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クリスマス特別編 更科健二視点

執筆開始して2か月ちょいのぺーぺーのくせして、生意気にもクリスマス特別企画なんてものをやってみました。

もう思い付きで浮気しないって言って1日経たない内にこれだよ!フリか!フリだったのか!?だが悔いはない!!


今回は梨沙の前世の過去話です。

 私の名は更科健二。

 いや、今の私は一夜限りのサンタクロースだ。


 現在はクリスマスイブの午後9時。私の可愛い子供たちはそろそろ寝ようとしているところだろう。

 そこに私がサンタクロースとなってプレゼントを届けに行くのだ。


 ん?普通は子供たちが寝てる間にプレゼントを置くものじゃないかって?

 いや、例年はそうしているのだが、今年はあえて起きている時に渡そうと思う。

 なぜなら、たまには寝顔ではなく喜んでいる顔を生で見たいからだ! 


 という訳で、私がサンタクロースに変装してプレゼントを渡しに行こうと思う。

 安心したまえ、変装も超本格的だ。すぐに見破られるようなそんじょそこらのコスプレとは訳が違う。


 昔の舎て…友人に、こういう変装が得意な男がいたので、そいつに頼んで容姿から体型まで完全にサンタに近付けた。

 おまけに口髭の中に小型のボイスチェンジャーまで仕込む徹底っぷり。

 今の私なら警察でも正体を看破出来ないだろう。


 あいつにはクリスマスイブの夜に呼び出すという可哀想なことをしてしまったが、妻の…いや、私の子供たちの為だと言うと、光栄さに感極まったのか泣いて協力してくれた。

 相変わらずいい舎て…友人だ。


 さて、プレゼントも袋に入れて用意したところで、早速行こうか!




~ 杏助(きょうすけ)(10歳)の場合 ~




 さて、最初はやはり長男からだろう。


 ふふ、普段は歳に似合わず落ち着いたクールな子だが、憧れのサンタさんを前にしたらどうなるかな?

 普段にはない子供らしい一面を見せてくれるのではないだろうか?


 期待に胸を膨らませ、いざ杏助の部屋に突入!


 バタン!


「ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマ「何してんだよ父さん」


 秒で見抜かれました。食い気味にツッコまれました。息子は今日も平常運転です。


 い、いや、まだ挫けるには早い!


「はは、私は君のお父さんでは「いや、気配でもうバレてるから。というか父さんがプレゼント置いてるのなんてずっと前から気付いてたから」


 な、なん、だと……!?


「な、なぜ……?」

「いや、寝てる最中に誰かが間合いに侵入すれば気付くし。まあ殺気がなければ飛び起きたりはしないけど」


 間合い?殺気?何を言っているんだ?

 あれ?杏助、お前学校では品行方正な優等生のはずだよな?いつから母さんみたいなことを言うようになったんだい?


 呆然としていると、杏助が手を出して来た。


「…?」

「いや、キョトンとするなよ……プレゼント渡しに来たんだろ?」

「あ、うん」


 なんだかもうグタグタだが、袋の中からプレゼントを取り出して杏助に手渡す。


「うん…まあプレゼント自体は嬉しいよ……ありがとう」


 そう照れくさそうに言う杏助を見て、少しだけ心に受けた衝撃が和らいだ。




~ 梨沙(8歳)の場合 ~




 さて、杏助には予想外にも見破られてしまったが、梨沙なら大丈夫だろう。

 さっきはグタグタになってしまったが、今度こそ子供らしい可愛い反応を見せてくれるはず!


 気を取り直して、梨沙の部屋に突入!


 バタン!


「ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマス!梨沙ちゃん!」

「………」


 見破られては…いない。

 ただ、その代わりめっちゃ人見知りモード発動しとる!!


 梨沙はパジャマ姿のまま無表情で固まっていた。

 全身から不信感と警戒心が滲み出ている。


 このままでは不審者扱いされる気がしたので、急いでプレゼントを渡すことにする。


「こ、今年1年いい子にしていた梨沙ちゃんに、プレゼントを持って来たよ~?」


 梨沙の能面のような表情から目を逸らし、袋からプレゼントを取り出すと、必死の笑顔で差し出す。


「………」


 …短い腕を限界まで伸ばして受け取られました。

 そんなに近付きたくないですか。そうですか。パパ泣くぞ!!


