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その9 国防ライブ

その9 国防ライブ


 都市国家レクアは小さな街だ。人口およそ1万人って、前世じゃ小さな村くらいの規模だけど、面積で言えばさらに小さい。さっき歩いた感覚だと、きっと1km四方もないかもしれない。さらにはその中央はあの湖があるという変則的な構造で、居住面積は狭そうだ。だから、湖の祭殿や元老院、シャルネさんたちの英士隊駐屯地や湖岸に接している。おまけを言えば僕たちの家もその辺りの対岸あたりらしいんだけど、僕はまだ窓からその景色を眺めていない。

 そんなわけで、街の防壁まで、すぐだった。こっそりついて行く必要もないわけで、わざわざ自分で目立ってシャルネさんたちを困らせた自分がバカにみえる。街妖精エムリアの警報は、街中の全家妖精にも発せられたとのことで、住民たちも兵士さんや衛士さん以外は今日の労役を免除され、自宅で待機しているそうだ。

「住民の安全を考えるなんて、この街の為政者、いいとこあるなあ」

 ここに来てから、ブラック一色としか思えなかったけど、台風でも土砂降りでも感染症が流行してても、とにかく「来い」といってた僕の職場よりはブラックじゃないかもしれない。

「バッカじゃない?労役を免除したのは、自宅で魔力を供出させるからで、労役中に暴動おこされたら面倒だからだよ」

「そうなの?」

「そ。おまけに今日の労役分の配給も節約できる。元老院にとってはいいことづくめじゃん。もち、毎日これだと生産落ちるから、今日だけ。明日は槍が降っても竜酸菌が降りても労役だね。下手したら午前中から一日中こきつかうつもりかもね」

 いい笑顔で黒い解説をしてくれたのは、僕のお目付け役という枠をつかみとったジナさんだ。ジナさんは英士隊の一員で、でも昨日の戦闘や今朝の僕の魔王斑鑑定で疲労し、魔力枯渇して頭痛があったので戦闘任務は断念することにしたはずなのに、戦闘禁止の厳命下で臨時に僕の警護として隊に同行する許可を得た。体調不良の彼女を働かせることになって、僕は申し訳なくて断ったけど、シャルネさんに無視された。ジナさん本人にも「いいのいいの。きつい二日目よりマシだから」って、よくわからないことまで言われて。

「モーリ様がいらっしゃれば、エルダ様が来てくださる可能性もないとはいえません」

 最後はシャルネさんもそう言ってたし。あ、あれ、そう受け取ったんだ?まあ、ミスリードは期待してたけどさ。

「しっかし、怪獣退治なのに徒歩で出動なんて盛り上がらないなあ」

 滝から出撃とか海底から飛び出すとか、せめてワンダバボイスが欲しいところでです。そためにも、ぜひ、かっこいい乗り物に乗ってほしいんだけどなあ。

「バッカじゃない?すぐ近くなんだから騎獣なんてむしろジャマ。そもそも魔族は魔術で戦うんだから、身軽な方が楽だしね」

 怪獣相手に、拳銃サイズの光線銃で戦うK特隊みたいに、軽武装に見合わない重火力がウリらしい。まあ、体格差が大きすぎるから、なまじな重武装は意味なしかもしれないけどね。その後も、騎獣の維持費がバカにならないとか、巨大な外敵相手に騎獣を制御する労力は意外に大変とか、リアルなグチを聞かされた。ジナさんは魔族でも高貴な生まれらしく、希少な金髪種だとか。そういえば、シャルネさんも他の魔族の子たちも銀髪だった。そのせいか、他の隊員とは少しぎこちないそうだ。

「ねえねえオスビト。隊長となにかあったんでしょ?」

「はい?なにかってなんです?」

「……にぶチンか?仕事一筋であの歳まで浮いた話の一つもなかった隊長が、さっき乙女じゃん」

「そんなことないですよ。シャルネさん、真面目だけど初々しいし、もてるんじゃないですか?」

「あんたって意外におば専?」

 僕の見た目が前世とほとんど変わらないせいか、十代後半のジナさんたちにもそんなに年上に見えないんだろうか?いや、待てよ?魔族って長命種らしいし、ファンタジー異世界のエルフみたいに、見た目年齢が実年齢の十分の一とかなんだろうか?

「あのぅ、シャルネさんって何歳なんです?」

「うわ、それ聞いちゃう?女の年齢を聞くなんてサイテー」

 ああ、異世界でもそうなのか?

