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第5章 脱出編 その4 「♡元老院主催!第一回デモンズラバーコンテスト♡」後編

第5章 脱出編 その4 「♡元老院主催!第一回デモンズラバーコンテスト♡」後編


「元老院主催!第一回デモンズラバーコンテスト!キミも魔王の奥方に?」

昭和ならまだしも、今時ミスコンなんてセクハラ案件だ。流行りの言葉じゃルッキズムって言うんだっけ?そもそも、キミ「も」?「も」ってなに?

「お~!」

 なのに、異様な盛り上がりを見せる青雲堂……普段は精霊たちを保護し、胃世界に飲み込まれる以前の景色を保存してるっていう不人気スポットなのに。今は精霊たちも逃げてるのか?

「こんな青雲堂、見たことない」

 今は半裸の若い娘さんであふれてる。魔族は長命で半裸で女性しかいないから普通なんだけど。背中の翼もお尻の上の尻尾もバタバタ振られてる。命令とか権力で動員されただけでもないのか?いやいや、勘違いするな。僕が魔王だからってだけだ。地位とか特権目当てに決まってる。或いは、ここに来ないと罰せられるのかも。そうだ、これはなにかの罠だ。

「それでは、注目の第一関門は~」

 ゴクリ。参加者たちが一斉にツバを飲み込む音が会場に響く。

「胸帯フィッシングだぁ~」

 ……なにそれ?って僕の疑問とは無関係に。

「きゃ~エッチぃ」

「あたし、自信ないな~」

「でもぉ……魔王様になら~いいかな」

 ごくり。時々僕の方を思わせぶりに見る目がなんか色っぽい。そこに!

「魔王様……期待してます?」

 耳元でささやくような声がゾクリって感じです!

「胸帯フィッシングというのは……まあ、見ての、お、た、の、し、み、です」

 僕をからかう声が刺激的過ぎ!反射的に離れようとするけど、拘束具で動けません!説明役の魔族さんは、そんな僕を見て蠱惑的に笑うんだ。この子も罠だ。


 特設リングの上に、魔族さんが1対1で向かい合う。どっちも胸帯と下帯しかつけてない半裸姿なのは魔族だから当然なんだけど……手に持つのは、革の鞭みたいな?

「あの先には特殊な術式が付与されておりまして。参加者たちの胸帯の中央にも、ですけど」

 なんて魔力のムダ遣いだ……って思う間もなく。ひらめく革の鞭が空中で交差する!しかし一方の鞭は巧妙に動き、相手の鞭をそらし、そして相手の胸帯に一直線!

「うまく鞭の先を当てれば~」

 ぴしゃり。当たりました。するとそこに小さな光が瞬いて。

「きゃあ~やられちゃった~」

 ……伝説の「ポ○リ」だ。勝った魔族の鞭の先には、破れた魔族の胸帯がついている。負けた魔族っ子は真っ赤になって両腕で胸をかくしてる……いや、隠れてない。こぼれてるけど。その視線が一瞬僕に向いた。

「ぽろりもぶるんも、いいですよね~どうです、魔王様。魔王様はなにやら随分と特殊な嗜好をお持ちとか。これくらいの審査でもなければお気に召さないかと」

「僕にそんな特殊な嗜好はありません!」

 これはヤラセなのか?あの、昭和の伝説、「ポ○リだらけの芸能人水泳大会!」なのか!しかも、ポ○リが事故やらせじゃなくて競技もくてき

 昭和の都市伝説「中学校ではブラのホック外し」なのか!?小学校でスカートめくりを卒業した昭和の中学生は、もうこんな大人になってたんだね!僕の時代にはとっくに廃れた古き良き伝説がここでは今も残ってたんだ。そういえば昭和特撮ではヒロインもけっこう、パン○ラとかがあってびっくりした。モデルみたいな美人に超ミニのスカートでアクションさせて、あれ、制作者、絶対狙ってたよね。

 僕の脳内は千々に乱れる。しかし競技は続く。僕はその場面は目を背けようとするんだけど、あ~拘束具がジャマをしてるから見てしまう~。目を閉じようともしたんだけど、あ~ガイドさんの指が僕のまぶたを押さえつける~あ~閉じられないから見えてしまう~。

 革の鞭が、胸帯のつなぎ目に当たる度に。

「いや~ん」

「あ~れ~」

「魔王様に見られちゃう~」

 ポロリ、ブルン、プルン……いろんな擬音が飛び交い、そして絶対に隠す気がない敗者たちが僕にアピールの視線を送る。

「これ、勝ち負けってどうやって決めてるの?」

「胸帯をとられた娘が敗者ですが、もちろん魔王様がお気に入りになりましたらその場でお持ち帰りされることになっております」

 負けるが勝ちって?いやいや、敗者復活か?ミスコンというより、もはやなんかの品評会みたいだ。人権意識ってないの?