「……ありがとうございます」


 敬語でお礼言われた!思ってた感じと違う!!

 しかも全っ然嬉しそうじゃない!むしろ、もうプレゼント受け取ったんだから早く出てってくれないかなぁって思ってるのがスッゴイ伝わって来る!!


「じゃ、じゃあサンタのおじさんはもう帰るね?来年もいい子にしてるんだよ?」

「………(コクン)」


 …もう、目も合わせてくれないようです。


 人見知りなのは知っていたが、子供たちの憧れであるサンタクロースにまで人見知りモード発動しなくてもよくないか!?


 実の娘によそよそしい態度を取られた私は、心に傷を負って梨沙の部屋を後にした。




~ 桃華(7歳)の場合 ~




 …次が最後だ。

 いや、今度こそ大丈夫!

 桃華は杏助のように大人びてもいないし、梨沙のように人見知りでもない。

 今度こそ、望んだ通りのリアクションが返って来るはずだ!


 長男と長女に予想外の塩対応をされた私は、半ば祈るような気持ちで桃華の部屋に突入した。


 バタン!


「ふぉっふぉっふぉ、メリークリスマス!桃華ちゃん!」

「きゃ!なに!?え!サンタさん!?」


 お、おお、百点満点のリアクションだぞ桃華よ。

 望んだ通りのリアクションに気を良くした私は、ノリノリで演技を続ける。


「そうだよ。今年1年いい子にしていた桃華ちゃんに、プレゼントを持って来たよ?」

「ほんとうに!?ありがとう、サンタさん!!」


 ああ、末娘の純粋な喜びに、心の傷が癒されていく。


 私は失った心のライフが回復していくのを感じながら、プレゼントを取り出すと、桃華に差し出した。


「うわぁ、ありがとう!サンタさんだいすき!!」


 プレゼントを受け取った桃華が、満面の笑みで抱き着いて来る。


 大好き、大好き、大好き、大好き、大好き………


 ふっ


 我が聖夜に、一片の悔いなし!!


 は!しまった!なぜ私はビデオカメラを用意していなかったんだ!!

 せめて録音だけでもしておけば、一生の思い出になっていたのに!!


 私が自分の不手際を後悔していると、身体を離した桃華が待ちきれないように言った。


「ねえサンタさん、ここであけてもいい?」

「ん?ああ、もちろんいいとも」

「わ~い!」


 心底嬉しそうに笑うと、桃華はプレゼントの包み紙を破き始めた。

 そして中身を確認して……表情が曇った。


「これ…ちがう」

「え?」

「これ…ほしかったのとちがう」

「そ、そんなはずは……」

「ちがうもん!赤色じゃないもん!青色がほしかったんだもん!!」

「え、あ…」


 そ、そういえば色まではちゃんと確認していなかったような……いや、でも普通女の子なら青色よりも赤色じゃないか!?


 そんなことを考えている間にも、桃華の瞳にはみるみる内に涙が浮かび上がって来た。


「あ、その…」

「うわぁぁ~~~~ん!!おねえちゃぁぁ~~ん!!!」


 桃華はそう叫ぶと、泣きながら部屋を飛び出して行った。


 そして、1人部屋に取り残された私はというと…


「ごっはぁ」


 末娘から予期せぬ止めの一撃を食らい、胸を押さえて崩れ落ちた。



* * * * * * *



 ― 時刻は深夜


 サプライズに失敗した私は、リビングのソファに突っ伏していた。


 そんな私に、対面のソファに座っている妻から苦笑気味の声が掛かる。


「もう、やってしまったことは仕方ないでしょう?梨沙と桃華には明日私からフォローを入れておくから、元気出しなさいな」

「………」


 それでも私が起き上がることはない。私の心のライフはもう0よ。


 すると、妻が仕方ないわねぇと言いながら、そっと何かを差し出して来た。


 横目で確認すると、それは細長い箱に入ったプレゼントだった。


「ほら、これあげるから。いつまでもしょぼくれてないの」


 ようやく起き上がり、プレゼントを受け取る。

 中を開けてみると、そこにはネクタイが入っていた。


「ありがとう。どうかな?」

「似合ってるわよ」


 首元に合わせてみると、妻は微笑みながらそう言ってくれた。


「ありがとう。今度の商談で早速使ってみるよ」


 …どうでもいいんだが、妻が私に贈るプレゼントはネクタイばかりだな。


 いや、いいんだけどね?うん。付き合いたての頃、初めてのクリスマスに渡された首輪に比べれば、全然いいんだけどね?