「じゃあ、ジナさんたち、僕のこと何歳だと思ってます?」

「は?……あんた、ツノなしのオスビトで、その甘っちょろい感じだから、フツーに二十歳すぎくらいじゃないの?」

 そこまで?二十代半ばくらいには見てほしかった……このブラックな環境では、普通の人は老けて見えるのかもしれない。

「……じゃあ、僕とシャルネさんって、どっちが年下に見えます?」

「あんた」

 脳内で軽く計算する。僕二十歳すぎ<シャルネさん=シャルネさんは二十代前半つまり見た目通りって結論。そして……二十代前半で嫁き遅れかあ……ブラックだな。

 なんて話をしてたら、あっという間に南防壁についた。せまっ。いや、わかってましたけど。


 家よりは高い城壁を見あげれば、石の壁は老朽化がひどいのか、ひび割れ、一部は溶けてるみたいになっていて、あまり頑丈そうには見えない。いや、それより問題なのは、少し向こうに、あの、地の果てが見える。地平線なんてもんじゃない。地の果てだ。あらためて、すごく狭い!その向こうには黒い闇しかない。そして、やはり酸っぱい臭いがする。

「しばらく遭遇してなかったのに!」

「畜生!魔王様がおなくなりになったこんな時にか!」

「急げ!敵は近いぞ!」

城壁の上は騒がしいから、きっと大勢の守備兵がいるんだろう。

 しかし、空はやはりどんより暗く、よく見れば、半透明の膜らしいものに覆われている。

湖の上にもあったし、この土地はやはり全てその膜で覆われている。そして、それを透かしてぼんやりなにかが見えている……。

「いや、あれ、あんまり見たくないものだよね」

 きっと直視したら嘔吐しちゃいます。

 なのに城壁の守備兵が何か、灯りらしいものをそっちに向けたんだ。空気を読んでほしい。

 原始的な投光器に浮かび上がるそれは……やはり怪獣来た~!見たいけど見たくなかった!

「あれは大カイチュウだ!」

 訂正。カイチュウだってさ。それって、寄生虫?寄生虫というか……以前異動させられた食品衛生部門で読んだ資料によれば、正確には寄生動物の線虫の一種のことだろうか?確か多くは腸に寄生する……って、あんなでっかいのが、何に寄生してるって言うんだろう?

灯りに照らされてる、細長くてニョロニョロしてる姿は、小さくても気色悪いのだけど。

「……キショィ……モザイクかけてほしい」

 もう、思わず苦手な若者言葉が出るくらいだ。なにしろ、その大きさは、やはり怪獣と言っていいくらい。この城壁なんかないに等しい。

「いいかい、オスビト!絶対に近づくなよ」

「あんなの、頼まれても近寄りませんよお」

 そのニョロニョロした体が、空を覆う膜にぶつかり、弾ける。しかし幾度目かの衝突でついに膜が破け、そこからニョロニョロが入ってきた。投光器に照らされた箇所が体液で濡れてヌラヌラ光って、普通に見てるよりよっぽどグロいかもしれない。なんか酸っぱいものが僕の中からこみ上げる……うえ……ガマンガマン。憧れのリアル怪獣でも、アレはダメ。

「うわあああ」

「もうだめだあ!」

「臆するな!今こそ我らの見せ場ぞ!」

 城壁から上がった悲鳴を、しかし隊長さんらしい声が抑え込む。

「だけど、俺たちだけじゃあ、あんなの倒せませんよ!」

「泣き言を言うな。魔族の英士や鬼族の雄士たちが来るまで、時を稼ぐんだ!我ら人族の意地を見せよ!」

 魔族や鬼族。人族よりも長命で魔力やら体力やらも上らしいけど、この街の人種構成は複雑そうだ。魔族は全員女性で、鬼族は全員男性らしい。種族の生殖ってどうなってるんだろう?……いや、考えるの、やめよう。

投石器カタパルト、よ~っくねらえ!」

 人間の頭より大きい石弾を打ち出す射出機だ。何人もの兵士が大急ぎで土台の上で横棒をひいて回転させている。あれで向きを変えてるのか。下から見あげるとメーザー砲みたいな迫力だ。

弩砲アーバレスト、まだだ、もっと引きつける!」

 こちらは槍みたいな大きい矢を装備した、巨大な弩だ。とはいえ、カタパルトよりは小さくて狙いもつけやすい。どちらも伊〇部マーチが似合いそうだ。

 城壁にずらり並んだ攻城兵器みたいなものになんとかすがりついて、逃げだすのをこらえ、戦おうとしている兵士さんたちの姿は涙ぐましい。防衛軍というか、精鋭の志願兵なんだろうか?僕なら逃げてるね……って、なんで僕はこんな危険な場所で落ち着いていられるんだろう?吐きそうだけど。

「やっぱり一回死んだからかなあ」

 どこか他人事の僕がいる。なんの力もないし、頼りのエスリーもいないのに。

 キショイ巨大なニョロニョロが、上空からどんどん高度を下げて城壁に迫る。

「……まだだ!まだ!…………今だ!放てえっ!」

 隊長さんの号令で、一斉に放たれた石弾や弩矢がニョロニョロに向かう!僕が見る限り、そのほとんどは巨大なニョロニョロに命中した。ニョロニョロの体表はそれほど固くないのか、弩矢は突き刺さったが、石弾はポヨンと跳ね返って、僕の近くの城壁にぶつかった。バラバラって、崩れた城壁の破片が零れ落ちる。

