第3章 その10 トンネルを進んで増えるは謎ばかり
第3章 その10 トンネルを進んで増えるは謎ばかり
上陸した・・・・・・落下したとも言うけど・・・・・・「霊樹の国」は謎の白骨化現象のせいで地表は新種のスケルトンであふれていた。そこでトンネルをつくって地底旅行してる僕たちだ。正直、イ○隊員のベル○ダーが欲しい。そういえば、あれ、バロウズ氏の地底世界が由来だったってけっこう最近知った。まあ、前世の末期の最近だけどね。
「え?向こうにヒュージモール?モールってなんだっけ・・・・・・」
土精霊のパントマイムはなかなか楽しくてわかりやすい。
「モグラかあ・・・・・・モグラ怪人といえばアマ○ンかなあ」
どこか愛嬌があって、怪人なのにアマ○ンの味方になって、最後は・・・・・・泣けるなあ。もともとアマ○ラ○ダーは異形にもかかわらず子どもの味方っていうか、助けてあげたい僕のラ○ダーって感じもあって人気あったんだよなあ。
「弟クンは時々意識が変な世界に飛ぶんだね・・・・・・そろそろ着くから戻ってきなよ」
「・・・・・・はい、ごめんなさい、お姉さん」
島の中央にある、島全土を覆う傘の幹。トンネルをたまに妨げる根っこの登場頻度からも、その中心に近いって気がしてくる。
で、目の前に横たわってるのも、その一つ。僕はそこを避けてトンネルを造るつもりだけど、興味を持ったお姉さんに押し切られた訳だ。
「この根は・・・・・・白化してるね」
「白骨化じゃないんですか?」
「うん。地表で見たスケルトレントじゃなくて、普通に白化だ」
白化・・・・・・ええっと、確か植物の葉緑体不足だったっけ?
「まあ、ここは日照のない世界ですから白化してもおかしくないのか」
根っこがそうなるかどうかは怪しいけど。
「だけど、少し引っかかるね」
「そりゃこんな太ければ危ないですよ」
「そうじゃなくて・・・・・・白骨化と白化。この違いはなんなんだろう?」
「白骨化ですか・・・・・・」
なんて白い根っこを前に考え込む僕たちをジナさんたちが怒鳴りつける。
「何を今さら。さっきからそんなのばっかりじゃないか。早く進もうぜ」
まあ、スケルトレントとかいたし、危険な場所からは早く立ち去りたいよね。
「この島では地上のすべてがアンデッド化、しかもスケルトン化してるんだ。なのに、おそらく中央の木はまだ生きてる。だから白骨化していない。なぜ?・・・・・・その原因を調査することこそ、世界の真理に近づくことなんだあ!」
・・・・・・巨人みたいなスケルトンもいたな。なら・・・・・・怪獣のスケルトンもいるんだろうか?骨の怪獣といえば、やはりシー○ーズだろうけど。
見たいけど会いたくないなあ・・・・・・複雑な想いにかられながら、僕はお姉さんを引っ張って進むことにした。あんまり遅いと、留守してるエルダさんが暇して暴走するかもしれない。はっきり言ってそっちの方がよほど危険だ。
で、再び歩き始めてそれなりに経って。
「そろそろだよ、弟クン」
トンネルを固めながら歩く僕の袖を今度はお姉さんが引っ張る。目的地が近いらしい。僕は土精霊を集めて準備する。ここの土精霊たちは人なつっこくて働き者だね。
「んじゃ、地表まで坂道を造るよ」
思い思いのポーズで応えてくれるけど、不揃いなのは人の指示で働くのが久しぶりなせいだろうか?
少し急な斜面だけど歩けるくらいの角度で坂道をつくり、固める。お姉さんじゃないけど精霊に好かれて大きな魔力がある僕の練成魔術ってなんだか土木作業向けだね。
「やれやれ、やっと出たぜ」
先頭はジナさんが譲らなかった。
「・・・・・・おめえはまだ出てくんなよ」
はいはい。安全を確認するまで僕には出るなってさ。
「骨?」
白骨化なのか?あるいはただの白化なのか?
「すごくおっきい~こっから白い傘が天井みたいに広がってるよ」
この上が島を覆う巨大な傘の中心で間違いないみたいだけど。
「・・・・・・近づいたら、なんだかイヤな気配がするよ」
・・・・・・お姉さんのメガネが怪しく光る。それを見た僕もイヤ~な感じだけど。
「ん?どうしたの?」
土精霊が僕の靴・・・・・・ってかサンダル・・・・・・の上に乗ってる。なんか言いたそうだ。
「お姉さん・・・・・・この下に何かあります?」
「下?上じゃなくて?さらに地下かい?・・・・・・あ?」
「なんかありました?」
「上上!弟クン、上からなんか来るよ!」
・・・・・・上?
