第3章 その4 終末の世界
第3章 その4 終末の世界
竜酸海の海底で僕たちの前に現れたのはエルダさんだ。
僕の契約妖精だから戻ってきてくれたのは当たり前だけどありがたい……はず。なのに、なんか違う。以前から冷たい印象はあるけど、僕の血を吸って正式に契約してくれてからは、そして露天風呂の一件からは少しずつ打ち解けた気がしてたのに……今は完全に他人みたいだ。
そして彼女はこう言ったんだ。
「ようこそ、魔王モーリ。この終末の世界へ」
エルダさんがわざわざ僕を魔王と呼ぶ意味がわからない。しかもなんで自分が海底に招待したみたいな言い方してるんだ?
「弟クン、あれは本当にキミの従属妖精なのかい?」
お姉さんはあの分厚いメガネをどこにしまったのか?気になるけど。
「……エルダさんです。僕が間違うはずがありません」
「そうかい」
「エルダさん、船を沈めたことなんか怒ったりしませんから戻ってください」
彼女が怪獣退治でやり過ぎた結果、僕たちの船は竜酸海に飲み込まれてしまった。それはまあ、仕方ない。そういう人だって……人じゃないけど……わかってたんだし、結果的に怪獣たちはいなくなって僕らも無事だ。
「あなたのそういうところは本当に理解できないな。私があなたの妖精でないことなぞとっくに感じていたはずなのに」
「……過剰評価ですね。そんな察しのいい人間なら僕はこんな目にあってませんよ」
「まあ、私がなんであるかなぞ、些事に過ぎない」
「あなたはエルダさんです。たとえ僕に従属してなくてもエルダさんはエルダさんです」
「やはり理解しがたいな。あなたは対象の本質を知らず、ただ自分の認識をもって理解したつもりなのか……いや、違うな。あなたは理解していた。ただ、それを真剣に考えなかっただけだ」
「エルダさん!?」
僕への評価が斜め上過ぎる!おまけに会話がいまいちかみ合ってない!
「最後の魔王モーリよ、この終末の世界であなたも終末を迎えるがいい」
エルダさんが手を振りあげた。
それに合わせるかのように、船の周りに、海底からたくさんの隆起が突き出た。一つ飛び出すごとに海底が震え、それが何度も繰り返されてもう地震みたいに揺れる。
体勢を維持するのに精一杯な僕と比べて、お姉さんの声は冷静だった。
「弟クン、囲まれたよ」
進路がわからないから機関を停止してたのが裏目に出たか?いや、あの時は仕方なかったし。それでも船の周りにはびっしり海底から突起が突き出て囲んでる。
「どうせ逃げるつもりはありませんよ」
「……キミはこういう時、妙に冷静だよね。感心するよ」
だけどお姉さんが僕に向ける目も、冷静だ。さすが真実の探求者。観察を忘れないね。ただ、観察の対象が外の景色じゃないのが不思議だけど。
「エルダさん!とにかく一度船に戻ってください、ゆっくり話しましょう!」
「弟クン……」
「はははは!あなたのそういうところは、本当に面白い。話し合えば何でも理解できるとでも思っているのか?」
ルリエラさんにも似たことを言われた気がする。
「エルダさん!」
「あなたの魂が消え去る時に、もう一度会うことにしよう。その時が楽しみだ」
そう言ってエルダさんは口を閉じた。そうするとまるで美しい氷の彫像みたいだ。
そのとき、船全体を震わせるくらいの大きな衝撃が襲った。僕は膝の上で眠ったままのエスリーを落とさないよう必死で抱きかかえる。お姉さんは安全ベルトで余裕だけど。
ミシミシって、きしむ音がしたけど。オリハルコン製の船体は耐え抜いた。
「ふう」
「ため息とはね。なんだい、弟クン。キミは自分の船を信じてないのかい?」