「効いてないかな」

「あんなの、気休めにもならないよ」

 バカにしたようにジナさんが言う。城壁の上や外にも石弾が落下しているのは、やわらかい体表に弾かれたからだろう。一方弩矢は刺さってるけど……相手が巨大すぎて、どちらも効いてるようには見えない。

「弩兵、弓兵、撃て!その間に次弾、装填急げ!」

「ですが、効いてませんよ!」

「隊長ぉ~」

 僕は戦争とかわからないけど、城壁の兵士たちはよく頑張ってると思う。だけど、相手が巨大すぎて、時間稼ぎすらおぼつかないみたいだ。

「どうせ戦って死ぬにしても、あんなキショイ敵に殺されるのはイヤだよなあ」

 同情してしまう。魔法とかあるファンタジーな世界なら、ワイバーンとかドラゴンとか、せめて巨人とかにしてほしい。

「うぷっ……まったく、視覚だけですごい精神攻撃だね」

 さっき言ったばかりだけど、ワイバーンやドラゴンだって、見てるだけでここまでダメージはないだろう。特撮の怪獣たちは、テレビの視聴者をちゃんと意識してたんだな。

 どアップになったカイチュウを見上げて、ふたたび嘔吐感がぶり返す。これも一種の呪いじゃないかってくらい、ひどい。

「あんた、弱すぎ」

「ジナさんたちは平気なんですか?」

「仮想訓練で見慣れてるよ」

 ……それは実戦訓練という以上に精神耐性が身に付きそうだ。

「遅れました!魔族の英士隊です!」

 城壁から聞こえた声は、こんな時なのによくとおって、頼もしかった。

「よく間に合ってくれました!」

「英士のシャルネ隊長だあ!」

 あの半鐘を聞いてすぐ駆け付けただけあって、間に合った……判断が早いね。新入社員さんに見えたけど、やはり有能な人だ。

「なに言ってんの。早過ぎて、南城門の人族兵士がまだ増援の確認なんてお役所仕事してたから、あたしらより遅れちゃったのよ」

「でも、城壁の兵士さんたち、喜んでますよ」

兵士さんたちの反応、すごく好意的だしやはり有名なのかな。

「人族の兵士さん!今までよくこらえてくれました。あとは援護にまわってください!」

 シャルネさんは流れるように最前線の指揮権を掌握している。人族兵士は、種族カーストのせいかシャルネさんの人望のせいか、文句も言わず従ってる。

「……兵士さん、そのまま援護射撃を!みんなは、同期詠唱するわ。いいわね!」

「いいの、同調魔術なんて使って?」

「この辺りのマナが不足しちゃうよ」

「だからです。昨日みたいな各自の詠唱ではなく、今度は一撃で、そして最小のマナで最大の火力を。そうしないとアレも倒せないし、長引けば光壁もなくなります」

 数秒後、シャルネさんと彼女に率いられた女の子たちから白銀の光があふれ、それが一つの巨大な白銀の矢になった。いや、あれじゃ、もう槍って感じ。

 その間も兵士たちが、投石器や弩砲、或いは弩や弓を次々打ち出していた。もちろん効いてないだろうけど、少しはニョロニョロの注意をひきつけてると思う。

「……魔力矢マジックアロー!!」

 そろった声で術式を唱え、その矢というにはあまりに巨大な白銀がニョロニョロに向かう!僕も思わず「当たれえ」って叫んで。

「バッカじゃない?当たるまでが術式なんだから、外れるわけないでしょ」

この種の魔術は外れないってことは、この時の僕はまだ知らなかったけど。

「あ~あ。あたしもみんなと戦いたかったなあ」

白銀の巨大な槍はカイチュウの先端に的中した!

 まあ、僕には頭と胴体の境界が区別できないから先端って呼んだけど、そこに矢が炸裂し、消し飛んだ!すごい威力だ。そして、そこから飛び散る体液が、気持ちワル!キショイ、キモイ!で、飛び散った体液はやっぱり辺りをジュウジュウ音を立てて腐食させる。イヤすぎる。

 そして一部吹き飛んでも、大カイチュウは動き回る!効いてないとは言わないけど、あれ、痛覚ない以前に五感がないんじゃないか?急所がないし全身消さないと倒せないんじゃあ?