「ジナさ~ん、何か起こりそうですか~」
なんて言いながら、僕もトンネルを出ることにした。ビョウで後悔したけど。
トンネルから出れば、そこは白い世界だった。とっても残念なことに雪国じゃない。白骨の国だ。どこから嗅ぎつけたのか、我らを襲う白い影、おびただしくもおぞましい骨の軍団が押し寄せてくる。人型、動物型だけならまだいい。勢いよく飛んでくるのは甲虫だ!
「おお、昆虫のスケルトン化は珍しいね。あれはスカルビートルと命名しよう!」
50cmくらいはありそうな白いカブトムシは、その文様のせいか、頭蓋骨に見える。それがかなりの速度で飛び回る。僕より先にトンネルから出ていたジサさんたちが、魔術を使う暇もなく、剣は当たらずで防戦一方に追い込まれていた。
「う~ん・・・・・・これじゃあ中央の木を調査するどころじゃないね。んきゃ?」
「一時撤退します!」
僕はお姉さんの首根っこを引きずりながらジナさんたちに声をかける。
「仕方ねえなあ」
「ん」
「あ~も~こいつらむかつく~」
で、全員がトンネルに入ったのを見届けて、練成炉にしまってた土で入り口を塞ぐ。
ぼこぼこって入り口にぶち当たる音がするけど、しばらくはもつだろう。
「ふう。昆虫までアンデッドになるなんて・・・・・・そもそもなんで白骨化してるんだろう?」
土中の根っこは白化だ。植物の、栄養やら陽光不足屋良による異常。だけど地上の動物や樹木は白骨化、つまりスケルトン化してる。
「アンデッドになるにしても、グールとかゾンビとかにならないで、なんでスケルトン化・・・・・・え?」
なぜかみんなが僕を見てる。あまり心地いい視線じゃない。ズバリ、残念な生き物を見る目だ。
「ええっと、みなさん、僕がなにか?」
聞かぬは一生の恥だ。僕は一時の恥をかくのは慣れてる。悲しいけど。
「・・・・・・そうだね。ここは姉であるボクが弟クンを教育することにしよう」
ここ、世界竜の胃の中の世界では、魂は消滅しない。生命が死んだ場合、すべて霊魂となり、自然の摂理の流れに戻すために浄化される。
「・・・・・・それは僕も知ってますけど」
海底で、その場面を見せられたし。
「だからね、死んじゃって浄化されずにいる場合、アンデッド化するんだよ。地上でもよくあることだったんだけど、この胃世界じゃありえない頻度でそれが起こる」
「・・・・・・つまりこの島の生物はみんな浄化されないまま死んじゃったってことですか」
「そうだね」
「それなら、なんで全員スケルトン化なんです?グールとかゾンビとか他にもアンデッドは・・・・・・」
口をつぐんだのは、だんだん険しくなるジナさんの視線のせいだ。
「わかんねえヤツだな。屍体も食人鬼も、竜酸で溶けちまえばおんなじだろうが!」
どうもこの話題は、胃世界人にとってかなり厭なものなんだろう。まあ、そりゃそうか。
「あ、ということは、さっきのスケルトンって、実はグールやゾンビが溶けたのも混じってる?」
「だからそう言ってんだろうが!」
ちなみにどういう条件で、スケルトンになるかグール、ゾンビになるか、その違いは不明らしい。だけど
「ちゃんと葬られていれば、アンデッド化なんてしねえんだからな」
死者を弔う儀式がアンデッド化を避ける一番の方策らしい。
「つまり、あのスケルトンたちはちゃんとお葬式されなかったってことなんですか?」
「そ」
「何も知らないんだね。困った魔王だよ」
・・・・・・とはいえ、だ。だとしたら、自然死した人間以外の動物、いや、植物もか?みんなアンデッドになるのか?ひどいな、胃世界。レクアじゃ、動植物は全部貴重な資源だったから、それなりに葬られてるんだって。
「弟クン、勉強が足りないね」
・・・・・・あんなにたくさん書物妖精を呼んだのになあ(読んだじゃないよ)。
「誰もが知ってることをわざわざ高価な書物にしないよ」
・・・・・・僕の前世とは出版事情が異なるから、そうなんだろう。
「あ、でも・・・・・・なんで人体以外の、動物とか植物とか昆虫までアンデッド化してるんです?」
「だから、お葬式をあげるべき人族が真っ先に全滅したんだろうけど・・・・・・その原因が謎だね。あの数を考えれば、人が一斉にアンデッド化したんだろうから、そこが問題だ!」
