はじめまして異世界
目を覚ますと森の中でした。
隣でまだ眠っているサーシャを確認してから自分の姿も確認する。
どうやらサーシャの言っていた通り、自分が身に着けていたものはこちらに全て持ち込めるらしい。どういう原理なのか知らないけど、寝て目が覚めたら別次元って…まあ、魔法についてどれだけ勉強してもいまだにわからないことだらけだし、起こったことを真実として受け止めれば混乱しないですむかな。
自分の持ち物の確認を終えて、次は周りの確認に入る。
サーシャはわけのわからないうちにモンスターに殺されたと言っていたし、早めに起こしておこう。
「サーシャ、起きて。」
「・・・?」
「どうやら無事に…と言っていいのかは謎だけれど異世界に来れたみたい。」
私の声で起き上がったサーシャも自分の状態と私をみて、ほっとしたようにため息を吐いた。どうやら今までにない展開だから、私が本当に一緒に来るかどうか不安だったらしい。
まあ、無理もないか、と納得して、ここからどうする、と声に出そうとして後ろの気配に気づいた。
「!」
「あ、」
咄嗟にサーシャを背にして杖を構えると草の間から出てきたのは犬…いや、狐?尻尾が4本あるし、色々私が知ってる狐とは違うけれど、多分これがモンスターなのかな…すごい可愛いけど。
「カレン!」
サーシャが逃げようとばかりに私の腕を引く、が、目の前のモンスターらしき生物は私と目を合わせたまま動かない…と思いきやゆっくりと足を動かしてこちらに向かってきた。
なんだか可愛くて撫でようかと私も一歩踏み出したところで何かが見えて慌てて魔法を発動する。
「え!?」
驚いたような声が聞こえて顔をあげると、木の上に人影が見えた。
気配を消していたのか全く気付けなかったのが悔しいが、目の前で縮こまってしまった子を抱き上げて、私のバリアによってはじかれた矢を拾った手をそちらに振り上げ叫ぶ。
「ちょっと!いきなり矢をうつなんて当たったらどうするのよ!」
「なっ、あんた達を助けてやろうと思っただけだろ?」
狙った的は外さないしな、と得意げに木から降りてきた男は恩着せがましくそう言ってくるもんだから私も思わず言い返してしまう。
「誰が助けてくれって頼んだのよ!」
「はぁ!?」
「この子はお腹が空いてただけなのに。」
ほら、お食べ、とバッグに入っていたサンドイッチを差し出すと、私のすり寄ったそのこはパクパクとそれを食べだした。
「カレン、この子の気持ちが分かったの?」
「はっきりとわかるわけじゃないけれど、考えればわかるわ。」
恐らくサーシャを襲ったモンスターはこの子で間違いないだろう。
人間を食料としているのかまでは不明だが、自分が生きる為ならば仕方のない道があるものね。
「賢い子よ。私との力の差を感じ取って私達を食料にするのは諦めたのね、私のバッグをじっと見ていたもの。」
「お前…」
「私の力に敬意を示してくれる子は好きなの。」
「なるほど。」
「…変わった女。」