「そういうお姉さんはなんで落ち着いてるんです?」
「ボクだって自分が乗る船の耐久試験くらいはちゃんとやったよ」
「いつの間にですか!?」
僕だって練成炉の中で何度もシミュレートや実験はしたけど、お姉さんなら相当過酷な試験をしただろう。なのに全然気づかなかった。
「まあ、こっそりとだけどね。だから安心して乗ってられるよ」
そんなことしてたんなら、試験結果を教えてくれたらよかったのに。とはいえ、この世界の度量衡がいまいちピンと来ない僕だから、やはり実感できなかったかもしれない。
「そんなことよりあれを見たまえ」
……なんかごまかされた気がするけど、まあいい。僕はお姉さんの指さす方に目を向ける。
にょきにょきにょきにょき……。海底の隆起から、今度は無数の絨毛が生えている。
ぶくぶくぶくぶく……。そして、絨毛から、小さな泡が、やはり数え切れないくらい湧いて出て。
「こっちに向かってきますね」
「あの泡はなんだ?ボクの魔法知覚でもわからないぞ!ああ、また未知の現象に巡りあえてボクは幸せだ!ここに来てよかった!」
……やはりお姉さんだな、うん。平常運転。
迫ってきた泡で、もう船外の景色は埋め尽くされた。おそらく船はもう、泡だらけ。
「あ!?この泡、やばくないですか!?」
僕の未熟な魔法知覚でも、泡が触れた部分が急速に劣化するのがわかる。パキってイヤな音が聞こえる気がする。
「う~ん、実に興味深い。オリハルコンを劣化させる泡か……さすが、死の世界だね」
船体自身が劣化してしまえば、竜酸どころか水圧にだって耐えられないだろう。
「感心してる場合じゃ……」
その時だった。もっと外を見ようとする僕の視界の一部に、きれいな光が浮かんだんだ。白に限りなく近い淡い水色がうっすらと輝いてる。
「エスリー?」
消耗して眠っていたはずのエスリーが再び光壁を展開してるんだ。
「旦那様、危ないの」
僕に正面から抱きついた姿勢のまま、髪と同じ色の瞳が僕を見つめる。
「……だけど」
ムリしないで。そう言おうとして、僕は何も言えなくなった。この世界はブラックだけど、消耗したこの子に護ってもらわないと消滅してしまうこの状況はもっとブラックだ。そして、エスリーにムリさせてる僕って……。僕は無力だ。だめなヤツだ。
「旦那様、そんなお顔したらダメなの」
ムリして頑張ってくれてるエスリーに、なにもできない僕が慰められる。悔しいを通り越して、苦しい。自分への怒りで呼吸すら苦しい。だけど?だから?僕は自分を慰めることなんかしたくなかった。それは前世で捨てたはずだ。
「ありがとう、エスリー」
僕は膝の上に座るエスリーを抱きしめた。こんな僕を護ってくれる、慰めてくれる大切な子だから、せめて勇気づけてあげたい。少しでも僕の魔力を分けてあげたい。そう思った。こんなことしかできなくても、なにもしないよりはマシだ。そう思うことにした、
船全体を包み込む淡い光は、泡を遠ざけ護ってくれた。その間に僕はここから脱出するかどうか考えた。エルダさんと話したい。でもこのままじゃ、エスリーが持たない。お姉さんやジナさんたちも危ない。
「弟クン。ボクには討滅妖精と話したからってどうにかなるとは思えないんだけど」
お姉さんは脱出を考えろと言っている。正論だ。
「ですが……なんでエルダさんが僕たちを襲うんです?いえ、本気で彼女に襲われたら、この船だって一瞬で壊れますよ」
言葉に出すと、はっきりする。エルダさんは僕に従属してないかもしれないけど、本気で消滅させようとしてる訳でもない。なにかを……例えば、僕を試している?だけど僕の何を?僕に試す価値なんてあるのか?