お姉さんは次々と仮設を挙げていった。
「仮設1!どこかにナゾの死霊術士がいる!」
魔法世界だから、そういうことはあるのか。魔法、すごいな。
「仮設2!アンデッド化を進行させるナゾの病気が流行した!」
ファンタジーな世界には、ファンタジーな病気もあるわけか。
「仮設3!ナゾのモンスターの襲撃!そいつに殺された生命は自動的にアンデッド化する!」
・・・・・・吸血鬼の一種かな?まあ、魔法世界だから、もうなんでもアリだな。
どうせなら胃世界征服を目指す悪の秘密結社が企てた計画であってほしい。
「お姉さん、いったんアンデッド化したら浄化できないんですか?」
「できなくもないかな。相当に質の高い魔力の持ち主がその魂を鎮魂できれば」
自分で言ってお姉さんは納得のいかない顔だ。
「まあ、そんなのは魔王のキミでも難しいよ。なにしろキミはこの土地には無縁の存在で、この地の魂はよそ者を嫌ってるみたいだからね」
難しい?難しいは不可能じゃないけど・・・・・・魔術も使えない僕にはムリなのかな。
「ち!来やがったぜ」
意外なほど早く、埋めたトンネル出口を突破された。っと思ったら、来るわ来るわ。白骨軍団・・・・・・。島の中心だった大樹が近いせいか?昆虫っぽいのから人間サイズまで。
「任せて」
「そうそう。ここは魔王の護衛、わたしたちの出番だよ」
なんか張り切ってるなあ。まあ、僕なんかの護衛を命じられてストレスたまってたのかも。
オリハルコン装備を嬉々と振るって、ジナさんたち魔族っ子はスケルトンを切り倒していく。狭いこともあって、ジナさんが先頭、クレシアさんとシアラさんはジナさんが討ち漏らしたヤツを相手したり魔術を使ったり、余裕あるなあ。
だけど、これじゃあ、ここで釘付けだ。この島の資源どころか、白骨化の調査もできない・・・・・・じり貧だね。
「弟クン、やっぱり討滅妖精を呼ぶべきじゃないかい?」
「・・・・・・それじゃあ、ここに調査に来た意味がなくなります。お姉さんだってわかってるでしょう」
・・・・・・世界の真理と我が身の安全。普段のお姉さんなら間違いなく前者を選ぶんだけど。
「らしくないですね。どうしたんです?」
「どうもこうもね。キミに何かあったら、レクアは終わりじゃないか」
「あー・・・・・・そういう考えもあったんですね。いたらなくてすみません」
レクアを救う計画は、今はまだ僕の計画でしかない。今はまだスポンサー契約までは至ってないんだ。元老院とはリベート目当ての仮契約の段階。せめて元老院が僕の計画を正式に承認してくれるまでは、僕が生きてなきゃいけない・・・・・・お姉さんに言われるまで自覚がなかったな。
「そういうところがキミの欠点だよね」
僕は、非常識だと思ってたお姉さんに指摘されるくらいマヌケだ。言い返す気にもならないんだけど・・・・・・。
「それでも、今、ここでエルダさんを呼ぶ訳にはいきません。この土地にはまだ精霊たちが生きてるんです」
たくさんの精霊たちが僕を助けてくれた。でも、精霊たちはその土地に根ざした存在で、この島がなくなったら、一緒に滅んでしまう。
「見捨てられませんよ」
「・・・・・・オマケにけっこう理想家だよねえ」
「お姉さんほどじゃありませんよ・・・・・・少し考えましょう。ジナさん、クレシアさん、シアラさん。どのくらい持ちそうですか!」
ジナさんがスケルトンを唐竹割するタイミングだった。心の中で何度目かの念仏を唱える。無意味とわかっててもしてしまう小市民な僕です。
「はん!あたいの心配するなんて余裕あるじゃねえか?・・・・・・ま、任せけって」
「そ」
「入り口が狭いから、ほとんど3対1でこっちの有利ね。動きの遅い素手の敵ばっかりだし、虫とかは魔術で一掃したし・・・・・・半日くらいはもつかな」
頼もしいというか、頭がさがります。だけど、半日もしたら、しびれをきらしたエルダさんが来ちゃいそうだ。それ以前に、半日なんて盛ってるだろうし。
「・・・・・・お願いします。でも、そんなには待たせませんから、ムリしちゃだめですよ!」
まったく。ここは地の底までもブラックな世界だ。そんな世界を救うために、僕は僕を護ってくれる人にブラックな待遇を強いている。最低だね。