 そんな風に考えていると、妻が笑顔のまま言った。


「で?」

「…?」


 ん?で、とは?

 妻の意図が読めず、怪訝な顔をすると、妻の笑顔が固まった。


 そして、右手を差し出しつつもう一度言う。


「で?」

「………あっ」


 し、しまったぁぁぁぁーーーー!!!

 お、お返しのプレゼントかぁぁぁーーー!!!


 妻の笑顔が引き攣る。


「…まさか…忘れたの?」

「………」


 忘れました。

 子供たちへのサプライズに頭一杯でした。

 1つのことに集中すると他のことが疎かになるいつものやつです。


 妻の笑顔の種類が変わった。

 自然、私の背筋が伸びる。


 妻は差し出していた右手を下に向けると、床を指差しつつ無慈悲な言葉を放った。


「あなた」

「はい」

「おすわり」

「…はい」


 素早くソファから降りると、床に正座する。


 しかし、今夜の妻…いや、我らが女帝様は、とことん容赦して下さらないようだ。


 女帝様はおとがいに指を添え、足を組むと、小首を傾げながら心底怪訝そうに言った。


「……はい?」

「……わん」


 どうやら今夜は、聖夜ではなく省夜になるようだ。



* * * * * * *



 ― 翌日


 私は心身ともにボロボロの状態でリビングで朝を迎えていた。


 ん?なぜリビングでかって?

 ハハ、犬風情にベッドで寝る権利が与えられるとでも?


 はあ、もう俺、絶対コスプレサプライズなんてしないんだ……。


 そんな風に朝日に向かって黄昏ていると、子供たちが起きて来た。


「おはよう」

「おはよう、お父さん」

「パパ、おはよう」

「…ああ、おはよう」


 まだ回復し切っていない心を必死に奮い立たせて、笑顔で挨拶をする。


 すると、子供たちが何やら私たちの前に集まって来た。

 梨沙と桃華が前に出て来て、杏助は…2人の後ろで知らん顔していた。


「あのね、お父さん。昨日、サンタさんが来たの」


 梨沙のその言葉に、笑みが引き攣る。

 まさかとは思うが、ここで追撃が入ったら父の威厳なんてかなぐり捨てて泣いてしまうかもしれない。


「それでね、お母さんに聞いたんだけど…サンタさん、お父さんの分のプレゼント忘れちゃったんだって?」

「え…?」


 呆然とする私に、梨沙と桃華がポケットから何かを取り出した。


「だからこれ、私たちからお父さんへのクリスマスプレゼント。メリークリスマス、お父さん」

「メリークリスマス!パパ!」


 それは、手作りの肩叩き券だった。

 それが3人分、一応杏助の分もあるようだ。


 私は、一気に苦労が報われた気がした。

 感極まった私は、子供たちを抱き締めた。…杏助には避けられたが。


「んぷ」

「むぎゅ」

「ありがとうな、皆!お父さんは幸せ者だよ!」


 梨沙と桃華を抱き締めつつ、単純な私は、何だかんだでコスプレサプライズも悪くなかったんじゃないかと思い始めていた。


 そうだな、となると次は…


「お正月に…獅子舞かな?」

「絶対やめろ」


 私の呟きに、杏助の冷たいツッコミが入った。


※健二と美津子は別にSM的なアレではありません。極めて良好な主じゅ…夫婦関係を構築しています。


なんだろう。今回作者史上最高に梨沙を可愛く描けた気がする。

人見知りな小さい女の子って超可愛いと思いません?


あぁ~それにしても更科家の話書くのスゴイ楽しい。

これからもちょいちょいこういう過去話入れようかな?(ホントに学習しねぇなコイツ)


まあ何はともあれ、皆様メリークリスマス!

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― 新着の感想 ―
極めて良好な夫婦関係 > どう見てもプレイです。というか初期のプレゼントが首輪って、君臨する気満々過ぎて笑うしかない。
[良い点] パパさんはヤバイ人でした 梨沙ちゃんを養女にしたい~ 変な事はしないから、信じて~
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