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出会い

 戦いには、慣れている。

 だが、背後の人物を守りながら戦う術には、ダーグは慣れていなかった。

 それでも。大木の根本に蹲り、血が流れ出る腕を庇う部下の呻きを確かめる間も無く、左右から襲ってきた盗賊らしき輩の刃を腕を伸ばして払いのける。そのまま、ダーグは右の盗賊の腹を蹴り、地面に伸した。しかしそれでもまだ、立ち塞がる影は消えない。ダーグの前で短刀と短槍を構える戦い慣れた二人の男の向こうにいる、余裕の笑みを浮かべた肩幅の広い男の姿に、ダーグは唇を噛まずにはいられなかった。部下が怪我をしてさえいなければ、一足で、あの傲慢な首を掻き切ってやるのに。

 その時。ダーグが思い描いていた正にその通りに、肩幅の広い男の首から鮮血が吹き出す。笑みを浮かべたまま地面に頽れた男に驚愕するより先に、ダーグは目の前の短槍の柄を掴み、短槍を持った男を短刀を構えた男へと放り投げるようにぶつけた。バランスを崩し地面に倒れ込んだ二人の男の喉に、無造作に剣を突き刺す。その時には既に、ダーグと部下を囲んでいたもう一人の盗賊も地面に倒れていた。そして。

「少し痛みますが、我慢してください」

 いつの間にか、小さな影がダーグの背後に回っている。青い顔をした部下の腕の傷に水筒の水を掛け、手を翳すその静かさに、ダーグは息を飲んだ。最初に、余裕の笑みを浮かべたあの盗賊の首を掻き切ったのも、こいつだ。翳した手からの光が部下の腕から流れる血を止めたところを見ると、こいつは魔法の素養も持っているらしい。こいつは、……何だ? 警鐘を鳴らす心のままに、ダーグは目の前の華奢な人物をじろじろと眺め回した。肩に掛かる、黒くしなやかな髪。女にしか見えない横顔。しかし武と魔法の素養は、目にしている通り。

「これで、大丈夫でしょう」

 不意に、目の前の小さな影がダーグの方を向く。白い顔が浮かべた微笑みに、ダーグは一瞬、全てが真っ白になった。

 そのダーグに一礼して、華奢な影が去る。

 剣を背にしたその後ろ姿を、ダーグは呆けたように見送った。

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