「あんなでっかいの、全部消す?」

 兵士さんたちの兵器でも、シャルネさんたちの魔術でも、それは到底不可能に思えた。いや、エスリーがいてもムリじゃないかな。正直言ってエルダさんが来てくれる気もしてない。

 こんな暗くて狭い土地で、なんとかしがみついて生きてる人たちには悪いけど、僕にはどうしようもない気がする……ただ、もくろみがないわけじゃない。

「隊長~」

「もうだめです!」

 僕が魔王になってたらって一瞬思ったけど、正直魔術も使えない僕が魔王になったからってあんなの消滅させる方法が想像できない。

「きゃあ!」

「あ、シィナのバカ?」

「くっ!」

 城壁の上でまた悲鳴が上がった。僕は答えのでない問いを中断し見上げた。

「え?人が落ちてくる?」

 魔力を使い過ぎたのか、跳ね返された石弾から避けるせいか、誰かが落ちそうになったのをかばって別の誰かが落ちてしまった。そして、薄暗い中、その人の背中の小さな翼やらお尻の上の尻尾やらが僕にはばっちり見えてしまった。

「そのせいじゃありません!」

 そうそう。僕がとっさに動いたのは、あくまで反射的な行動です。別に翼とか尻尾のある女性が好みとか、そんなことは……関係あるかないかと言えばありますけど。

 僕の体は思ったよりよく動いた。前世では通勤以外は歩くこともままならなかった運動不足とは思えない。おかげで間に合って、落下の加速でずっしりきた衝撃にも、僕は重いなんてセクハラめいたことを言わずにすんだ。

「……モーリ様?」

「あれ、シャルネさん?」

「アリガトウゴザイマス」

「ドウイタシマシテ」

 こめかみから見える小さなツノに、凛々しさの中にも隠せない初々しい顔は、さっき駐屯所で別れたシャルネさん、その人だ。

 大丈夫ですかすら言えない僕です。腕の中のシャルネさんは、あのカッコウで、つまりは僕からすれば半裸なんだけど、そこはご本人は気にしてないみたいで。

「隊長~」

「シャルネ様~お怪我は!?」

 彼女を案じる仲間の子や兵士さんの声がする。そしてジナさんがお怒りだ?

「隊長!シィナなんて助けて、隊長自ら落ちるなんてダメじゃないですか!」

「ジナ、ごめんなさい。でも一人の犠牲も出したくないの」

 組織論で言えば、ジナさんが正解なのは、僕だって社会人だったわけでわからなくはない。命令系統が機能しないと組織は動かない、なんてさんざん上司から聞かされた。

「シャルネさん、大丈夫ですか?」

「モーリ様……またもお助けおただきありがとうございます」

「あ、いえ、その……無事みたいでよかったです。仲間の子をかばって落ちるなんて、エライですね」

「お恥ずかしい。部下を思うのは当然ですが、そのために隊長が先に死んでしまっては失格ですね」

管理職としてはそうかもしれないけど、部下からすればうれしいと思う。

「あんたは甘ちゃん過ぎ!」

 ジナさんだって、シャルネさんが無事だから怒ってるわけで、まあ尊敬はしてると思う。翼も尻尾もバタバタ動いてるし。

「モーリ様!城壁が崩れます!」

 いけない。僕はシャルネさんを抱えたままダッシュした。不思議というか、ゲンキンというか、さっきまで他人事だったのに、自分が危なくなって、しかも誰かの命を預かる身になってしまうと、途端に真剣になる。だけど、僕ができるのは逃げることくらいだ。

 跳ね返った石弾のせいか、飛び散る体液のせいか。もともとぼろかった城壁の表面があっさりはがれ、落ちてきた。

「モーリ様、わたくしを降ろしてください」

「別に重くなんてありませんよ」

「そうではなく……城壁に戻らなくては。隊長が逃げるわけにはいかないのです」

 責任感つよ。マジメか……っと、苦手なはずの若者言葉がでちゃいそうだ。僕はアラサーだったけど、それ以上にガチャガチャした雰囲気が苦手で、そういう後輩は避けてたかも。いや、先輩もか。つまりは賑やかなのが苦手な方だ。だから、さっきの若そうな子たちは、ちょっと苦手だ。……いや、シャルネさんも若いんだけど。

「あの、モーリ様?」

 いけない、いけない。20代はじめっぽい若い子相手に、僕が見とれるわけがない。そりゃ浅黒い肌にツノ、翼、尻尾は摩耶ちゃんに似てるけど、あれは二次元のAI彼女で、この人は三次元の、ってか異世界の人だ。

「なんでもありません」

「……隊長をガン見しすぎ!」

 前世では、僕はもう少しで魔法使いの有資格者になるところだった。まあ、二つの世界を通算すれば、簡単にそういう魔法使いにはなれそうだ……。もっとも、この世界はもう終わりそうだけど。

 よどんだ空を背景に、先端がなくなった大カイチュウは、体液をまき散らして崩れかけの城壁に近づいていった。おそらくもう街からも丸見えだろう……エスリー、僕を心配してくれえるかな?僕は逃げ出すように別れてしまった幼い家妖精を思い浮かべた。

 

 シャルネさんを抱きかかえたままの僕に、巨大なカイチュウが迫ってくる。実物は僕たちを見てるわけじゃないけど、近づくだけでその体液がまき散らされて、あちこちでジュジュウと煙をあげる。

