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パーティーメンバー

朝飯は固いパン、チーズ、野菜のスープとシンプルなものだった。

不味くはないが食事は日本のクオリティには敵わないようだ。

残念だけど食事にそこまでのこだわりはなかったし仕方ないか。


俺はギルドの入り口の前に立っている。

二階建てで周りよりかなり横に広い建物だ。入り口の扉が開け放たれている。

俺は期待と不安を抱きながら恐る恐る中に入った。


ギルド内は意外と人が少なかった。

もう他の冒険者はクエストに向かったのだろうか。

入ってすぐに受付、奥には食堂兼酒場があった。

壁に貼られたクエストが書いてある紙や、カウンターの向こうにある剣や鎧をみると、想像していたギルドって感じ。


そんなことを考えながら周りをキョロキョロ見渡していると声をかけられた。


「ようこそ冒険者ギルドへ。何かご用ですか?」


優しそうな20代の女性が笑いかけてくれた。

日本のOLのような制服を着ている。

受付さんだろうか?


「シリウスといいます。今日から冒険者になる神官なのですが」


「ああ、今日がデビューのパーティーの方ですね。話は聞いていますよ。食堂の一番手前のテーブルにどうぞ。他の皆さんもお揃いですよ」


そう言って食堂の方を指差された。

俺はお礼を言って歩き出す。


いよいよパーティーメンバーとの初顔合わせだ。

やばい。けっこう緊張してる。

顔も洗った。服も汚れてないか確認した。


大丈夫か?大丈夫だよな?

変な風に見えないよな?

怖い人だったらどうしよう?

考えたらまだこっちの世界初日で知らない人とか怖すぎる。

別に日本でもコミュ力高い訳じゃなかったんだよなぁ。


言われたテーブルを見るとすでに4人が座っていた。男1人、女3人。

テーブルの前に行くと全員がこちらを見る。


うう。緊張する。

落ち着け。俺はもう今までの水瀬達也じゃない。

今日から僕は神官のシリウスだ。

見た目は爽やかなイケメンだからきっと大丈夫だ。


「初めまして。神官のシリウスと申します。皆さんどうぞよろしくお願いします」


よっしゃ言えた!


「おう!こっちこそよろしくな。ちょうど全員揃ったし順番に自己紹介するか。

俺はカデット。職業は戦士だ」

かなり親しげにに話しかけてくれた。

威圧する感じもない。

精悍な顔立ちで漢らしいイケメンって感じ。そして燃えるような赤い髪と瞳。

革鎧と金属の胸当、左手には盾をつけている。

剣は椅子に立てかけてあった。見るからに駆け出しの戦士だ。


「はーーい!同じく戦士のミトでーす!アマゾネスです!みんなよろしくー!」

片手を大きく上げて、満面の笑顔で自己紹介してくれた。かなり元気そうな女の子だ。しかも可愛い。ただ何故だか頭が空っぽそう。

赤みがかった茶髪を後ろで一つにまとめている。

小麦色の肌で胸を布で覆っていることとパレオのような腰布以外は何もつけていない。

全裸とまではいかないがほぼ水着みたいな格好だ。

しかも鍛えているのか腹筋は割れる寸前まで引き締まっており、それなのに胸は人並み以上にある。


最高のスタイルだ!

目のやり場に非常に困る。

素晴らしい。


「私はシルビア。魔法使いよ。よろしくね」

こちらは切れ長の紫の瞳で、クールなお姉さん系の美少女だ。

黒髪を肩にかからない辺りで切っている。身体にピッタリとした黒いドレスの上にローブを羽織っている。自身の身長と同じくらいの杖を持っていた。

ただ胸がとても大きい。何という爆乳。

羽織ったローブまで持ち上げている。

魔法使いは胸に魔力を溜め込んでいるのか?


