プロローグ
1年というのは、4月に始まって4月に終わる。
出会いと別れも同じ。
4月1日と4月2日。
その境界線でわけられた4月。
同じ4月なのに、違う4月。
4月と4月に挟まれた1年。
毎年同じ様に回ってくるけれど、毎年同じにはならない。
その年その年に新たな出会いがあり別れがある。
過ぎ行く時の流れをどう感じるかは人それぞれ。
4月から4月へ―……。
始まりの4月がその1年のスタートをきった。
都心から少し離れた静かな高台にある架音学園の桜が咲いている。
架音学園は初等部から高等部、それから大学まである一貫教育の学校だ。
歴史は古く、学園の敷地内の至る所に、その証拠となる石像やら、建造物がある。
その中でも、旧校舎には色々と曰わくがあったりする。
他にも今時珍しい伝説的なものが多々あるのだ。
だだっ広い学園の敷地の一番奥にある垂れ桜がその1つ。
2、3年に1回あるかないかだが、時たまこの垂れ桜は狂い咲きをするのだった。
そして、狂い咲きしたこの垂れ桜の下で告白し結ばれた2人は永遠に幸せでいられるという言い伝え。
しかし、そんな言い伝えを知っている生徒も時がたつにつれ減ってしまい、今では垂れ桜の存在ですら知らない者が大多数だ。
使われなくなった旧校舎に代わって、綺麗な新校舎が学園唯一の校門に一番近い場所に建てられたというのも原因の1つだろう。
好き好んで学園の一番奥に行く人間はそういない。
そんな垂れ桜は今年もひっそりと咲いていた。
そう、物語はここから始まる。