「見ないで~えへ」

 ポロリ……。いけません。もう僕の脳からも、なにかがこぼれそうです。


「第一次審査突破者はこちらで~す!」

 ようやく終わった。何人参加してたのかわからない競技だったけど(元々魔族全員でもそんなにいないはずけど)、特設リングに勝者たちが並ぶ。

「……あれ?」

「どうしました?お好みの子でもいたんなら、いますぐお呼びしますけど」

「そうじゃなくて!……真ん中にいる魔族さん、マスクしてるんだけど?」

「ああいうのがお好みですか?魔王様ってやっぱりマニアック」

「違うから!」

 なんていうか……こういうのは趣味じゃないけど、そういうイベントに参加する子なら、自分をアピールしなきゃいけないのに。

「顔を隠すって、おかしくない?」

「自分の顔に自信がないのかもしれませんね。或いは顔出しNGなのかも。体はともかく」

 ……そういうコミック原作の実写映画も知ってるけどさあ。あ、あれ、女子高生か?設定やばいな。さすが昭和……。

「ちなみに参加者の年齢って何歳からです?」

「魔族に年齢聞きます?」

 魔族は長命種で、しかも練成されて100年余りだから、幼女元老みたいに見た目はヒトケタでも実年齢はミケタということはありうる。ここにいる子たちはみんな見た目十代~二十代初めくらいだけど、前世の常識から十代はアウトだし中身はミケタもなんか困る。

「ですが、さすがに成人前の魔族は参加しておりませんし、それなりの年齢の者は地位も実力もありますからよほどの酔狂でもなければこのような場には出席しません」

 そういう酔狂な人がいそうだから困るんだけど。

「ちなみに魔族の成人年齢って……」

「15歳です」

 うわ~15かそこらでこんなイベントに参加させる?ブラックだな。いや、当時中学生にミニスカでクノイチさせてた快傑ライオン○も大概だけど。

「安心してください。大半の魔族は成人前にはもう経験相手を手配済みです」

「…………」

 返す言葉が浮かばないくらい衝撃です。


 ええっと。少し混乱してました。間を置いて、説明します。説明係の魔族さんは、書物妖精でも語られない魔族の恋愛(?)事情を語ってくれたんだけど。

 種族カーストトップの魔族は女性だけで、次点の鬼族は男性だけ。しかも魔族と鬼族の間に子どもが生まれない。だから人族代表の元老が、魔族には人の男性を、鬼族には女性を仲介している。ここまでは僕も知ってるレクアの複雑な事情だ。そのせいか、胃世界に墜ちて以来150年近いけど、今も魔族・鬼族は少数だ。人との間でも出生率はさほど高くはないらしい。

「まあ、そこまで子孫を残す必要もありませんから」

 心身ともに強靱で長命な種族だ。実は未だその自然寿命はわからない。練成されてからの150年、寿命で死んだ魔族は(鬼族も)いないそうだ。当然、元老院のメンバーを始め、第一世代の魔族がまだ現役だ。幼女元老は論外で例外だけど、オーマークさんもウーシュさんも、全然若いし。

「それに加えて、魔族と人族ですよ?自分が妊娠したってことは、人族の男相手に生殖活動をしたって世間に知らしめるわけじゃないですか。よほどの相手じゃないと公にできませんよ」

