憧れのおそろい
「おはよう、シビ、アキラ。」
「はよ。あれ、サーシャはどうしたんだ?」
部屋から出ると、丁度アキラとシビに遭遇し、私の肩に飛び乗ったシビを撫でて、部屋の扉を指さした。
「集中したいから朝食はいらないって。」
昨日次の目的が判明した後、すぐにでも向かうか?と話し合ったが、私もせっかくならばこの街を見て、この世界のことを知りたい、ということで出発は明日ということにしてもらった。
前回までで、街の探索は隅々までしていたから、自分は私からサーシャへの課題…今は自分の魔力を感じることだけれど、それに集中する、との事だ。どうやら全く魔力を感じられていないことに焦っているようなので、散歩ついでにテイクアウトできる昼食を探すつもりである。
「なーんだ。せっかく昨日いい店見つけてたからみんなで行こうと思ったのに。」
「そうなの?じゃあもう一度聞いてみましょうか。」
「いや、集中してるんだろ?いいよ。カレンは行くだろ?」
「そうね、せっかくだし連れて行って貰おうかしら。」
よし行くかと歩き出したアキラに続いて宿を出る。
朝早いという訳では無いが、それでも早くから賑わうものだな、とアキラに続いて通りを歩きながら思った。
市場と言うべきか、整えられた土の道の横に所々開かれている店も私の世界とは少し違うもので溢れていて興味深い。
サーシャも最初にここに来た時はそういう風に思ったのだろうか。
部屋で瞑想をするサーシャを思い、魔王を倒す決意をかためた。
「何か気になるもんでもあったか?」
「あぁ、いえ、初めて見るものばかりで目が楽しいなと思っていただけよ。」
「あ、そうか。…別に急いでるわけでもないし、ゆっくり見ていこうぜ。」
「え?いいの?」
「ダメなら言わねぇよ。」
にかーっと笑ったアキラに、素直にありがとうと微笑んで、ちょうど気になっていた小物屋に目を映す。
普通の友達みたいにサーシャとお揃いでつけたいなと思ったのだ。
「ねぇ、アキラ、シビ、サーシャは青と赤、どっちが似合うかしら?うーん、白もいいわね…」
肩からじっと私の指さすリボンを眺めるシビ…あれ、アキラは?
着いてきてくれたと思っていたが…振り返ると先程の場所から動いていないアキラが見えて不審に思い、名前を呼ぶと慌てたように駆け寄ってきた。
どうかしたのかと聞いてみたがなんでもない、と首をふるだけで特に何がある訳でもないようだった。
サーシャにどれが似合うかしら、ともう一度聞くとどれどれ、と覗き込んできた。アキラが覗き込んだ逆の肩でシビがグルグルと威嚇する様な声を出したので頬をくっつけて宥めた。
「おやおや、仲のいいこと。ペアなら安くしますよ。」
「本当?」
「へ!?」
「なら、シビにも買いましょうか?」
安くしてくれるのならば嬉しいと思ったのだが、何故か驚いたアキラを見ると真っ赤になっていたので首を傾げた。
どうかしたのかと口にしようとするとシビが右肩から左肩に器用に飛び移ってきて、アキラの顔を叩いていた。
「そうか、私達だけじゃ申し訳ないわね。一応アキラにもお世話になるわけだし、嫌じゃなければみんなでお揃いで買いましょう。」
よしよし、と興奮気味のシビ越しにアキラを確認すると、一応って…と言いながらもお揃いの何かを買うのに反対はしていないらしい。
4つ買うからもっと安くしてくれという交渉を成功させて、色違いで買ったバングルは目を良くする効果があるらしい。命中率upだとか。なかなか全員に役立ちそうだと満足して紙袋を抱えた。
「ふふ。」
「気に入ったのか?」
「ええ、とっても。」
前の世界では親の影響か良いものをつけなくてはいけないみたいな暗黙のルールがあって、人と一緒なんてもってのほかだったので、こういう普通の友達みたいなお揃いに憧れていたのもあってすごく上機嫌なのが自分でもわかる。もう一度紙袋を覗いて笑ってしまっていると、それを見ていたアキラも笑っていた。
「まあ、楽しそうで良かったよ。」
「うん、ありがとう、アキラのおかげよ。後で魔法かけて軽くしてからあげるわね。つけてるの忘れるくらいにしてあげる。シビのも少し小さくしなくちゃ。」
「え!?そんなことも出来るのか!」
「ええ。でも、バングルの効果も消さないように慎重にやるから少し待ってね。」
すごいすごいと褒められいい気になったままアキラが見つけたというお店に入り、食事を頂いた。