パーティーの5人の内、4人が自己紹介をしたので、まだ自己紹介をしていない少女に全員の視線が集中する。


ただこの子はまだなにも喋らない。

話そうとはしているようだが声が出ずにあわあわと慌てている。


見たところ同い年くらいの女の子だが長い黒の前髪に隠れて顔がよく見えない。


なにも話そうとしないその子を見かねたのか、アマゾネスのミトが話しかけた。

「次はあなたの番だよー元気よくどうぞっ!」


女の子はびくりと肩を震わせた。

何か言おうとしているのか、口をパクパクさせているが言葉は出てこない。


そんな彼女を見てなんとなく分かった。

多分、この子は極度の人見知りだ。

初対面で緊張してなにも喋れないんだろう。

そんな子に向かって元気よくどうぞとかイジメか?このアマゾネスは?


ミトの方を見ると無邪気にニコニコと笑っている。


あ、こいつは天然だわ。悪意全くなし。

でもこの人見知りっ子にしてみればちょっとした恐怖だよなぁ。


実は僕だけは鑑定スキルのおかげでこの子の名前は分かっている。

人見知りっ子の頭の上に白い文字で情報が表示されていた。


<<エリーゼ

職業:魔法剣士>>


ってそれだけかよ!

まだ鑑定スキルがレベル1だからか?

表示される情報少ないな。


まだ人見知りっ子はもじもじとしていた。

アマゾネスのミトはニコニコして待ってる。

戦士のカデットは苦笑いしつつも見守っている。

魔法使いのシルビアは何故喋らないのか分からず、すこし怪訝そう。

本人も辛そうだし助け舟を出してやろう。


「ええと、エリーゼさん。職業は確か……魔法剣士だったかな?」


俺はなるべく優しく聞こえるように話しかけた。

人見知りっ子ことエリーゼは顔をあげて俺を見た。

長い前髪で顔は全部見えないが驚きの表情を浮かべていた。

ちょっと涙目にも見える。

そしてブンブンと首を縦に振った。

肯定のつもりだろうがまだなにも喋らない。


「なんだ知り合いだったのか?」

「いえ、ギルドの人に偶然聞いたのを覚えていました」


まあ嘘だけど。


「そうかそうか。よろしくなエリーゼ」

カデットは優しく笑いかける。

残りの2人もよろしくと声をかけた。


するとエリーゼも消え入りそうな声で挨拶を返した。

「あ……あの………よ…よろしくお願いします」


おお。言えるじゃないか。

顔真っ赤だけど。


「…あと……あの…ありがとう…ございました」


俺の方を見て頭を下げる。

うん。悪い子じゃなさそうだ。



このパーティーに、僕が導くことになる勇者がいるのだろうか?

正直に言うと誰が勇者だか分からない。

定番なら戦士のカデットだが、駆け出しなのに魔法剣士という上級職のエリーゼもあり得る。

でも魔法使いだからといって勇者になり得るのだからシルビアもありそう。

ミトは……うんないな。バカっぽいし。


この中に勇者がいない可能性もある。

女神の神託は『いずれ勇者を導く』のだから、もっと冒険が進んでから他で出会うのかもしれない。


まぁ今考えても分かんないな。とりあえず保留。目の前のパーティーに集中しよう。


「さて、簡単だけど自己紹介も済んだことだし、実はもう手続きも終わってる。

今日は時間もないし、残りの話は移動中にしようぜ。早速だが冒険に行こう」

カデットが立ち上がって全員の顔を見渡して話しかける。


「えーなになに?もうクエスト受けたの?はやーい」

「私たちに相談もなしに?勝手にそんなことを決めては困りますわ」

ミトは気楽そうだがシルビアはすこし不機嫌そうだ。

これはシルビアが正論だ。

流石にいきなりクエストは早急だろう。


「悪い悪い。ただここのギルドでは新米冒険者の最初の仕事は決められてるんだ。実は他に選択肢がない」


「それで?そのクエストって?」


カデットはニヤリと笑ってこう言った。


「駆け出し冒険者の定番は決まってる。ゴブリン退治さ」

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