「……キミを最後の魔王と呼んでいたね」
最後の魔王……確かにそう呼ばれた。なんで最後なんだ?お姉さんのつぶやきが何かをつなげていく。
「僕が脱出計画を成功させないと、レクアは思ったより早く滅びるから?僕の想定した20年以内なんかじゃなくて……それこそ僕が自分の治世と決めてる5年以内に。だから僕が最後の魔王になる?」
最後の魔王。エルダさんがそう呼んだ声が、僕の脳内で何度も響いた。
目の前のエスリーの額に、汗が浮かぶ。妖精って汗をかくのか?いや、それだけ負担なんだ。僕個人を護るならともかく、この船船体を護るのは、大変なんだ。
「……脱出します」
知りたいことはヤマほどある。エルダさんとちゃんと話したい。だけど。
「……まあ、仕方ないよね。ここは興味深いところだけど、次の機会に期待するさ」
お姉さんも同意してくれた。
「ところで弟クン。どうやって脱出するのかい?進むだけならまだしも浮上するには船首を上げないといけないんだろう?」
普通の船にはそんな機能はないし、僕も今まで考えてなかったんだけど。
「それはなんとかなりそうです。潜水艦のまねでもしましょう」
とても残念なことに海底に古代文明人はいなかった。でもナゾはあった。ロマンはビミョウだ。しこりは残るけど、現状は逃げるにしかずと結論するしかない。
「脱出の前に、前方のアレをなんとかしようか?」
「アレ?僕には見えませんけど」
「……そうだね。巨大な霊塊が塞いでるね」
霊塊?……やはり見えない。ていうか、見えたらいけないヤツじゃないのか?
「あ、さっきの泡が霊塊を包み込んだよ」
溶かしてくれるんなら助かるんだけどなあ。ま、希望的観測ですけど。
「霊塊が分裂して泡の一つ一つに……取り込まれた」
お姉さんの実況はありがたいけど、正直オカルティックな展開でイメージが全然わかない。もっと特撮っぽく、臨場感たっぷりに伝えて欲しい。カメラアングルにまでこだわるほど僕は濃くはないけど、見せ方って大事だよね。轟天号みたいに、最初は細部をアップして巨大感を出したり、プールに薬品を混ぜて波を小さく見せて逆に艦体を大きくさせたりとか、見せ方の工夫が大事!
「弟クン、泡が迫ってきたよ。中に霊体を包んだままで、霊体がはっきり見えるようになってきた」
「今度は少しわかりやすいですね、うん」
「なんのダメだしだったんだい?……来た!」
ゾクリ。なにも見えない僕だけど、背筋をなにかが走った。その感覚だけはあった。
「旦那様、光壁も船体も抜かれたの」
あ~やっぱり。ファンタジーな光壁もオカルトな霊は防げないのか。
「機関再始動!」
どうせ防げないなら、突っ切るだけだ。正面の障害が物理的なものじゃないんなら、干渉される時間を短くすることこそが被害を最小限にできるだろう。
「!」
僕の指示を受けて機関助手の火精霊ちゃんが敬礼で応えてくれた。
「機関点火!微速前進!出力は少しずつあげて!」
さすがに急発進は恐い。推進剤の量を間違えたらドカン、だからね。撮影での爆発で島を変形させて出禁になったブイ○リーでもあるまいし、程度をわきまえないと。
「!」
ぐん。加速で体重が後ろにもっていかれる感覚。そして膝の上のエスリーが、重い、なんて絶対言わないけど、少しずつ加重が増える。
だけど、船内に侵入したナゾの泡があちこちぶかぶか浮いててシュールだ。
「弟クン、恐くないのかい?」
「お姉さんこそ、未知の現象に遭遇してる割にはさっきから冷静ですね」
お姉さんはなんか、意外そうに眉をひそめた。見かけは子どもなんだから、そういうのは似合わない。
「ボクには霊も取り憑きようがないからね」
なんでだろ?ホムンクルスにはとりつかないんだろうか?それにしても霊は見えないけど泡は見えるってどうなんだろう?船内が泡だらけ・・・・・・はっ!まさか、これはガニ○の逆襲なのか?さっきやられて怒ってるのか?いや、それならエルダさんに向かうべきだろう・・・・・・んなわけないか。現実逃避終わり。
「これ、霊なんですか?」
「ゴーストだよ」
「ファントムじゃないんだ?」
ゴースチは幽霊だけど、ファントムは幻影、つまり気のせいかもしれないそうだ。で、ゴーストだから、やはり霊体が船内に侵入してるということだ。
「……とりつくんですか?」
気配は感じるけど、泡しか見えないからどうしても緊張感がない。
「弟クンは、いい意味で鈍いよね」
なんなんだろう?さっきからお姉さんが僕を観察してる気がして仕方がない。黄金宮ならともかく、今さらだよね?