 ……種族カーストの歪みがそんな問題も起こしてるのか。ブラックだな。

「それで、まあ、一般的な魔族は、成人前から隠れて好みの男性を選んでおくんですけど、そういう人族はなかなか限られていて」

 ……イスカ家御用達の一部イケメンに集中するわけだ。まともな恋愛はないんだろうな。

「で、概ね何年か待たされて、二十歳前にはそういう経験を一通り済ませておくわけです」

 二十歳前、二十歳前……まあ、思ったより普通じゃないか。

「もっとも、よほど気に入った相手でもなければ、同じ相手とは二度と会いませんけどね」

 つまり、特定少数の人族イケメンを、魔族全体で使い回している……う~む、その人族男性たち、うらやましいというべきか気の毒というべきか。

「で、そういう方面に興味がない魔族も少なからずおりまして、そういう子たちが政治や学問や魔術、或いは戦闘に志願するんです」

「……じゃあ英士の子たちって」

「英士隊ですか?そうですね。魔族のエリートではありますけど、変わり者で嫁き遅れの集団でもありますね」

 嫁き遅れの意味が違いすぎ。だけど、あの子たちが前世の中高生集団みたいだった理由が少しだけわかった気がする。

「もっとも、英士隊の任務も任期制ですから、4年くらいで退団して、あとはお楽しみコースに走る子も少なくないって話ですけど」

 ……訂正。やっぱり僕にはわからないことが多すぎる。

「あれ、でも今の英士隊はけっこう任期を終えても残留した古残が多いって」

 古残兵って言っても大半はまだ十代後半くらいだけど。幹部たちで、20代初め。

「あー確かに。現在のジナ英士隊は、増員の件で残留を志願した子が多いって聞いてますね」

 ジナさん、シアラさん、クレリアさんたち幹部要員はむろんだけど、その他の子たちもけっこう残ってくれた。副官魔導師のリュイシアさんは当然だけど。

「でもぉ~」

「……なんです?」

「それも魔王様狙いなんじゃないですか~?だって魔王様、戦う魔族に萌えるんですよね」

 いつの間にか、そういうウワサが狭いレクア社会を走り回ってるらしい。

「だから、このコンテストも戦う魔族っ子対決がウリなんですよ。お楽しみくださいね」

 そして。そんなウワサを根拠にあの審査方法が……ネットもないのに、デマって怖い。


「では~勝ち残った皆さんはどうぞこちらへ~」

 正直何人もの魔族さんが参加していたのかは数えてない。ただ、第一次審査の胸帯フィッシングというかなり昭和的というかセクハラというか、そういう競技を勝ち抜いた魔族さんは8人だった。残った魔族の方が明らかに多い。

「は~い、では負けちゃった方~魔王様にご挨拶しましょう~」

 なんで!しかも負けた魔族さん、まだ胸帯つけてないんだけど!

「魔王様~負けちゃったけどよかったらお声をかけてね~」

 両腕でかくしきれないお見事な……思わず目が、目が吸い寄せられる!

「あ~魔王様、おっきいおっ○い好きなんだ~あたしのも負けないよ~」

 僕はおっぱい星人じゃないぞ!慌てて目を背けようとする。でも!グキ……拘束具がジャマをする。目を閉じようとしても、まぶたはガイドさんがしっかり抑えてる。

「魔王様って、どうしてそんなにガマンするんです?」

「いや、ガマンとかじゃなくて……」

「不思議です。参加する魔族は、こういうのも同意して参加してるんですよ?」

 これは悪魔の誘惑か、或いは孔明の罠か!?ガイドさんの声が僕の耳をくすぐる。

「さっき、競技中は見てたじゃないですか。今さらですよ」

 うう。確かにさっきの景色は目にしっかり焼き付いてる。あ~まさか転生して、こんな昭和も真っ青なイベントを生で見られるとは……いやいや、こんな誘惑に負けてたまるか!

「……本当。魔王様って、どれだけ抑圧されてたんでしょうね」

 ……抑圧かなあ。確かに前世はそうだったのかもしれないけど。

「それとも、やっぱりもっと特殊な嗜好でないといけませんでしかたね?」

 違うから。そんな疑う目で見ないで。


「では~注目の第二次審査は~」

 ゴクリ。特設リングに並んだ勝者魔族さんと会場中が注目する一瞬。


 じゃんじゃんじゃんじゃんじゃん!じゃんじゃんじゃんじゃんじゃん!


 会場に鳴り響くこの音は……半鐘だ。

「街妖精エムリア様からの急報!街妖精エムリア様からの急報!……サナダグン接近!サナダグン接近!英士隊は北防壁に急行せよ!英士隊は北防壁に急行せよ!市民の皆さんは安全な場所にただちに退避してください!」

 会場のみんなは、警報とともに動き出した。こんなやらせイベントに参加してたにも関わらず、さすがは魔族だ。

「マオマオ様~ごめんなさいなの~やってきた敵が多すぎて逃がしちゃったの~」

 僕宛の思念が頭に響く。エマだ。しかし、エルダとエマが巡回してくれてたのに、それを突破された?脱出準備も佳境に入るのに、ヤバイんじゃないか?

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