神意召喚(電波受信)
閑話というか、単行本漫画の巻末のおまけ漫画みたいなヤツです。
よって時系列は適当です。
「更科梨沙が願う 神よ 我が声に答えたまえ」
私の詠唱に応え、頭上に光の渦が出現する。
(あれ?成功した?学園でやって以来、何度やっても成功しなかったのに…)
そう思いながら光の渦を見上げていると、やがてその光の渦は形を変えていく。
前回はなかったその現象に固まる私の視線の先で、渦の中心に大きな棒が出来上がり、それを支えるように渦がお皿状に変形していく。
そして、変形が完了すると、全体が傾き、棒の先端が斜め上方向を指した。その姿はまるで…
(…パラボラアンテナ?え?電波でも受信すんの?)
そんなふうに混乱していると、やがて頭の中に声が響いた。
しかし、その声は以前とは違って妙に人間味を帯びているように感じた。
― 私を呼ぶか?梨沙よ ―
「え!?名前呼び…?というか前と一人称違うような…?えっと、神様?ですか?」
― うむ。神だ ―
「何か今変なルビが見えたような…」
― ルビとか言うんじゃありません ―
「あっ、はい」
― 私のことは神ではなく燦々SUNと呼ぶがいい ―
「は、はあ…さんさんさん…様?」
― 違う。親しみを込めてさんさんさん(⤴)さん(⤵)だ ―
「は、はあ…」
― それで?何を思って私を呼んだのだ? ―
(いや、あなたを呼んだわけじゃないんだけど…)
― ちなみにあっちの神は基本もう呼んでも出て来んぞ ―
「あっ、やっぱりそうなんですね」
― まあ、あれだ。人間1人に呼び出される度にホイホイ出てくるようでは神として少しアレだろう? ―
「まあ、たしかに」
― まあそれは建前で、本音はそう頻繁に“教えて!神様!”をやられるとヌルゲーになりそうだから、私がもう出ないように言ったんだが ―
「……」
― ゴホン、それで?私に何を聞きたいのだ? ―
「……」
― 無言のジト目やめて? ―
「はぁ…あの、結局私って何で前世の記憶を持って生まれたんでしょう?」
― う、うむ。それは一言で言うなら自我の強度が高かったから。意志力が強かったからという言い方もできるな ―
「意志力…ですか」
― うむ。ちなみにだが、前世持ちの転生者が強力な神術師になるのもそれが原因だぞ? ―
「そうなんですか?」
― まあ、それを説明するには神術の3要素から話さなければならなくなるが…基本的に、神術の技量は、神力量、意志力、想像力で決まる。ああそう言えば、以前お前が行った神意召喚で、近くにいた教授が強力な神力に当てられて卒倒していたが… ―
「そんなことがあったんですか!?」
― うむ。言っておくが、夜中に人気の無いところでやったからよかったものの、もしあれを昼日中に人通りの多いところでやっていたら割と大惨事になっていたぞ? ―
「ああ…ごめんなさい王都の皆さん。そして誰か知りませんが教授さん…」
― とにかく、意志力が弱いと強大な神力に精神が耐え切れないということだ。そしてそれは自分自身の宿す神力にも当て嵌まる ―
「…つまり、意志力が強い者ほど多くの神力を宿して生まれる…?」
― そういうことだ。まあ血筋などもあるから一概には言えないが…。そして、意志力は神術の改変力とも直結する ―
「改変力…ですか?」
― そうだ。構築した神術でどこまで世界を改変できるか。これが低いと、神術の発動自体はできても規模が小さくなったり、効果が中途半端に現れたりする ―
「なるほど」
― この意志力と神力量が基本的に比例するからこそ、一般的に神力量を多く宿して生まれた子は優れた神術師となるとされているのだ ―
「私が異端扱いされていたのは、そこの釣り合いが取れてなかったからですもんね。ところでもう1つの要素である想像力は?」
― 想像力は、神術の構築力とも言えるな。どれほど大きく、複雑な現象をイメージできるかということだ。この点、前世でマンガやアニメに触れていたお前はかなり有利だな。現にお前は、前世の魔法少女をイメージした変身魔法を開発していたしな? ―
「み、見てたんですか!?」
― 神だからな ―
「う、うおぉ……」
~ 梨沙が使い物にならなくなっているので少々お待ちください ~
― …落ち着いたか? ―
「はい…なんとか。ところで…」
― うん? ―
「私に強い意志力があるとは思えないんですけど…。むしろメンタルかなり弱い自覚ありますよ?」
― 勘違いしているようだが、メンタルの強さと意志の強さは関係ないぞ?日本に帰るためにたった1人で無謀な旅に出ることを決断できること自体が、お前の意志力が強いことの証明だ ―
「…なるほど?」
― 聞きたいことはこれでお終いか? ―
「はい。あっ、最後に1つだけ…」
― 何だ? ―
「この設定って今後活かされる機会あるんですか?」
― ………… ―
「…………」
― …梨沙よ ―
「…はい」
― 神にも分からないことはあるのだ。特に未来のことは ―
「あ、はい」
― それでは達者でな ―
「はい、ありがとうございました」
すると、声は遠ざかり、光のパラボラアンテナ?も消え去った。
(結局なんだったんだろう?あれっ?そういえば神力が全然減ってない?)
奇妙な事態に自分の体を見下ろすと、紙が1枚地面に落ちているのに気付いた。
(何これ?って日本語?)
持ち上げると、そこには日本語で料金明細内訳書と書いてあった。
慌てて財布を取り出して中身を確認すると、硬貨が何枚か消えていた。
「通信料取るんかい!!」
神と言うにはあまりに俗っぽい謎の存在に、私はそんなツッコミを入れた。
というわけで設定紹介です。
今後活かされるかどうかは知りません。