「モーリ様!」

 シャルネさんが僕の腕から飛び出して、そして僕の前に立った。シャルネさんの視線を追って上を見上げると、まるでコマ送りのように大カイチュウが迫ってきた。シャルネさんは両の腕に白銀の光を漲らせ、アレに立ち向かうつもりだ。だけど……。ムリだ。そんな力があるんなら、彼女はとっくにやってるはずだ。

「ご安心ください。この命に代えてご恩はお返しします。どうぞ、このスキに!」

「隊長、あたしも!」

「ジナはモーリ様の護衛でしょう!」

 恩??彼女に貸した恩なんて僕にはない。もし返すとしてもそれはエスリーにだ。こんな僕なんかに返そうとして自分が死ぬなんて、そんなまちがってる。なにより、こんな自己犠牲なんて大っ嫌いだ!何かを背負うつもりはないし、何かを守る力もないけど、もうイヤなことをガマンするのはイヤなんだ!

「……魔王と妖精の間にむすばれし古の契約に基づき、我は汝を召喚する!」

 それは、かけ事が嫌いな僕の、おそらくは人生最大の賭けだった。まあ、転生二日目の人生ですが。

「街妖精エムリア!ここにその姿を顕現せよ!」

空が、街が、真っ暗になった。一瞬だけ、静寂が暗黒を包む。


 チャンチャンチャン、チャチャチャ、チャンチャンチャン!

 チャンチャンチャン、チャチャチャ、チャンチャンチャン!

 その、切れ味鋭い音響に破られた静寂。僕はなんていうか……後悔というか敗北感でいっぱいになった。

「なに、この場違いな音響?」

 まるで、昔のバブル期を象徴するような音楽みたいだ。オマケにさっきまで暗い空が一斉に強烈な極彩色でケバケバシク彩られて……そして、スポットライトのように一か所に照明があつまった?その、空中に浮かぶ、一人の影……

「ジュリアーノTOKIOか!?」

 昔有名だったディスコホールの名前が浮かぶ。無駄にあざとい演出だ。僕はこういうのはスキじゃない。シャルネさんもジナさんも呆気にとられたか棒立ちで、城壁の上の兵士さんたちも茫然としてる。挙句に、大カイチュウまで動きを止めてる。え?こいつ、目も耳もないよね?

「マオマオサマのエマエマコールでビョウでサンジョー、キュウっとキュートなの~」

 右手に短い杖をもち……マイクか?……左手に羽扇子みたいなの持ったその少女だけど。

「ゴメン、なに言ってるか全然わかんない」

 はっきり言えば、聞いてるだけで頭が痛い。もともと僕は子どもが苦手で、特に賑やかな子は苦手だ。その経験の中でも、今は最大級。

「あんだがそれ言う?少しはあたしらの気持ちわかった?」

 まるであの子の同類を見る目で僕をにらむジナさん。僕、そんなにわからなことばかり言ってた?

「ああ、街の魔力がムダに消費されてます!」

 突然正気に戻ったシャルネさんは、マナの流れが異常なことに悲鳴をあげた。どうやら光壁を維持するのに必要な魔力とかが、あの照明とか音楽なんかに魔術的に使われているらしい……それって、ピンチじゃん?思わず空に浮かぶ少女に目を向ける……あ、目があった?

「マオマオサマ~下からのぞきこむのはマナー違反なの~。デキンになるの~」

 デキンってなんだ?というより、そういう注意をする?

「だったらそんな短いスカートはくなって言いたい」

 そもそもマオマオサマって、僕に言ったのか?

「大丈夫なの~これ、中は見えないように魔法がかかってるの~」

 パニエじゃないの?そういう魔法ってあるの?聞きたいけど、聞いたら、ヒトとして終わる気がする。特にシャルネさんに聞いたら即、セクハラ認定されそうだ。

「あの子がエムリア?僕を、イヤ、街を護る街妖精の?」

 僕には三体の契約妖精がついている。湖底でママはそう言った。だけど地上に上がって出会った妖精はそのうち二人だけだ。家妖精のエスリーに国妖精のエルダさん。だから、街妖精エムリアさんの名前を聞いた時、或いはって思ったんだ。ここで外れたら、最悪だったけど。

「おおおおおおおっ!」

「エムリアちゃんの降臨だあ!」

「10年ぶりのライブだぞ!」

「生でエマ様を見られるなんて……うう。俺、兵士になってよかった……」

「泣くな!俺もだあ!」

「わかる!わかるぞお!」

 城壁の兵士さんたちが大変なことになっていた。まるで高校の学園祭にアイドルが来たみたいな騒ぎだ。マジでライブってなに?

