて良かったですね。」


異常気象のせいでかなり早く咲いた桜は綺麗だった。呼吸器をロにつけているから話すことはできないいけど、その澄んだ瞳は微笑んでいた。 翌日 先輩は息を引きとった。


先輩のお姉さんから手紙をあずかっていると言われ、先輩の部屋に入れてもらった。

物は少なかった。だから机に置かれた写真立てが目立っていた。部活の全体写真と吹部に

誘われた僕のツーショットの写真2枚が丁寧に飾られていた。

受け終った手紙には 皆のことを想う言葉ばかりが綴られていた。

先輩は最後まで僕の好きな真面目で優しい先輩だった。

涙の跡でにじんだ文字を指でなぞって僕は桜の花が散った道を歩き出した。

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