緊張感がなかったのはここまでだった。
背筋に明らかに冷たいものが走りまくって、僕の皮膚の上をなにかがなで回していくのがはっきりと感じられた。そして、聞こえないはずの声が聞こえる。
「……こい」
「……お前もこっちに来い」
「……ともに、この世を去って」
「……次の世に向かおうよ」
「……来るがいい」
「どうせ、命は尽きるモノ」
「お前の土地も、もうすぐ」
「そう、すべては無に還る」
これが死の怨念とかだったら僕は動揺しなかったと思う。なにしろ一度死んだ記憶が残ってる。耐性がある。だけど、これは憧れだった。一度失ったものを取り戻そうという願いだった。
「……」
諾。思わず頷きたくなる衝動が強く沸き起こる。忘れかけてた前世の無念や転生してからの後悔が一つ一つよみがえる。僕は愚かで無力で……転生したのにまだ何もできない。もう一度やり直した方が……。
「旦那様、いけないの。そっちにいっちゃいけないの」
痛い!耳が痛い!噛みちぎられる!
「エ、エスリー!?なんで僕の耳をかんでるの!?」
「旦那様を正気に返して、ついでに血をいただいてるの」
噛みちぎられこそしなかったけど、エスリーは僕に抱きついたまま耳たぶをなめ始める。
まさか、耳から血を?
「待って待って!僕の血って」
「旦那様の血を吸って、エスリーは強い魔力を得るの」
僕の血肉は、ある種の魔物や妖精にはごちそうらしい。だけど、エスリーには早い!普通に魔力を与えることすら危険なのにそんなことしたら!
「いいの」
答えるエスリーの瞳が、髪が怪しく点滅している。さっきまでの感情もそばにいたはずの霊体たちも全部吹っ飛んだ。
「いけないよ!」
「いいの」
「だってエスリーの存在がどうなるか……消滅しちゃうかもしれないんだろ!?」
「消滅なんかしないの。旦那様を護るためなら、エスリーのエスはスーパーのエスになるの」
エスリーの光は点滅する度に次第に強まって、今では近くで見てるのもツライほどまぶしい。でも絶対に目をそむけない。
エスリーの唇には少し血が残ってた。それを舌先でなめる仕草は、普段の彼女らしくないけど、こんな場合だけど……少し色っぽかった。
だけど、その体温が熱い。呼吸が早い。大丈夫だろうか?
「……興味深いね。キミの妖精たちは実に献身的だ。今までの魔王に対する態度と違って、自主的に尽くしているようにしか見えないね」
「……エムリアさんには何度か裏切られて、エルダさんにはこういう目に遭わされてますけど?」
正直言えば、この状況でこんな会話なんかしたくない。エスリーから目を離したくもない。
「その家妖精だけが献身的だって思ってる?そうじゃないと思うよ。あの気まぐれで目立ちたがり屋の街妖精だってキミが呼ぶ前に察して転移してくるんだろ?」
「それこそ気まぐれじゃないですか。何より一番力のあるエルダさんにこんな目に遭わされてるんですよ!」
霊体はエスリーから発する光で船内から一掃されたみたいだ。点滅はやんで、今では一定の強さで光りっぱなし。
「エスリー・・・・・・大丈夫かい?」
僕を見つめるお姉さんの視線が気にならなくもないけど、今はエスリーだ。
「旦那様、エスリーのエスは・・・・・・まだスモールのエスなの」
「はい?」
・・・・・・なんか、不満そうだな。自分の胸元を見てる。なんだろ?・・・・・・あ?