「……街妖精のエムリア様は、街の住民の魔力を得て街を護る妖精なのよ。だから、街の住民、特に人族、もっと言えばオスビトにすごい人気あんの」

「エマ様とも呼ばれてるんです……自称がエマエマなので」

「はあ」

 アイドルにもいたよなあ。歌や踊りはうまくても、トークさせたら壊滅的に意味不明って子が。どうやらエムリアもそっちらしいと僕は思うことにした。

「んで、滅多にしないけど、エムリア様はたま~に街を護る防衛行動に参加することもあんの。それを一部のファンがライブって呼んでるわけ」 

 まさにアイドルっていうか、国防ライブか?怪獣から国を守る神聖な行為をアイドルのライブなんかに例えていいのか!?

 こんな子、呼んでよかったんだろうか……不安だ。不安しかない。

「兵士のみなさあん。街の住人さあん。みんな、エマエマにマリョマリョ捧げるの~」

「捧げます!」

「俺の魂はエマ様のものだあ!」

「なにを隠そう、俺だってえ!」

 兵士さんがさらなるヒートアップを続けてる。怖いくらいだ。なんかの宗教か?

「マリョマリョってなんです?」

「おそらくは魔力のことだと思われます」

「ほら、ニブイあんたでも空見ればわかるでしょ」

 兵士さんから、街の家という家から、白銀の塊が集まってくる……エムリアさんめがけて!それは流れ星のようでもあり、銀の雨のようでもあり、その幻想的な美しさに僕は飲まれた。そして。宙に浮かぶエムリアさんが自ら光り始めたんだ。

 顔そのものは、エスリーに似ている。でも彼女が少し成長したような、中学生くらいの年代だ。でも、柴犬の仔みたいに、かわいいけどどこか凛としてるエスリーとは印象が全然違う。

 金髪ツインテールっていうのかな?そういう髪形だけど、ピンクやらオレンジやらイエローやらのリボンにまみれて、服もミニのドレスだけど、フリルだらけで、それが空から照らされる照明でコロコロ色合いを変

「まさに街妖精エムリア様……確か以前の防衛行動は、先々代のルビウエラ様の治世だったと聞いていましたが」

「シャルネさん、あの子、知ってるの?」

「知ってると言うか……先代様の治世ではあまり姿を見せませんでしたが、エムリア様というのは」

 先代の魔王さん時代はなぜかあまり積極的な行動はしてなかった?

「この街の家妖精を統べる、街妖精です。レクアの街の精霊たちもまた、エムリア様に従い街を直したり動かしたりのです」

 ……街のインフラを管理する、みたいな?それ、すげえ重要じゃん!?あんな子でいいのか?なんか、聞けば聞くほど僕の不安が増えてく。安心したいのに不安要素を見つけてしまうのは、僕の前世のなおしたい悪癖だったけど。

「ですから『管理者』とも呼ばれております」

 エスリーが魔王の護衛兼世話係で『守護者』、で、エルダさんが外敵から国を守る『討滅者』で、エムリアさんが街妖精を管理し統括する『管理者』ってことらしい。

「しっかし……あの大カイチュウより印象濃い……」

 はっきり言って、カイチュウの存在感、消えました。

 言ってる側から、エムリアさんが短い杖に向かって叫ぶ。

「風精霊さんたち~エマエマのお願いなの~」

「ああ!?辺りの風精霊たちが集まってきました!?」

 前世では精霊なんて見たことなかった僕だけど、いや、見えたら見えたで終わってた気もするけど、ここに来てからはなんか見える気がする。半透明の、羽つき女の子が風精霊シルフで。つまり街中の下位の風精霊たちがエムリアさんの声でやってきた。それなら、どんなすごい魔術が!?なんて、思わずすごいファンタジーを期待した僕です。

「ビュビューンなの~」

 まさか超神か?っと一瞬期待した僕だけど、いや、あれはビ〇ューンだから違うか。スカ〇剣もないし。で、せめてファンタジーな魔術に期待したんだけど、そっちも外した。だって、街中の精霊を集めて、街を護る妖精が唱える魔術の詠唱だよ?元中二病患者としては、もっと、こう、なんかないって思うんだけど。

「これが擬音詠唱なのですね!」

 でもシャルネさんは感動してるらしい。擬音って、オノマトベか?

「音で、精霊に術者のイメージを伝えることで、精霊がそれを具現化するという……臨機応変な効果をもたらすという点では無詠唱魔術よりもある意味高度な詠唱術なのです!」

 さっぱりわかんないです。

だけど、そのビュビューンの音に合わせたように、風精霊たちはまるで訓練されたかのように一斉に動いた。

「ビュ」の音が幾筋もの烈風を起こして、次の「ビュ」でその一つ一つが鋭利な刃物のように大カイチュウを切り裂いていった。最後に「―ン」の部分でカイチュウは寸断され、流れ出た体液も風と一緒に飛ばされ、いや、それどころかその風圧は破片となった大カイチュウ自身まで半透明の膜の外に追いやっていったんだ。

「わたくしどもがあれほど苦戦し、なすすべもなかった相手をかくも容易に……」

 シャルネさんは努力家で真面目なんだろうから、素直に感心してるみたいだけど、一歩間違ったらやる気なくしかねないよなあ……。だって、あのふざけた詠唱で、バカみたいな威力……まじめに魔術を勉強してる人が無力感を抱きそうだ。

「ああ、エムリア様あ」

「こっち見てえ」

「E!M!U!R!I!A!略してE、M、A!EMA!」

「E!M!A!エターナル!ミラクル!アイドル!」

 アイドルなら「A」じゃなくて「I」だろうって思うんだけど、そもそも転生したての僕がここの言語を普通に理解してる原理が不明だから、つっこむ自信がない。

 だけど、ここの人たちは全員素直なのか、助けられた恩かなんかでバイアスかかってるのか。みんな手を振り回しての大盛況ぶりです。僕はこういうの苦手なんだよな。

「みんなあ。エマエマが来るまでよく頑張ってくれたの~アリガト~」

 だけど、エムリアさんがみんなを褒めたのはエライって思う。だけど苦手なものは苦手だし。だから僕は、まるでアイドルのコンサート会場みたいになった城壁から逃げ出して家に帰ろうとして……困った。家ってどこ?はっきり言って家がどこかわからない。

「モーリ様、どうかなされましたか?」

 迷子です。素直に言っていいものかどうか?

「マオマオ様~!」

 あ、来ちゃいけない人が来ちゃった。浮かんでた空からゆっくり僕の方に、つまり城壁の下に降りてきた。どういう原理で飛んでるのかは疑問だけど、それ以上に逃げたい。前世でも、アイドル好きの……オタまではいってなかったと思う……同僚がいて、よく布教活動してたけど、僕はついていけなかったんだ。「俺のいち押しゾンビ系アイドルユニット、黄泉平坂44は超萌え!」っていくら熱く力説されても僕の想像力では追いつかなかったんだ……いや、アイドル系ゾンビユニットだっかたな?当時はゾンビブームだったからな。

「エマエマ、お腹ヘリヘリだからマリョマリョ頂戴なの~」

「……ゴメン、なんて言ってるの?」

「モーリ様?なぜわたくしにお聞きになるのですか?」

「あんた、ほんとにへたれだね。せっかくエムリア様がわざわざあんたなんかに話しかけてるのに」

 ……できれば目を合わせたくない。直接話なんか論外。

「エマエマは、この後、ヒカヒカをナオナオするの~。だからみんなのマリョマリョだけじゃ足りないの~」

 ヒカヒカをナオナオ……意味わかんないんですけど。

「あんたねえ……ほんと頭ワル。もろくなった光壁を直すのに魔力がいるって言ってんだろ?」

「ジナさん天才!……で、なんで僕?」

「だってマオマオ様のマリョマリョ、濃ゆいの~。お子様のエスエスじゃ、お腹コワコワだけどエマエマは大人だからオケオケなの~」

 JCというか、ミドルティーンというか、中学生アイドルを大人と言う常識は僕にはない。

「でも、あれ?エスリーと僕のことは知ってるんだ?」

「すべての家妖精はエマエマのカリカリなの」

「街中の家妖精は全部、街妖精エムリア様の管理下にあるから、エスリー様の魔力状態を通してあんたのことくらい把握してたってわけ」

 流れるような同時通訳はジナさんです。あ!?