「ひょっとして、少し身長伸びてる?」
「はいなの!」
ようやく僕の膝から降りて立ち、その場でクルリと回ってみせた。座った僕よりは背が高い。さっきまでは少し低かったから、5センチくらい伸びたんじゃないかな。トリ○ン族みたいに一気に成長しないみたいで、僕は少し安心したけど。
「・・・・・・妖精って成長するんだ」
「珍しいの」
「このレベルの妖精が今になって成長?魔王の契約妖精は過去140年以上成長しなかったんだよ?いやいや、これは珍しいを通り越してありえない現象だよ、弟クン!」
お姉さんの沸点は低いな~。成長したんだからいいじゃないか。おかげで助かったんだし。
船を包む光壁は、今では強い輝きで泡を跳ね返してる。
「でもエスリー、もうあんなことしちゃいけないよ」
僕の血肉を与えるのは危険過ぎる。もしもエスリーが魔力過剰で消滅でもしたら・・・・・・考えることすら恐ろしい。
「でも」
「でもじゃない!もうあんな危ないことしちゃダメ!」
僕にしてはかなり強く叱ってしまった。
「もちろんわかってる。エスリーがムリしてくれたおかげで僕たちは助かった。それはわかってる・・・・・・だけど僕なんかのためにエスリーが危ないことをするのはイヤなんだ」
「でも」
珍しく、素直じゃないエスリーに僕はいらだった。
「弟クン、それ以上は後にしたまえ。まだ何も終わってないよ」
お姉さんの声で、僕は少し冷静になった。よく見ればエスリーは泣きそうだ。口をとがらせたまま、でも、目が赤い。そして、叱られたのに、今も僕のための光壁をはったままだ。
「・・・・・・船首をあげます」
僕はいったん船務に逃げることにした。それが正解なのもわかってる。ただ、胸の奥が重く苦い。
「船首を?どうやって?」
お姉さんが聞き返してくれたおかげで、集中できそうだ。
「船尾の余剰スペースを水で満たします」
バラスト水だ。水そのものは、周りの王水から練成できる。
「この船に余剰スペースなんかあったのかい?」
だからお姉さんの質問は構造的なものだ。
「はい、お風呂ですよ」
推進機関の近くにあるスペースだ。狭いけど、浴槽じゃなくて浴室全体を水で満たせば、まあ、それなりに重くなるだろう。船首を上げるというか、船尾を下げる感じだけど、結果は近いだろうし。
「バラスト水、注水!」
船内の水精霊にバラスト水の管理を、土精霊に浴室の密閉をお願いした。風精霊は暇そうにふわふわ飛んでる。
「後で働いてもらうから、待っててね・・・・・・エスリー?」
エスリーの機嫌は直りきってないみたいだけど、僕の膝の上に座り直した。
「・・・・・・ここが一番落ち着くの。魔力もいただけるの」
さすがに背中越しではあったけど。
「はいはい・・・・・・いつもありがとう、僕の妖精」
エスリーは僕を背もたれがわりに体重をかけてきた。
「旦那様のそういうところはズルいと思うの」
エスリーの方がズルい気がする。だって、もう僕に怒る気持ちはカケラも残ってないから。
「機関、出力上げ」
機関助手の火精霊が、暇してた風精霊を連れてロケットの燃焼を手伝わせ始めた。よくできた精霊だね。推進剤はさっき水と一緒に練成しておいた。タンクいっぱいだ。精霊たちは慎重に少しずつタンクの推進剤を機関に投入していく。
「うん、上手だね」
浴室いっぱいに溜めた水のおかげで船尾が下がった。逆に言えば船首が上がった。
船室の床が斜めになってる。だから進めば自然に船は上に向かうわけだ。このままなら前方の隆起を余裕で越えられそうだ。
「速度、まだいけるね」
火精霊と風精霊がそろって敬礼してきた。いい加速だ。グッジョブだね。
「進路そのまま~よ~そろ~」
「弟クン、操舵手がいないのに進路もないだろう」
「それは言わないでください」
まあ、とりあえず、このまま海上までいけたらどこでもいいなって。甘いかな?