「じゃあ、マオマオ様って……魔王様ってこと?」

 なぜか全員ずっこけてた。シャルネさんまで。ジナさんにはニブすぎって叱られたけど。

「それは誤解だ。僕は魔王じゃないし、魔王になるつもりもない」

「モーリ様?」

「マオマオ様、マオマオにならないの~?でもエマエマにマリョマリョをサポするのはマオマオ様しかいないの~」

「サポはやめて!」

 援助とか活動とかにもいろんな意味が含まれるのが、面倒極まりない僕の常識だ。まして中学生アイドルにしか見えないエムリアさん相手に論外だ。

「でも、光壁を修復するのに僕の魔力が必要なら、それは協力したいんだけど……それは僕と契約してくれるってことでいいの?」

「エマエマはいいの~でもエマエマはゲロゲロの言うこと聞いてたから、それでもいいの~?」

 ゲロゲロと聞いて、さっきまでこらえていた嘔吐感がぶり返した。

「モーリ様は寛大なお方ではありますが、契約妖精でありながら元老院に従っていたエムリア様をお許しには」

「え~?隊長、こいつを買いかぶり過ぎです。こいつ、可愛ければなんでも許しちゃいますよ」

「……待ってください?その、ゲロゲロって元老院!?魔王の契約妖精が元老院に従ってたんですか?」

 そういえば、街妖精の名前を出した時のエスリーの表情……おかしかったな。そんな複雑な僕の胸中だけど。

「そうなの~だってルリルリ様ってば、エマエマたちのこと、レグレグしてたの~」

「あーそれあたいも聞いたことある。なんでもルリエラ様と契約妖精は仲悪いんじゃないかって。だからルリエラ様の時代は防衛行動もなかったんだよ」

「ジナ!大事なことを憶測で語ってはいけませんよ」

「はい、隊長!すみません!」

 ……先代の魔王さんに冷遇されてた?でもなあ、芸能事務所の移籍じゃあるまいし。

「細かいことはいずれちゃんと聞きます。だけど、街を護ってくれてありがとう」

 多分僕は、初めてまっすぐエムリアさんにむきあったんだ。彼女はエスリーに似た顔でなぜかドヤ顔してた……悪気なしかい。

「へへへ~マオマオ様、ホメホメありがとなの~」

 ……そうか。さっきも兵士さんや住民のみなさんにちゃんとお礼を言えてたし、こんな面倒くさい子でも、彼女の中では、ちゃんと信賞必罰がとれてるんだ。

「エムリアさん、光壁を修復してくれるのに、僕の魔力が必要なら、どうぞ使ってください」

 魔術も使えない僕だけど、その源の魔力だけはたくさんあるらしい。だけど直接魔力を渡すって、どうすればいいのかわからない。エスリー相手には禁止だったし……ちょっと期待と不安が交錯します。

「指でいいの~」

「え?」

 まさか指一本よこせ?ヤクザか?

「フェアリーリングをはめてる指なの~……かみかみするの~」

 あー……それね。エスリーもやってたやつ。ホッとした半面、僕の右人差し指をあまがみし始めたエムリアさんを見て、絵的に危なくないかって思わずシャルネさんたちを見てしまう……セーフみたい。僕的にはペットと飼い主みたいで問題なんだけどなあ。

「チュパチュパなの~カジカジなの~」

 けっこう強く吸われて痛い。エムリアさんの顔を見ると、夢中で吸い付いたままだ。ふだんあまりかまわれてない猫が、たまに飼い主にかまわれたがる時って、こんな感じなのかもしれない。そんな僕を見るシャルネさんたち。地味に反応が怖かったりする。

「……モーリ様、平気なのですか?」

「え?ちょっと恥ずかしいですけど」

「そっち?あんなすごい勢いで魔力吸われてるのに?」

「頭痛とか悪寒とかはありませんか?」

「とくになにも」

 シャルネさんが言うには、魔力を急激に失うと、そういう体調不良になるらしい。毎朝魔力を捧げてる住民は大変だね。

「素で鈍いんだ……」

「ジナ。違いますよ。モーリ様は魔王たるにふさわしい魔力をお持ちなのです」

「それも違うと思うんですけど。魔力だけで魔王になるのは、難しいと思いますし」

「モーリ様?」

 不思議そうに僕を見つめる銀の瞳がきれいだった。


「ふう~ヒサヒサにミタミタなの~」

 ようやく僕の指から口を離したレムリアさんは、自分の唇をペロってなめた。

「マオマオ様~、エマエマ頑張ったの~。でも、兵士さんたちも頑張ったの~。街の人も魔力くれたの~。だからマオマオ様からもみんなにお礼を言ってほしいの~」

 エムリアさんは、意外なことにこういうところでは気配りさんというか、筋が通っている。

ファン相手に慣れてるのかもしれない。だけど、僕は魔王じゃないし、人前に出るのは嫌いだ。だいたい僕の街でもないし、みんなを褒める立場じゃない。

「それ、エムリアさんからお願い。僕は魔王かじゃないし、なる気もない。そんな僕がお礼を言っても、みんな困るだけさ」

「……でもマオマオ様がいないと、エマエマはいいけどエルエルもエスエスもいつか死んじゃうの~」

 街妖精エムリアさんは、魔王と住民の、二つの魔力供給源があるらしい。2WAYだね。だから魔王がいなくても存在できるし、不自由だけど活動もできる。だけどエルダさんやエスリーは違う。この指輪の持ち主だけが、彼女らの魔力を支える。

「だけど、魔力の源を魔王って呼ばなくてもいいんじゃないかな」

「はあ?あんたさっきからなに言ってるの?」

「ジナ!……ですが、モーリ様。魔力の不足は深刻で」

「シャルネさん……僕は思うんです。魔王と魔力源は別でいいって」

大きく目を開くシャルネさんとジナさん。そして満腹して話に飽きたのか、さっさと光壁の修復に向かったエムリアさんだ。城壁の兵士さんたちの歓声に応えながら空を飛んでぼんやりしてる光壁に向かっていった。

「シャルネさん……以前お願いしましたけど、僕はイシャナさんと会いたいんです。僕は彼女をすぐに魔王にしたい。そして、必要な魔力は僕が提供する。そういう提案を元老院にもしたいんです」

 元老たちが権力を握りたいなら握ればいい。イシャナさんが先代の遺志をついで魔王になりたいならなればいい。そして僕は、この世界を救ってみせる。それが今の僕の結論だ。

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